創業メンバーの語る「もうアナログは嫌だ」――俺のBakeryが挑戦するデジタルトランスフォーメーションFoodTech最前線(1/2 ページ)

電話受付と紙の台帳で予約を管理し、行列は人気店の証し……。「飲食業界はアナログ」という認識は、もう過去のものとなっている。飲食業の生産性を向上する「FoodTech」が身近なサービスで活用されている例を追った。

» 2019年08月22日 07時00分 公開
[柴佑佳ITmedia]

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 「俺のBakery」は、高級食パンが目玉商品のいわゆるパン屋さんだ。だが「俺の〜」シリーズの他の店舗と同様に長い行列ができるイメージが付きまとう。それだけ繁盛していて、おいしいパンが買えることは分かっていても、行列に並ぶくらいなら「ま、別の店でもいいか」となってしまう人もいるだろう。

 購入客の利便性を考えて予約を受け付ける店舗も多いが、俺のBakeryは「電話対応に人がとられるのはもったいない」という理由で開業当初から構想にすら入れていなかった。ところが銀座に2号店を出店するやいなや、行列への対応が現実的な問題として突き付けられた。

 一見、職人肌でアナログ的に見えるパン屋は、いかにしてITの力で行列を解消させたのか。取り組みを追った。

”俺の”ブランドとして大行列のイメージは大切だ

俺の株式会社 高野華織氏 俺の株式会社 執行役員兼社長室チーフマネジャー 髙野華織氏

 「“俺の”といえば行列と立食、というイメージが強いかと思います。実はもう、ほぼ全店着席で、席予約にも対応しているのですが……」と語り始めた、執行役員兼社長室チーフマネジャーの髙野華織氏。

 同社の経営する「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」は、立ち飲み屋風の気楽な店構えで本格的な料理を楽しめることが話題となり、人気が広がった。同様に、同社のブランドイメージとして大きいのが「行列」である。髙野氏が「開店直後の『行列の出る人気店』という話題性は貴重です」と語った通り、同社の系列店オープンには行列が付き物となっている。

 同社は2016年、東京都の「恵比寿ガーデンプレイス」内に、俺のBakery1号店となる「俺のBakery&Cafe 恵比寿」を出店した。高級食パンブームの盛り上がりをうけ、焼き上がりを狙った客が大行列をつくったという。「ガーデンプレイス内は行列がしやすい環境だったので、最初は予約システムの導入は考えていませんでした」(髙野氏)。

 しかし、転機は早々に訪れた。2017年、2号店となる「俺のBakery&Cafe 松屋銀座 裏」がオープンしたのだ。店舗は名前の通り、高級百貨店「松屋銀座」の裏手にあり、間口は狭く、出入り口が道路に面していた。店舗のすぐ隣に松屋の駐車場出入り口があり、安全面からも、近隣店舗の要望としても、「これはもう、いよいよなんとかしなくては、という状況」(髙野氏)となった。

現場の抵抗は「ありませんでした」

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