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» 2019年04月10日 08時00分 公開

迷走する日本のデジタル改革:デジタルトランスフォーメーションの本質と必要性「DXをデジタル技術でなく歴史観から捉えよ」 (1/3)

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、一般に「ITを活用して社会や生活をより良いものにするもの」という意味である。しかし、今の日本企業が進めようとするDXはこの定義から懸け離れているようにも思える。グローバルで考えられているDXとどこが違うのか。

[西野弘,CeFIL]

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 ここ最近、「デジタルトランスフォーメーション」(DX)という言葉が取り沙汰されており、新聞やビジネスメディアなどで目にしない日はない。日本企業は「当社もDXを実践するぞ」と意気込むが、今の動きを見ると、技術やソリューションばかりに目が向き迷走しているようにも見える。果たして、このままで日本のDXは正しい方向へと向かうだろうか。本連載を通して、DXの実践に必要な考え方を説明する。

著者紹介:西野 弘

特定非営利活動法人CeFIL 理事/デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)共同設立者
株式会社HIイニシアティブ 代表取締役

早稲田大学卒業後、全日空商事株式会社を経てマネジメントコンサルタント会社のプロシードを設立。25年間代表取締役を務め、2016年にはデジタル技術を活用して社会課題の解決に寄与するデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立。

日本は大きなハンディ―があるデジタルトランスフォーメーション

 私は日本の大手企業の将来に危機感を抱き、2016年5月に26社の企業が参加する特定非営利活動法人「デジタルビジネスイノベーションセンター」(DBIC)を開設した。

 20世紀末には「IT革命」という言葉がよく聞かれたが、その時は、今後政府や企業の活動などあらゆる組織活動がITを基盤として行われる時代が到来するだろうといわれた。1998年以降はコンピュータシステムにオープンシステムが本格的に導入され、CRMやサプライチェーン、ERPといったエンタープライズシステムが導入された。

 その時多くの人が、ITの活用が企業の成長と競争力を支える原動力となるだろうと考えた。しかし、日本の経営者の多くは技術が分からないからといって、CIO(最高情報責任者)に丸投げするだけだった。経営層の「ITの無理解、無活用現象」である。その結果、先進国の中で日本だけが特異なITシステムのオーナシップを持つ構造ができ上がった。

 この現象はIT業界にも大きなインパクトがあった。下記の図(図1)のように日本においては、エンジニアなどITの専門家の75%がITベンダー企業に属し、ユーザー企業に属する割合はわずか25%だ。しかし世界はこの状況とは真逆であり、ITの専門家の70%以上がユーザー企業に属する。

 企業の成長と競争力の源泉がITといわれる時代の中で、この構造問題はわれわれに大きなハンディ―をもたらす。

 なぜ、このような話をするかというと、過去の歴史的なITの構造問題が日本のDXやデジタルビジネスイノベーションの推進に大きな影響をもたらしているからである。

図1 日本とアメリカで見るユーザー企業とITベンダー企業が抱えるIT専門家の割合 図1 日本とアメリカで見るユーザー企業とITベンダー企業が抱えるIT専門家の割合

 この図(図1)を見るとすぐに分かることは、日本企業は自組織のITシステム管理の大部分をベンダーへ依存していることだ。それにより、以下のことが起こる。

1.ユーザー企業の無知化が進む。ベンダーは企業が求めるものや情報だけを提供する存在となり、ユーザー企業はただ企画と予算管理だけの存在となる。ITで組織力を強めるという一番重要な部分への関心が薄れる。特に、この症状は、政府のシステムに強く見られるだろう。

2.ベンダーは、顧客が本当に必要とするものではなく、自分たちの売りたいものだけを提案するようになる。その典型的な例が、運用の自動化やサイバーセキュリティにおける外部へのアクセスを遮断して蛇口を閉めることなどだ。その結果、新しい技術への興味やビジネスの能力も薄れていく。

3.ベンダーにとって運用保守は長期的な利益を確保するためのビジネスになり、新しい挑戦的な試みをしない。それはコストの増大を意味し、新規の開発案件やイノベーションを行う予算を確保できない。

 これ以外にもまだまだまずいことはあるが、これは、私がPMBOK(Project Management Body of Knowledge)やITIL(Information Technology Infrastructure Library)を日本へ紹介し導入した経験からいえることである。また、この事実が今後のDXの推進に大きな障がいをもたらすことになる。

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