一方、Dropbox Japanが新サービスとして発表した、顧客のファイルを日本国内で保存できる「ローカルホスティング」については関連記事をご覧いただくとして、同社の五十嵐光喜社長が会見で語った進化の話は次の通りだ。
Dropboxは現在、グローバルで有料ユーザー数が1270万人、無料登録ユーザーを合わせるとおよそ5億人に利用されており、これまで個人向けを中心にサービス展開してきた。さらにここ数年は企業向けにも「Dropbox Business」を提供し、個人向け市場で磨き上げてきたユーザビリティを売り物に契約数を伸ばしているという。
そうした状況の中で、同氏が会見で最初に図4を示しながら語ったのは、「Dropboxはこれまで個人向けを中心としたクラウドストレージとして使われてきたが、ここにきてチームコラボレーションのツールとして使われるケースが増えてきた」と、利用形態が大きく変わってきたことだった。
そこで、そのチームコラボレーションとしての利用をさらに促進するため、図5に示すように「コンテンツ」「コーディネーション」「コミュニケーション」の3つの機能をチームコラボレーションに向けた1つのプラットフォームとして提供する「3C戦略」を推進していく方針を打ち出した。
同氏によると、この3C戦略で重要なのは、それぞれの機能領域で有力なパートナー企業のサービスとも連携し、顧客に最適なソリューションを提供できるオープンなエコシステムを形成していくことだとしている。
さて、こうして見ると、当初から企業向けのBoxと個人向けからスタートしたDropboxといった成り立ちの違いがあるので、一概に比較できないところもあるが、現状のチームコラボレーションからデジタル変革のプラットフォームを目指すBoxに対し、Dropboxはチームコラボレーションにこだわる姿勢を強く感じた。
そこで、Box JapanよりDropbox Japanの会見のほうが後だったので、サービスの進化における両社のメッセージの違いを踏まえて、チームコラボレーションへのこだわりを質疑応答の際に再確認してみたところ、五十嵐氏は次のように答えた。
「Dropboxはお客さまからお預かりしているコンテンツをしっかり管理し、コラボレーションに有効活用していくことを基本的な考え方としている。それがパートナーのさまざまなサービスとも連携するようになれば、企業活動の広い範囲に影響するようになるだろう」
こう聞くと、強く押し出している言葉の違いだけで、両社のサービスの進化の方向性は同じだとも受け取れる。だとすると、クラウドストレージサービスはさしずめチームコラボレーション、ひいてはデジタル変革のプラットフォームに進化していく可能性が大いにありそうだ。
さらに言えば、この分野で両社の競合となるMicrosoftやGoogleといった“ジャイアント”とのサバイバル合戦も注目される。冒頭でも触れたが、クラウドストレージサービスの進化はIT産業の構造変化にもつながり得ると筆者は見ている。注視しておきたい。
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