特集
» 2019年09月27日 10時00分 公開

AI人材育成に欠かせない、たった1つの視点:数値化する世界のサバイバル術 -AI時代に求められる数理的素養とは- (1/2)

「ビジネスマンがデータ分析など勉強する暇があったら語学でもやっておけ」という輩がいれば、それは全くの時代遅れだ。世界が数値化し、AIによってあらゆるビジネスの可能性が広がる現代において、文系であれ理系であれ、営業職であれ情シスであれ、「数理的な素養」が不可欠になる時代はすぐそこに来ている。しかし、今から数学やデータの解析手法を従業員に学ばせることはあまりに酷ではないか――。

[安井昌男,豆蔵]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

著者紹介:安井昌男

豆蔵 執行役員 デジタル戦略支援事業部長

1982年、清水建設に入社し2000年に情報システム部生産系システム開発課長に就任。2006年に豆蔵に執行役員として入社し、内部統制、全社IT企画支援、IT人材育成計画、各種企業および官庁への先端技術導入支援に従事した後、2014年にIT戦略支援事業部長(現デジタル戦略支援事業部長)に就任する。ビッグデータやAIなど先端技術の企業への導入に関する事業を統括。 2009年から2014年まで、内閣官房 情報通信技術担当室 補佐官を兼務。主な著書として、「仕事の取れるSE」(共著)日経BP社(2003/5/27)、「戦略的要求開発のススメ」翔泳社(2006/3/7)、「要求開発 - 価値ある要求を導き出すプロセスとモデリング -」(共著)日経BP社(2006/3/2)、「成功する要求仕様、失敗する要求仕様」(監訳)日経BP社(2006/11/2)、「まるわかり!人工知能 最前線」(記事寄稿)日経BP社(2016/09/15)、日経ITproならびに日経コンピュータ誌連載「あなたの仕事を劇的に効率化!機械学習の仕組み」などがある。

「革新」のための人材

 イノベーションという言葉が頻繁に使われるようになった。さらなる高成長のためのブレークスルーを指して言われることが多いが、元来「innovate」はラテン語で「革新」を意味する。

 インターネットにより地球規模でのデータの流通が可能になり、そのデータを用いた人工知能(AI)で「スピーカーと会話をする」ことができる製品やサービスがテレビコマーシャルに登場している。今まで人間でしかできなかった作業が自動化され、人間しかできなかった写真や文書の判別を機械ができるようになった。AIの話は、もはや“日常”であり、多くの人々に「革新」を体感できるものとして姿を現している。

 このような「革新」だらけの中で、企業や事業が、取り残されずに「survive」(生き抜いていく)ためには、自らも「革新」する必要がある。そのためには、何よりも「革新」を受け入れ消化し応用できる人材がいなければならない。それは、どのような人材だろうか。どのように育成すればよいのだろうか。これが本連載のテーマである。

デジタル化とは何か

 AIの話に移る前に、「社会のデジタル化」とは何かについて考えてみよう。例えば、文書を手書きではなくワープロソフトによって作成することは、もう何年も前から日常化している。PCという“デジタルな装置”で作成した文書は「デジタル化されている」ともいえる。そうなると、多くの企業は、既に何年も前からデジタル化を推進していることになる。また、デジタルカメラで写真を撮ることも同様だ。デジタルなカメラで撮影された写真なのだから、こちらも同じく「デジタル化」されていることになる。

 確かに、このような「デジタル化」は、今まで紙やフィルムに記されたものが、1と0の並びで構成されたデジタルなデータとして磁気媒体に記されたものだ。しかしそれは、昨今叫ばれる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」や「デジタル化への対応」の文脈で使われる「デジタル」とは異なる。

 一体、何が違うのだろうか。

 それは「数値化」、つまり計算が可能な数値として、取り扱えるかどうかという点である。例えば、先のワープロの例で考えてみよう。ワープロで作成した文書データは、文字を文字コードに変換しただけのものである。従って、検索の際は「文字コードの一致」すなわち「同じ文字例(言葉)が使われている文書」という方法でしか対応できず、「似たような“意味”を持つ文書」を探すことは不可能だ。

 数値化するということは「計算可能にする」ことだ。ワープロのデータも、文字コードの連なりで構成される“文章”の「意味」まで数値化できれば、「似たような“意味”を持つ文書」を計算して検索できる。

 とはいえ、計算機は機械なので、人間と同じように「意味」を理解しているわけではなく、理解しているかのように振るまうだけだ。「Word2vec」という技術の紹介では、よく「King」―「Man」+「Woman」=「Queen」という例が使われる。機械はKingやQueenの意味を人間のように理解しているわけではなく、意味を数値に変換することで答えを導き出しているにすぎない。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -