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2019年9月にリリース予定の「Google Chrome 77」で、ちょっとした……いや、かなり大きな変更が実施されます。それは、このコラムでも何度かフィッシング対策として紹介してきた「EV SSLサーバ証明書(以下、EV SSL)」の扱い。なんと、本物のサイトと偽サイトを区別する「URLバーの組織名表示」を無効にするというのです。
Upcoming Change to Chrome's Identity Indicators - Google グループ
「いったいなぜ安全の証明を無効化するのか?」と思われるかもしれません。その背景には、致し方のない事情がありました。
EV SSLは、WebブラウザとWebサーバの通信を暗号化し、改ざんを防止するためのSSLサーバ証明書の一種として登場し、金融機関のWebサイトで導入が進みました。
SSLサーバ証明書には、ドメイン名が存在することを証明するDomain Validation (DV)、組織が存在することを証明するOrganization Validation (OV)、そしてさらに厳密な実在性証明を課すExtended Validation (EV)の3種類があります。それらの中でEV の認証レベルは最も高く、また、WebブラウザのURLバー上に組織名が表示されます。EV SSLを持たないサイトには組織名が表示されないため、本物のサイトであるか否かが簡単に判別できるという仕組みです。
機能強化版SSLは「厳格な審査で一段高い信頼を実現」 - ITmedia エンタープライズ
5分で絶対に分かるEV SSL証明書 (1/6):5分で絶対に分かる - @IT
もし、サイバー犯罪者がITmediaをかたる「ITmediα」というドメインを取得し、SSLサーバ証明書を取得して錠のマークを表示できたとしても、EV SSLを取得するには「組織の登記簿の提出」などが必要になり、かなり困難です。取得までのハードルの高さが詐欺サイトのふるい分けとして機能していたため、私を含め多くのセキュリティ関係者が「URLバーに組織名が表示されていることを確認しましょう」と発信する根拠になっていました。
ところが……。
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