ドローンは、災害調査や測量など、多くのビジネスで使われるようになってきている。日本はエンタープライズドローン分野で世界と戦うことはできるのか。
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テレビで空撮映像を目にするのは、もはや当たり前。自然災害の調査、物資輸送など、さまざまなドローンの実用例が広がりを見せている。空飛ぶクルマの開発が進むなど、新たなビジネスチャンスとして「空」が注目されている。一方で、事故や逮捕者のニュースも大きく取り上げられていることから課題も多そうだ。
ドローンはどれほどのポテンシャルを秘めているのか。ドローンの未来、産業として発展していく可能性、そのために重要なこととは。ドローン産業全体を俯瞰する基礎知識を、一般社団法人日本ドローンコンソーシアム(JDC)会長の野波健蔵氏(千葉大学名誉教授・工学博士)に聞いた。
2019年の東京モーターショーでは、多数の「空飛ぶクルマ」が出展し、ドローンショーが開催されるなど、モビリティの世界で「空」がホットなテーマになっている。ドローンは新しい技術と思いきや、その登場は1935年、第二次世界大戦の前にまでさかのぼるという。
「地上戦が中心だった第一次大戦の後、世界の注目が空へ向かっていきました。英軍が相手の戦闘機を打ち落とす練習のために開発した、ラジコン機が最初のドローンだといわれています」
その名は、「クイーン・ビー(女王蜂)」。飛行時の音に由来しているとの説がある。その後、英国に続いて同様に軍事目的で米国が開発したのが「ターゲット・ドローン(Drone=オス蜂)」だった。ドローンはインターネットやGPSと同じく軍事目的で開発され、およそ90年の歴史がある技術なのだ。
1970年代に入ると、競技用の「エンジンヘリ」が登場。そして1989年。現在よく目にする4つのプロペラを持った「クアッドコプター」のドローンが、世界で初めて日本で発売した。手掛けたのはキーエンスで、「ジャイロソーサー」と名付けられた。だが時代が早過ぎたのか、あまり販売は伸びなかったという。
1990年代半ばにドイツで「マイクロドローン」が登場し、少しずつ裾野が広がっていく。携帯電話の普及が進んだ2000年ごろからは、通信機能を持つようになった。
2007年には、ドローンの普及を後押しする出来事が起こった。
「Appleが発売したiPhoneには、IMU(慣性計測ユニット)、後にGPS受信機など、各種センサーが搭載されました。生産のほとんどを担っていたのは、中国の深セン。地元工場は、センサーの開発力と生産能力を高めていきました。ところが2000年代の終わりごろになると、スマートフォンの供給は落ち着き、多くの雇用を維持するために新たな製品を開発する必要に迫られたのです」
そこで彼らが目を向けたのが、ドローンだった。
「スマホにプロペラを付けるような感覚で開発が進んでいきました。スマホの技術力を生かして、軽くて高性能な製品を安く作れます。同じものを同価格で日本企業が作るのはとても無理なこと。たくさんのセンサーや部品を調達するのが容易な環境の中で、ドローン開発の先頭を行ったのがDJIでした」
DJIは2019年12月時点でホビー用、産業用ともに世界で大きなシェアを誇るメーカーだ。2013年の「DJI Phantom」発売は、DJI全盛時代の始まりであった。
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