プロダクトからサービスへの移行が時代の流れとなっている中、今や10兆円企業となったDellはそれに逆らってプロダクトにこだわっているように見える。その真意やいかに――。
「当社を『パソコン大手』と表現するのは、もうやめていただきたい」――。デルの平手智行社長は、米Dell Technologies(以下、Dell)の日本法人であるデルとEMCジャパンが先頃開いた2019年度(2019年2月〜2020年1月)の事業方針説明会で、最後にこう訴えて笑いを誘った。メディアの中には今も「パソコン大手のデル」と書くところがあるからだ。平手氏の訴えは実際にやや受けたので、笑いを誘ったと書いたが、当人は至って真剣な訴えだっただろう。
このやりとりをまず取り上げたのは、今回の本稿のテーマに直結するからだ。そのテーマとは、Dellとはいったいどんな会社なのか、である。それというのも、プロダクトからサービスへの移行が時代の流れとなっている中で、今や10兆円企業となったDellはそれに逆らってプロダクトにこだわっているように見えるからだ。裏を返せば、同社は自らクラウドサービスを大々的に手掛けていない。
その問題意識における質疑応答のやりとりは後ほど紹介するとして、まずは事業方針説明のハイライトを記しておこう。会見では平手氏とともに、EMCジャパンの大塚俊彦社長、デルの黒田晴彦最高技術責任者(CTO)が説明に立った。
まずは平手氏が、Dellの動きについて説明した。2018年度(2018年2月〜2019年1月)の事業実績は、売上高が前年度比15%増の906億ドル(1ドル110円換算で約10兆円)など図1の通り。10兆円企業が15%の成長を遂げているのと、過去3年間の技術開発投資が128億ドル(同換算で約1兆4000億円)との巨額にも驚かされた。かつてパソコンを注文生産していた頃のDellとは全く違う会社になっている。
2019年度の事業方針は、「AI、IoTなど、エッジ、コア、クラウド、そしてデータレイク構築まで、お客さまのデジタル変革に不可欠な最先端テクノロジーを提供する」ということで、日本を含めたグローバル共通のビジョンを設定した。
平手氏は市場環境について、「デジタルテクノロジー主導の価値創造サイクルが企業の競争力を創出する時代に突入した」と述べ、企業のデジタル変革が本格化すると説明。それに対し、Dellは図2に示すように、8つのテクノロジーブランドによるソリューションを柔軟に組み合わせて、下部に記した4つのトランスフォーメーションに対応していくとした。
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