RPA失敗の構図――あなたの会社にも潜む引き継ぎという名の魔物(1/2 ページ)

RPAは、「人生100年時代」にワークライフバランスややりがいを求める従業員と、1日48時間分の労働生産性を必要とする企業の要望をかなえ、双方のギャップを埋める良薬だ。しかし、多くの企業はRPAを生かすためのたった1つの視点を見落としている。それは一体何か。日本RPA協会の理事による新連載がスタート。

» 2019年07月01日 08時00分 公開
[池邉竜一キューアンドエーワークス]

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著者紹介:池邉竜一 キューアンドエーワークス 代表取締役社長

1971年12月生まれ。大分県出身。慶應義塾大学経済学部卒業。

1999年7月、人材派遣業のアークパワー設立。2001年4月、同社代表取締役就任。2013年4月、キューアンドエーグループ傘下(NECネッツエスアイ連結対象会社)となり、2015年7月、キューアンドエーワークスに社名変更。RPA市場においては「新・雇用創造」を掲げ、「業務の可視化」普及を通じてさまざまな人々の「創造する時間」を生み出し、デジタルレイバーと協働する労働環境をデザインすることによって、真の働き方改革を起こす。2016年7月、一般社団法人日本RPA協会の理事に就任。2019年6月より可視経営協会の代表理事も務める。

1日48時間時代――企業と従業員のかみ合わない歯車

 「働き方改革関連法案」が2019年4月1日(中小企業は2020年)より施行されて、残業時間、同一労働同一賃金、裁量労働制やテレワークの在り方について、企業は待ったなしの対応を迫られています。しかし、これら課題の大前提にある、「競争力につながる働き方、すなわち『仕事の質』をいかに評価するのか?」という問題について、企業はいまだ定性的かつ定量的な判断の材料を見つけられずに苦しんでいるのが現状です。

 一方で「働く人」に目を向けると、「残業の禁止による収入減」を補填(ほてん)するために「副業解禁による職探し」や裁量労働制による「在宅での勤務時間の定義」や「テレワークによる新たな業務スペースの確保」が必要になるなど、新たな課題に向き合うことが求められています。これは、働く人が本当に望んでいる状況なのでしょうか。働き方改革のために、本来は必要のない無駄な労力が発生すると考える人もいるでしょう。

 そもそも働き方改革の一連の取り組みは、人にしかできない仕事(スキル)を得て、効率よく働き、新たな時間を創造することによって、人それぞれが生き生きと活動できる社会の実現を目指したものであるはずです。しかし、企業と人の「労働」関係において、何か大切な歯車がかみ合っていないような気がしてなりません。

 「その歯車がかみ合わない原因とはいったい何か?」の問いに対して、あらためてビジネスの基本に立ち返ってみると、ビジネスとは「時間という制約の下、最大限の効果を競い合っている」世界であり、その中において、「時間」のとらえ方が大きく変わってきたからではないかと私は考えています。

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