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» 2021年04月21日 11時30分 公開

100社が回答した「わが社のDX推進目標」に見るDXのトレンドIT革命 2.0〜DX動向調査からのインサイトを探る

調査によると、DX推進企業が掲げる「DXの目標」は、“攻めのDX”も“守りのDX”も含め、種々様々であることが分かりました。分析を通してその傾向を探っていくと、自社のDXを振り返るヒントになるかもしれません。

[清水 博,ITmedia]

それぞれのDXの目標をテキストマイニング

 デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉は、もともと捉えどころが難しい言葉であり、その定義には企業によって多少違うかもしれません。経済産業省「DXレポート」はこうした定義の曖昧さを整理すべくDXの定義を「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」としていますが、その解釈や実現手段への認識は企業によってさまざまです。

筆者紹介:清水 博(しみず ひろし)


 早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。横河・ヒューレット・パッカード(現日本ヒューレット・パッカード)入社後、横浜支社でセールスエンジニアからITキャリアをスタートさせ、その後、HPタイランドオフィス立ち上げメンバーとして米国本社出向の形で参画。その後、シンガポールにある米ヒューレット・パッカード・アジア太平洋本部のマーケティングダイレクター歴任。日本ヒューレット・パッカードに戻り、ビジネスPC事業本部長、マーケティング統括本部長など、約20年間、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わる。全世界の法人から200人選抜される幹部養成コースに参加。

 2015年にデルに入社。上席執行役員。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。中堅企業をターゲットにしたビジネスを倍増させ、世界トップの部門となる。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。

 2020年定年退職後、独立。現在は、会社代表、社団法人代表理事、企業顧問、大学・ビジネススクールでの講師などに従事。著書『ひとり情シス』(東洋経済新報社)の他、経済紙、ニュースサイト、IT系メディアで、デジタルトランスフォーメーション、ひとり情シス関連記事の連載多数。


・Twitter: 清水 博(情報産業)@Shimizu1manITDX

・Facebook:Dx動向調査&ひとり情シス

 デル・テクノロジーズがに2020年1月発表した「第2回 DX動向調査*1」では、DXを推進する担当者にシンプルに「DXの目標は何か?」を調査しました。

 この質問の対象は、デジタル化やDXを推進している「デジタル推進企業」と、その予備軍ともいえるPoC(概念実証)段階の「デジタル評価企業」です。この2グループは、調査対象となった企業全体の40%ほどでした。そして、第一線のDX担当者が何を考え、何をテーマの主眼に置いているのか、という“生の情報”を探るため、そのトップ100社から集計したのが、下図の「DXの目標のキーワード」です。

DXの目標のキーワード(テキストマイニング)

*1 「第2回 デジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査」(調査期間:2020年12月15〜31日、調査対象:従業員1000人以上の国内企業、調査方法:オンラインアンケート、有効回答数:661件)。本稿で定義する「デジタル推進企業」などの分類は第1回で紹介しています


 この図は、DX推進のトップ100社の回答を基に、テキストマイニングツールでDXの目標に関するキーワードを視覚化したものです。丸の大きさはそのキーワードの出現回数の多さを示し、線の太さはキーワードの関係性の強さを示しています。真意を読み取るのは非常に難しいと思いますが、各人で何かを直感的に感じ取れればよいと思います。

 特に目立つのは、「業務」が一番大きく、その上に「プロセス」「改革」などが中心軸として挙がったことです。この点から、DX推進企業であっても、その取り組みの多くは、従来型の業務プロセスに主眼を置き、現状の改善や改革を目標にしていることが推測できます。

 その上には、「ai」(AI)や「rpa」(RPA)、「活用」というキーワードが相関する形で挙がっており、業務プロセスにAIやRPAを活用するという意向が伺えます。

 そこから右にたどっていくと、「データ」「整理」「見える化」などが挙がり、社内に埋蔵しているデータを可視化して有効に活用するといったテーマが読み取れます。

 また、左側には、これらとは独立した形で、「ビジネスモデル」「開発」「dx」(DX)や「新しい」などのキーワード群が挙がっているのも気になるところです。これらは、デジタル技術の活用でビジネス変革を目指す「攻めのIT」を想像させるキーワードです。このテキストマイニングの結果では、独立した離れ小島のように表示されていることから、現状の改善や改革を目標とする“主流”派からはずれた“傍流”的なものと分類されていますが、これは現場の肌感覚に近いDXの捉え方なのかもしれません。

 この他にも、独立したキーワード群として、右下には「コスト」「削減」、中央寄りの飛左下には「生産性」「向上」というキーワードが挙がっています。これらは、あらゆるプロジェクトで普遍的に出てくるキーワードと思われますが、DXの目標として挙がるべきものなのかについては疑問を感じるところです。

100社には100様のDX目標

 DX推進のトップ100社の回答から抽出したDXの目標に関するキーワードについては、出現回数の順位も集計しました。その結果は下図の通りです。

DXの目標を示すキーワードのランキング

 このランキングでは、「業務」という汎用的なキーワードが1位に挙がっていますが、「dx」「ビジネスモデル」「開発」などの言葉がそれに続いています。ここから、多くの企業が進めるDXは、決して「守りのIT」の発想に基づくものだけでなく、「攻めのIT」による取り組みも少なくないと解釈できます。

 また、具体的なDXの目標についての100社の回答を見ると、一言でDXといっても、その推進に際して企業が抱える課題は種々様々であることが浮かび上がってきました。中には、思わぬところにDXの効果を見出している回答や、気づきにくいDXの効用に焦点を当てているものもあります。あらめて見ると、自社のDXについて見直すきっかけになりそうですので、以下に100社が挙げたDXの目標を紹介します。読者の皆さんのDXのヒントになれば幸いです。

100社が掲げたDX目標

  1. 最新のテクノロジーを取り入れて遅れているデジタル化を一気に追い付き、追い越す
  2. 新しいビジネスモデルの確立
  3. ビジネス部門でDXを利用した新しいビジネスモデルの開発
  4. 経営の見える化、業務の効率化、エラー削減
  5. ビジネスプロセスの見える化に基づく業務生産性、品質の向上
  6. ビジネスの効率アップと収益の拡大
  7. RPAの活用で効率性を大幅に上げる為の業務プロセス改革
  8. ビジネス/サービス部門でAIを活用した差別性のあるビジネスモデルの開発
  9. 自社の非効率な運用ルールの改善などのDX促進
  10. クラウドに集約して無駄なサーバコスト、セキュリティコストの削減
  11. BI活用で経営指標の見える化
  12. AIやRPAの活用で生産性向上
  13. 完全ペーパーレスの実現
  14. 現在までに作り上げた技術の整理、共有化を行いオープンイノベーションでの効果を高める
  15. 新規産業への元となる基礎技術、基盤技術の構築を実現する
  16. RPAなどを強く推進し、業務改善に取り組んでいる
  17. DXで活用した新しいビジネスモデルを開発する
  18. 利益拡大に向けたビジネスモデルの変革支援
  19. フロントのオペレーションレス化
  20. 業務プロセスの改善、効率化
  21. 設備の稼働状況の見える化を実現するために、各製造拠点のデータを収集し状況を表示
  22. 生産性向上、経営ビジョン実現
  23. 各種DBの統合
  24. デジタル新ビジネスの創造/推進
  25. 社内デジタル化−新しい業務スタイルの構築 業務システムの強化・安定稼働
  26. 事業をDXにより改善していく
  27. 働き方改革に倣ってITを駆使して業務効率を改善するRPA導入やリモート勤務などの積極的導入
  28. 作業の半分はロボットと、管理の半分は遠隔で、全てのプロセスをデジタルに
  29. デジタルを用いて内外のステークホルダーとの連携を高密度化し、ビジネス機会を拡大させる
  30. 新しいビジネスモデルの構築
  31. 経営の見えるかを実践するため、世界中の関係会社の会計システムを統合する
  32. グループ一体の推進体制の構築と最適なデジタル経営を推進する
  33. IT活用によって今までできなかったことを実現する
  34. 足元の業務のデジタル化・自動化による生産性向上
  35. 顧客情報・ビジネスのデジタル化 を推進することで、収益 拡大を図る
  36. 新ビジネス創出、生産性倍増
  37. 事業運営、働き方のデジタル化により、効率性向上を図る
  38. 業務プロセスの改善と、それに伴って生まれた新しい領域へのリソース転換による業績拡大
  39. AIなどの技術を用いて業務改善、新規事業を新たに構築する
  40. 業務プロセスの刷新
  41. 業務効率化、業務改善
  42. 経営の見える化を実践
  43. 将来のビジョンを描く
  44. AI、RPAの導入による業務改革と生産性向上
  45. 新しいビジネスモデルの開発と実行
  46. 経営、開発見える化を実践する為のデータの整理統合、BIの開発
  47. 業務プロセス改革とITの導入
  48. 自動化による省人化
  49. 見える化を実践するためのデータの整理統合、BIの開発
  50. DXを利用した新しいビジネスモデル
  51. AIなどを用いた、データに関する統合対象拡大と、解析・活用に関する民主化と高度化
  52. 顧客の満足するサービスレベルに達する
  53. 導入、または導入に向けて検討開始し、まずモデル的な部署を作る
  54. ITを活用してビジネス、業務の革新を実行する
  55. 営業と工場の一気通貫
  56. 生産性を大幅に上げる為の業務プロセス改革とITの導入
  57. システムガバナンスの強化・高度化、社内デジタル化――IT装備の利活用及び強化、社内デジタル化――新しい業務スタイルの構築、業務システムの強化・安定稼働
  58. 現在のITコストを何らかの形で削減する
  59. 人事労務管理のシステム化による業務プロセス改革
  60. 新たなビジネスの在り方の模索
  61. 新たなビジネスプロセスを新たなIT技術を使って実現する
  62. 業務のデジタル化推進の窓口
  63. 全社に分散しているDX関連ビジネスを主体としている担当を組織的に統合し、ビジネスモデルの成熟及び技術者の育成を横断組織として形成する
  64. 既存システム、業務にデータ、デジタルを活用して業務改善を試みる
  65. 開発部場への浸透活動
  66. 経営の見える化を実践するためのデータの整理統合
  67. デジタル技術によってビジネスを革新し、社会を変える
  68. ITコストの削減
  69. 現行システムの見えるか化数値や手順によって確立する、現行システムの共通化を図る、現行ビジネスを保守しながら、新規ビジネスを5年後に20%増加させる
  70. 3年で10%のコスト削減
  71. RPA活用で生産性を向上させる
  72. AIやRPAの活用で生産性を大幅に上げるための業務プロセス改革とITの導入
  73. アドバンスドIT技術者の育成 DX売上高の向上
  74. デジタルツールを活用した業務プロセスの改革
  75. 人件費の削減
  76. ビジネス領域の拡大と新たなビジネスモデルの開発
  77. 業務をスルーで見える化し、重複などを省き効率化を実現
  78. 業務プロセスを刷新し効率を上げる
  79. ユーザー価値重視型企業への変革のため、「ユーザーは何を求めているか」「どうすれば価値を提供できるか」を重視し、全社的なDX全体の構想と仕組みを構築すべく、現在は2つのプロジェクトを柱に業務を推進
  80. 社内デジタル化――IT装備の利活用及び強化
  81. 今までの業務にとらわれず、改革すること
  82. 新しいビジネスモデルの開発
  83. 顧客の満足するサービスレベルに達する
  84. RPA活用などにより、業務の効率化を図る
  85. 経営の見える化を実践するためのデータの整理統合、BIの開発
  86. 稟議書のデジタル化、遠隔授業の管理
  87. 保有データの整理と新規プラットフォーム構築によるデータ統合業務プロセスの見直しとIT化
  88. 生産性を向上させ、社員の負荷を低減し、働き方改革を実現する
  89. 現在のITコストを3年で30%削減する
  90. 顧客接点部門でのIT活用による生産性向上
  91. 業務の明確化や簡素化を達成する
  92. DXを利用し、ビジネスモデルを確立する
  93. 現在のITコストを削減する
  94. 基幹システムSOR、SOEの推進を図る
  95. AI活用によるビジネス創出
  96. ITによる書類の全電子化RPAによる業務プロセスの改善
  97. 生産の効率化につなげ、競争力を強化する
  98. 他社との差別化
  99. システムガバナンスの強化・高度化
  100. これまでの事業方法をDXを用いて変革していく

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