「現場が使ってくれない」壁をどう越える? 1カ月で社員1000人にZoomを広めた情シスに聞いた決め手は「ちょい足し」にあった

「今できていることはできて当然、その上で時代に取り残されないものが必要だ」――経営層は業務システムのリプレースで無理難題ばかり言う。活路はどこにあるのか。

» 2019年06月24日 10時00分 公開
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 社内でこんな状況に遭遇したことはないだろうか。フルスクラッチで構築して10年以上使い続けた業務システムがある。機能不足が目立つようになり、ハードウェアのサポート切れもあってリプレースの時期を迎えた。

 自社の業務にゴリゴリに最適化したレガシーシステム移行するだけでも一苦労だ。しかも経営層は「今できていることは、新しいシステムでもできて当然だ。その上で時代の流れに取り残されないものにしてくれ」と要求する。一体どうやって実現したらいいのか。

 グループウェアの開発販売を手掛けるサイボウズでは、テレビ会議システムのリプレースプロジェクトで、似たような課題をうまく乗り切ったという。自社サービスのグループウェアにちょっとした工夫をしたことがポイントだったらしい。早速、話を聞いてみよう。

サイボウズ (左から)運用本部 情報システム部 システム企画 渡辺 拓氏、運用本部 情報システム部 松平 知氏、ビジネスマーケティング本部 Garoonビジネスプロダクトマネージャー 池田 陽介氏

EoSから始まったテレビ会議のリプレース

――最近、テレビ会議を「Zoom」にリプレースしたと聞きました。全社が使うシステムリプレースはいろいろと苦労も多かったと思うのですが、どのように進めたのですか?

松平 知氏 松平 知氏(サイボウズ 運用本部 情報システム部)

松平 知氏: これまでサイボウズは、テレビ会議、IP電話、チャットなどのUC(ユニファイドコミュニケーション)としてCisco製品を利用していました。このうちオンプレミスの多地点接続システム(MCU)がEoS(サポート終了)になるということで、テレビ会議システムのリプレースを検討し始めました。

 Ciscoから乗り換えず、MCUの後継となる機材を導入する選択肢もありました。しかし「社外とも接続したい」「録画をしたい」といったMCUで対応できない要望が社内で上がっていたこともあり、より広い目線で探したところ「Zoom」が今のサイボウズの働き方に合っていると判断したのです。

 大前提は、これまでCiscoでできていたことはリプレース後もできること。その上でユーザーが使いやすいようにしたいと思いました。また、テレビ会議の端末などは引き続きCiscoの機材を使うので、それを生かしつつZoomを導入しなければならないという課題もありました。

 Cisco製品とZoomの大きな違いは「会議室」の考え方です。Ciscoはオンラインの会議室と実際に人が集まる部屋がひも付いているので、ユーザーは部屋を押さえるだけでよかったのです。接続時も、相手がいる部屋につなげば良いので分かりやすい。

 ところが、Zoomはオンラインの仮想会議室に集まる仕組みなので勝手が違いました。つまり部屋を予約しただけでは、どこの仮想会議室に集まったらいいかが分からない。そこであらかじめそれぞれの部屋用の仮想会議室を準備しました。

 さらに利用しやすくするためにグループウェアにちょっとしたカスタマイズを行いました。打ち合わせをする場合、社員は必ず「Garoon」(ガルーン)※のスケジュールを開きます。その画面に予約している部屋にひも付いたZoomの情報を一緒に表示させるようカスタマイズしたのです。URLをクリックするだけで、その部屋用のZoomにつながります。普段使っている機能の中に、新しいシステムへの入り口を作ったわけです。

 システム連携といっても複雑なつなぎこみをするのではなく、ちょっとリンクを表示させる簡単のものです。また、各部屋のCisco端末からZoomに直接つなげられるようにもしました。普段の業務フローを極力変えずに、Zoomという便利なSaaSを新たに取り入れることができました。

※サイボウズの中堅・大規模向けグループウェア

Garoon Garoonのスケジュール機能にZoomを連携させた

Zoomのカスタマイズ導入で全社会議が活性化

――ユーザーの反応はどうですか。スムーズに乗り換えてもらえましたか。

松平氏: 在宅勤務の人が増えたこともあり、頻繁にZoom会議が行われています。導入してまだ2カ月ですが、1カ月でのべ3000人以上が使い、ミーティング時間は15万5400分を超えました。私自身も新幹線の中からZoomにつないだことがあります。やりとりするパケットが小さいので貧弱な回線でもストレスなく会議ができる点もいいですね。

渡辺 拓氏 渡辺 拓氏(サイボウズ 運用本部 情報システム部 システム企画)

渡辺 拓氏: 「めちゃくちゃ便利になった」「ストレスなく使えている」という声を聞きます。新しいシステムが増えたような感覚もなさそうです。

 全社会議にもZoomで参加する人が増えてきました。サイボウズの全社会議は18時過ぎから始まりますので、子供がいる社員など、どうしても参加できない社員もいました。ところが今は、自宅や帰宅中の電車の中からZoomで参加したり、後から録画を見たりと参加者が戻ってきた感覚があります。グループウェアに「実況スレ」も立って、コメントしながら盛り上がっています。

――2カ月でそこまで浸透したのですね。

渡辺氏: やはり「スケジュールのURLを1クリックしたら、いつも通りつながる」という点が効いているように思います。

 実は本格導入前に、一部のユーザーでテストしたのですが、なかなか使ってくれない人もいましたよ。マニュアルを用意して「音質も画質もよくなるよ」「社外ともつなげるよ」と伝えても「使い慣れているからCiscoがいい」となってしまうのです。

 ところがGaroonから1クリックで使えるようにしたら、あっという間に広がりました。「便利だね、マニュアルなんて見なくても使えるね」と。

――カスタマイズはどのように実装したのですか。

渡辺氏: GaroonのスケジュールにZoomのURLを表示させるだけなら1日もあれば実現できます。50行くらいのJavaScriptを書いただけです。はじめは松平と2人だけに適用してみて、「いけそうだな」と分かってから少しずつ適用範囲を広げていきました。

松平氏: そうしながら徐々に改善していきました。URLの表示位置については変更要望が多かったですね。最初は「実装しやすい」という理由で画面上部にURLを表示させたのですが、ユーザーの声を聞いて今の場所に落ち着きました。サイボウズには、新しい機能は取りあえず出してみて、みんなで良いものに変えていくという文化が昔からあるのです。

渡辺氏: ちなみに、今回実装したカスタマイズはcybozu developer networkで公開しています。Garoonのユーザーさんにもぜひ試していただきたいですね。

カスタマイズで「コスト」が下がる

――カスタマイズでとてもうまくいったように聞こえますが、一般的に「カスタマイズ」と聞くと、あまりいい印象を抱いていないのでは。「コストがかかる」「メンテが大変」など不安を抱く人が多いのではないでしょうか。ユーザーの声を聞く機会が多いプロダクトマネージャーの池田さんは、どう思いますか。

池田 陽介氏 池田 陽介氏(サイボウズ ビジネスマーケティング本部 Garoonプロダクトマネージャー)

池田 陽介氏: 「カスタマイズ」という言葉をネガティブに捉えている方もいるでしょうね。特にオンプレミスで、ヘビーなカスタマイズを施したシステムを運用している方は「元に戻せない」「コストがかかる」「新システムに移行できない」というイメージを持っているでしょう。しかし今回のカスタマイズは少し違うと思います。

松平氏: むしろ逆で、導入コストは下がっています。これまでのシステム導入でいえば、マニュアルを用意して、ユーザーを集めて勉強会をして……といった手順が必要でした。でもZoomに関しては普段使っているGaroonとの連携性を高めたことで、そのような手順が一切不要になりました。教育コストが格段に下がったのです。

 Zoom自体もユーザーインタフェース(UI)が分かりやすくできています。SaaSベンダーはどんどん使いやすいUI、便利な機能を追加しています。そういうサービスをスピーディーに取り入れ、利用を浸透させるには普段使っているツールとの連携が大切です。

渡辺氏: プログラムを書く側からすると、労力や工数といったコストも気になるでしょう。そこを抑えるコツとして、私の場合は最低限のテストが終わったら、途中の段階でもいろいろな人に使ってもらってフィードバックを得るようにしています。

 1人であれこれ想像しながらテスト要件を探し回っていると、結局リリースが遅くなる。解決すべき課題はたくさんあるのにどんどん後回しになってしまいます。完成形でなくてもいいからとにかく出すのがポイントですね。Garoonのカスタマイズは「小さく始められる」という特長があるので、少人数でまず試してみるようにしています。

池田氏: Garoonではカスタマイズ用の追加プログラムを、どの範囲で適用するか、ユーザーごとに選べるようになっています。万が一、問題が発生したら管理画面で即座にカスタマイズを「オフ」にすることもできます。

 また、ユーザー管理画面やアクセス権の管理画面など、システム設定に関わるところにはカスタマイズができないようになっています。このような安全装置的な機能を備えているので「少人数でまず試す」運用がしやすいと思います。

 渡辺は元SEなのでコードを書くことが苦にならないと思うのですが、情シスの方の中にはJavaScriptやAPIを利用することにハードルを感じる場合もあると思います。どのようなカスタマイズができるかについては、開発者向けコミュニティー「cybozu developer network」でAPIドキュメントやJavaScriptのサンプルコードを公開しているので、このあたりを活用してほしいですね。

渡辺氏: 「これ解決したい!」という課題は他にもたくさん上がっています。もっと人数がいれば、どんどん改善できると思うので、仲間になってくれる人を絶賛募集中です。

――SaaSを導入するに当たって、カスタマイズや製品間連携がポイントになりそうですね。今後もSaaSの活用は広がっていくでしょうか?

池田氏: SaaSに対する抵抗感はこの数年でだいぶ薄れてきた感覚があります。いわゆる「クラウドはセキュリティが危ない」という企業は減り、餅は餅屋とばかりに「データは専門性の高いベンダーに預ける方が安心だ」と考える人が多くなりました。

 ご存じのようにSaaSは、ワークフローだったりチャットだったりと特定のカテゴリーに属すものが多い。その中から「自社にとって都合のよいものを組み合わせて使う」ことが当たり前になりつつあります。

 そうなるとグループウェアにとって、オンプレミス時代よりも広い意味での「カスタマイズ」が重要になります。例えばシングルサインオンやデータ連携は必須ですよね。Garoonはこの部分にフォーカスして仕組みの強化を図っています。

「これ、あったら便利だな」を実現するための心構えとは

――最後に、カスタマイズを成功に導くために心掛けている大事なことを教えてください。

渡辺氏: 社員全員が「現状の課題は変えられる」という意識を持つことです。不満は抱え込まないで、どんどん話し合った方がいい結果を得られます。サイボウズの総務でも、以前は「不便だけど、こういうものだから」と我慢してやっていた業務について、プロセスを見直したりシステム化したりして効率化した例がありました。「面倒くさいことは我慢しなくていい」と思うことが大事だと思います。

松平氏: 情シスだけでやろうとしないことも重要ですね。例えば私も含めてうちの情報シスはUI設計が苦手なので、そこは社内でUIが得意なデザイナーに助けてもらっています。渡辺がそうだったように「この課題は解決できそうだ」というアイデアと、それを実現できるスキルを持った人間が社内にいるはずです。「生え抜きの情シスではないところから出てくるアイデア」に目を向けられる視野の広さが大事ですね。

池田氏: SaaS側が連携機能を充実させたことで、カスタマイズによって得られるメリットがオンプレミス時代よりも格段に増えています。連携の難易度が下がったことで得られるリターンが上がったとも言えます。特定の機能やツールを単体で「これ、ありき」と考えるのではなく、「この外部サービスと組み合わせて使ったら、今よりも便利になるかな」といった気持ちでアプローチするといいかもしれません。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2019年12月24日