クラウドサービスをやらないDellのクラウド事業とはWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年05月27日 12時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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AWSやMicrosoftはDellにとって競合でなくパートナー

 まず、Dell Technologies Cloudのビジョンを示したのが、図1である。下からいわば「インフラ」「オペレーション」「付加価値サービス」といった3層構造になっており、各層で一貫性のある利用環境を実現しようというのが最大のポイントだ。

Photo 図1 Dell Technologies Cloudのビジョン(出典:Dellの資料)

 例えばインフラの場合、パブリッククラウド、プライベートクラウド、エッジを連携させることによって、シームレスな利用環境を実現するハイブリッドとマルチクラウドへの対応を前面に押し出している。

 このインフラのところで注目されるのは、パブリッククラウドを提供するAWSやMicrosoftなどはDellにとって競合ではなくパートナーであること。そしてプライベートクラウドには、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品といった、Dellのハードウェアが組み入れられていることである。これはすなわち、Dellの大半の製品がDell Technologies Cloudの構成要素として機能し、企業のIT環境で効率化や自動化を目指す道具立てとして位置付けられているのである。

 この仕組みで中核をなすのが、オンプレミス環境で多くの企業が利用している仮想化環境のVMwareをパブリッククラウド上で利用できるようにした「VMware Cloud Foundation(VCF)」である。これまでIBMとAWSのパブリッククラウドについては、こうした連携が進んでいるが、今回Microsoft Azureとも同様の利用環境を実現できる形となった。これについては「Azure VMware Solution」と呼ぶ名称で、Microsoftが販売するという。

 Dell Technologies Cloudのインフラ部分には、図2で示すように「クラウドプラットフォーム」と「Data Center as a Service」といった2つのソリューションを用意している。

Photo 図2 Dell Technologies Cloudのインフラソリューション(出典:Dellの資料)

 クラウドプラットフォームは、いわばオンプレミス向けプライベートクラウドのパッケージで、VCFによってパブリッククラウドを連携したハイブリッドクラウドを実現できる。

 一方、Data Center as a Serviceは、クラウドプラットフォームをこのモデルでオンプレミス向けに提供するものだ。「VMware Cloud on Dell EMC」がその製品名称である。

 最初に、Dell Technologies CloudはVMwareやDell EMCなどの技術をベースとして提供されるハイブリッドクラウドソリューションだと述べたが、これまでの説明でそのポイントは理解いただけたかと思う。さしずめ、ハイブリッドクラウドを志向するVMwareユーザーにとっては、選択肢が一段と広がる心強いソリューションといえよう。

 ただ、1つ指摘しておくと、Dellが推進するクラウド事業は、「今後のユーザー企業のIT利用はハイブリッドクラウドが主流になる」との見立てが前提だ。従って、もしクラウドサービスがハイブリッド利用を上回るような状況になれば、事業戦略を見直す必要が出てこよう。その意味では、クラウドサービスをやらないDellのクラウド事業戦略の成否が、今後の企業のIT利用形態における“映し鏡”になりそうだ。

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