衝撃のEMC買収から3年 Dell Technologiesが遂げた“意外な成長”の理由「Dell Technologies World 2019」から分析(1/3 ページ)

2016年、DellによるEMCの買収劇は、市場に大きな衝撃を与えた。それから3年、度重なる買収劇で生まれたDell Technologiesはどう生き残ったのか? 長年取材を続けるジャーナリストが、その戦略展開を分析した。

» 2019年05月22日 07時00分 公開
[谷川耕一ITmedia]

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 企業同士の買収劇からは、さまざまなストーリーが生まれる。新たなベンダーが次々と現れ、競争が激化するエンタープライズIT業界の場合も同様だ。つい最近では、IBMによるRed Hat買収や、MicrosoftによるGitHub買収が大いに市場をにぎわしたことが記憶に新しい。

 読者の中には、こうした買収劇を「食うか食われるか」を地で行く展開だと読み解く人もいるのではないだろうか。ただし、買収後の展開を長期的に見ると、全く分野が異なる企業同士が一緒になった結果、それまで考えられなかったような成長を生んでいるケースもある。その一例が、2016年にDellがEMCやVMwareを買収して生まれたDell Technologiesだ。

 業界に大きな衝撃を与えた買収劇から一転、一時期は資金不足もささやかれた同社。しかし、長年同社を取材するジャーナリストの目からは、別の光景が見えているようだ。誕生から3年、同社が遂げたしたたかな成長と、その戦略に見える今後の展開について、分析しつつ振り返ってみたい。(編集部)


DellとEMCの結び付きを強くした存在とは

 取材の記憶は、2016年5月にさかのぼる。米国ラスベガスで開催された「EMC World」の基調講演は、当時のEMCのCEOだったジョー・トゥッチ氏が、Dellのマイケル・デルCEOに、EMCのエンタープライズITビジネスを託す場面から始まった。

photo 2016年5月に開催された「EMC World」で、握手を交わすEMCのジョー・トゥッチ会長兼CEO(当時)(左)とDellのマイケル・デルCEO(右)

 その後、Dellは同年9月にEMCを約670億ドルで買収。“PCのDell”が“エンタープライズITのDell EMC”になり、さらにはVMwareやPivotalなどを傘下に収める巨大なDell Technologiesが誕生した。

 翌2017年5月には、Dell Technologiesのエンタープライズ向け戦略をアピールする「Dell EMC World 2017」が開催された。この時までは、「エンタープライズIT領域をけん引するのは、旧EMCの事業」という印象があった。しかし、そんな状況は2018年ごろから変化する。

 2018年のイベント名は「Dell Technologies World 2018」となり、クライアントPC、サーバなども含む、いわば“旧Dell”の事業に関連したメッセージがかなり増えたのだ。そしてそれらとEMCのソリューションを仲立ちしていたのが、仮想化技術のVMwareだった。当時はまだDellのサーバとEMCのストレージなどが別々に存在し、それらをVMwareの仮想化技術で結び付けることで、新たな「モダンデータセンター」のインフラを提供するというのが、Dell Technologiesの戦略だった。

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