2017年から「時間、場所無制限の完全テレワーク」を導入したブイキューブ。社長の間下氏は「天気が悪い日の朝なんか、誰も来ませんよ」と笑う。同社にできて、他社にできないのはなぜなのか。無制限テレワークを「絵に描いた餅」にしない秘訣を聞いた。
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「定時出社は不要なのではないか」「PCとインターネット環境があれば、どこででも働けるのではないか」――
政府が働き方改革を推し進める以前から、ビジネスの現場に「定時までに出社する意義」を疑問視する声はあった。しかし現実として、どうしても出勤が必要な職種以外にも、定時に出社せざるを得ない風潮は根強く残っている。
その風潮の悪影響は、都市部では「通勤ラッシュ」という形で顕在化している。また、都市部と地方に共通するのが「生活と定時稼働を両立できる仕事がない」という問題だ。さまざまな事情でライフステージが変化し、企業の定める「定時」内の在席が難しくなったとき、最悪の場合は仕事を続けられなくなってしまう。
ブイキューブ社長の間下直晃氏はこのような状況に対して「価値を生み出している従業員が働くことを諦めてしまうのは、企業にとっても損失だ」と語る。
「自社のナレッジがたまった人材が離職を余儀なくされるのは、もったいないでしょう。今の時代、人材は貴重です。意味のない拘束を無くす、無駄な移動を減らす……そういった『無理をしない』施策を企業がとるだけで、従業員は働くことを諦めずに済みます。企業も採用や教育のコストを何度も払わなくて済むし、個人は負担が減ったぶん、仕事を頑張れる。それが生産性の向上につながります」(同氏)
経営者にとっての働き方改革は、人材一人一人の生産性を上げ、企業の生み出す価値を向上させることにあるというわけだ。
ブイキューブは、テレワークに必要なツールを提供する企業だ。政府方針に先駆け、1998年の創業時から、リモートコミュニケーションの仕組みを提案し続けてきた。
「特定の時間、特定の場所にいなければならない仕事というのは、確かにあります。しかし、ツールや文化、仕組みを変えれば、それらはもっと減らせます。その時、その場所にいなければならない人以外は動かずに働いたほうが生産的ですよね」と語る通り、間下氏自身も、日本で過ごすのは1年のうち3分の1ほど。それ以外は自宅のあるシンガポールか、別の国で生活しているという。同氏が日本にいるのは「日本にいるという状態が必要なとき」のみだ。
間下氏によれば、テレワークの目的は、人材の組織的な階層によって異なる。従業員層にとってのテレワークは、通勤の負担を減らし、業務の生産性を向上させる手段。一方で経営層にとっては、「そこにいる」という状態を実現させるための手段なのだという。
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