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» 2021年04月12日 11時30分 公開

DXを狙う企業の62.6%は「SIerが不可欠」IT革命 2.0〜DX動向調査からのインサイトを探る

ITに関する幅広い知見やノウハウを有するSIerは、企業のDXにおいて、どのような立ち位置にあるのでしょうか? 企業とSIerの関係を示す実態調査を基に探ってみます。

[清水 博,ITmedia]

SIerのビジネスモデルと友人

 「SIer(システムインテグレーター)のビジネスモデルが崩壊する?」と警鐘を鳴らす書籍や記事などを目にすることがとても多くなりました。その可能性もあるかもしれませんが、SIerで働く友人たちの資質をみる限り、彼らに将来がないとは全く思いません。

 ハードウェアベンダーやソリューションベンダーに所属する友人は自社製品の製品情報はマニアックなまでに詳しいものの、SIerに所属する友人の方が、最新のITビジネスの傾向や企業のITに関するホットな最新情報などを押さえており、常に幅広い知識を吸収している印象です。実際にハードウェア、ソリューションベンダーのセールスは、余程大きい顧客に対応する場合でない限り、リセール販売が大きなポーションを占めます。対照的にSIerは企業のIT導入や活用を包括的に支援する立場から、顧客と対話する時間が長く、顧客のペインポイントも正確に理解しています。常にお客さまと向き合う立場にいるからか、ビジネスマナーや所作などは筆者も見習うことが非常に多いと感じています。

筆者紹介:清水 博(しみず ひろし)


 早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。横河・ヒューレット・パッカード(現日本ヒューレット・パッカード)入社後、横浜支社でセールスエンジニアからITキャリアをスタートさせ、その後、HPタイランドオフィス立ち上げメンバーとして米国本社出向の形で参画。その後、シンガポールにある米ヒューレット・パッカード・アジア太平洋本部のマーケティングダイレクター歴任。日本ヒューレット・パッカードに戻り、ビジネスPC事業本部長、マーケティング統括本部長など、約20年間、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わる。全世界の法人から200人選抜される幹部養成コースに参加。

 2015年にデルに入社。上席執行役員。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。中堅企業をターゲットにしたビジネスを倍増させ、世界トップの部門となる。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。

 2020年定年退職後、独立。現在は、会社代表、社団法人代表理事、企業顧問、大学・ビジネススクールでの講師などに従事。著書『ひとり情シス』(東洋経済新報社)の他、経済紙、ニュースサイト、IT系メディアで、デジタルトランスフォーメーション、ひとり情シス関連記事の連載多数。


・Twitter: 清水 博(情報産業)@Shimizu1manITDX

・Facebook:Dx動向調査&ひとり情シス

 筆者は、自分が新しいプロジェクトなどで悩んだときなどに、このような“頼もしい”資質を備えたSIerの友人に電話し、一杯やりながら情報交換することを何十年も続けています。気の利いたSIerの友人は、その場に懇意なエンドユーザー企業のIT部長などを呼んでくれたりすることもありました。

 一方、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のカギを握る施策として「内製化」が注目を集める状況にあります。外部のプロ(=SIer)に任せていたIT施策を自前でできるようにしようという動きです。それでは、今まで顧客に向き合い、時には顧客に代わって課題解決に奔走して企業のIT施策を支えてきた頼もしいSIerは、DXが進む現在、どんな立ち位置にいるでしょうか。

内製化のトレンドにあってもSIerは「信頼できるアドバイザー」の意見

 デル・テクノロジーズが2021年1月に発表した「第2回 DX動向調査*1」では、企業のDXプロジェクトにおけるSIerの必要性についても調べました。

*1 デル・テクノロジーズ「第2回 デジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査」(調査期間:2020年12月15〜31日、調査対象:従業員1000人以上の国内企業、調査方法:オンラインアンケート、有効回答数:661件)


 一般にDXは最新のITテクノロジーと親和性が高いことから、調査前の予想では、DXの推進において顧客企業がSIerに求めるのは、内製開発のスキルやクラウド利用によるWebベースでの開発など、自律的な開発環境の整備フェーズでのノウハウではないかと予想していました。また、SIerに任せる業務としては、DX推進の核になる部分ではなく、SES(システムエンジニアリングサービス)の運用・保守・管理などが多いと想定していました。

 ところが、調査の結果、企業の23.4%が「SIerがいないと(業務が)回らない」、39.2%が「SIerがいないと今後のIT関連の計画が立てられない」と回答し、6割超(62.6%)の企業がSIerの存在は包括的な意味で「絶対必要」と考えていることが分かりました。

DX推進におけるSIerの必要性(出典:デル・テクノロジーズ「第2回 デジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査」)

 つまり、多くの企業にとって、SIerは部分的な業務や個別フェーズなどの支援にとどまらず、ITに関する包括的な支援を提供してくれる“頼れる”パートナーになっているようです。

 ITに関する計画といえば、筆者の経験では、毎年、2〜3年先を見越してIT投資を計画する必要がありました。しかも、実際は投資計画通りにいかないこともあります。そのような場合でも、SIerに相談すればきっと有効な打開策を打ち出してくれることでしょう。

IT人材構成比「ベンダー7:ユーザー企業3」が生む日本特有のSIとの関係

 調査ではDXを積極的に推進する「デジタル推進企業」とデジタル化やDXが進んでいない「デジタル未推進企業」とでSIerの必要性についての意識に違いがあるかも比較してみました。

 その結果、デジタル未推進企業では7割近く(68.9%)は「SIerが不可欠」と考えていることが分かりました。ただし、デジタル推進企業であっても、3分の1(33.3%)はSIerを必要としていることが明らかになりました。

デジタル推進企業とデジタル未推進企業におけるSIerの必要性

 この調査結果から、DXの推進における企業とSIerの関わりについて、いくつか発見がありました。

 1つ目は、DX推進環境が整うデジタル推進企業でも、3割強がSIerを必要としていることです。デジタル推進企業は、「DX実現に向けて頭一つ飛び抜けた1割の企業は『フツウの会社』と何が違うか」で紹介したように、内製力が高く(デジタル未推進企業の2.6倍以上)、トップがDXについての明確な指示を出しているなど、DXを推進する上での環境が整っています。こうした企業であってもDX推進に当たってSIerは重要なパートナーだと認識されていたのです。

 2つ目は、デジタル推進企業にしてもデジタル未推進企業にしても、SIerを必要とする理由の一つは「人員不足」があると考えられる点です。今回の調査で「DX要員の増減予定」について尋ねた質問では、デジタル推進企業もデジタル未推進企業も、4割が「今後の人員の増加を計画している」と回答したことから、現時点で人員が足りないと認識していることが分かります。なお「DX進捗に応じた一時的な人員増加」に関する傾向については両者に差異は認められませんでした。

 これは、たびたび話題になる日本特有のIT業界の人員構成に関係しているのではないかと考えられます。「平成30年版 情報通信白書*2」によると、米国ではIT人材の35%がベンダー企業に、65%がユーザー企業に属しています。日本ではほぼその逆で、72%がベンダー企業に、28%がユーザー企業に属しています。

日米のICT人材の比較(出典:総務省「平成30年版 情報通信白書」)

*2 総務省「平成30年版 情報通信白書(HTML版)」(2018年7月3日公表)


 販売競争が激化した結果としてベンダー企業が増員されてこのようなバランスになったのか、ユーザー企業が外部にリソースを求めてベンダー企業が増員されたのか、理由は特定できませんが、ユーザー企業のニーズにベンダーが応える姿に収まっているのでしょう。

 冒頭で記した通り、デジタル推進企業とデジタル未推進企業とで、SIerを必要とする割合には35.6%の差があります。

 SIerに依頼するところと社内でノウハウを高めるべきところや、自社内で内製すべきところとアウトソースすべきところや社内リソースを新たな価値創造に振り分ける検討など、いま一度、業務の在り方を振り返り、棚卸しすることで、DX推進への道筋が見えてくるかもしれません。

 ただし、SIerへの依存度が高い状況では、棚卸し自体が数年がかりとなることも考えられます。こうした状況を見越した計画を立案して実施することが肝要のようです。

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