では、プロセスマイニングの中身について、村瀬氏の説明を基にもう少し勘所を探ってみよう。
多くの企業で見られる現状の業務の流れは、例えば図2に示すような「注文書受理」から「請求書消込」までの業務プロセスを見ると、複数の異なる業務ソフトウェアが介在している。この状況で業務プロセスを可視化しようとしても、それぞれの業務ソフトウェア内では可能だが、それらをつなげて見ることはできない。
だが、プロセスマイニングを使えば、全体の業務プロセスを可視化できるようになる。なぜか。
図2においてプロセスマイニングを適用する場合、全体の業務プロセスにこの技術を覆いがぶせるようなイメージだ。その上で、図3に示すように「伝票番号」「処理内容」「処理日時」(タイムスタンプ)の3種類のログデータを収集することによって処理の内容とそれに要した時間を可視化する。これにより、全体の業務プロセスを、あたかもレントゲン撮影をしたかのように把握できる。
このようにプロセスマイニングを適用すれば、企業は業務プロセスにおいて、仮想空間で現実世界を再現できる「デジタルツイン」を実現できる。なぜデジタルツインがあればいいのかというと、基幹システムへの入力は人間の手によるところが多いため、実世界で行わざるを得ないが、プロセスマイニングは全ての作業をデジタルツインで実施でき、しかも業務プロセスの改善に向けた変更も容易に試せるからだ(図4)。
では、このプロセスマイニングがDXにどのようなインパクトをもたらすのか。村瀬氏は図5を示しながら、次のように語った。
「DXには3つの重要な要素がある。作業のスピードを指す『ベロシティ』、感動体験を指す『エクスペリエンス』、AIやデータ分析を使って知見を引き出す『インテリジェンス』だ。この3つによってDXの成熟度が決まる。これまで業務プロセス全体を見直す際には、全体のタイムスタンプがつながっていなかったため、ベロシティにおいて効果を上げることが難しい面があった。そこを詰めるため、タイムスタンプをベースにいわば『時を制御』してDXの成熟度を高めようというのが、プロセスマイニングの核心だ」(村瀬氏)
その上で、同氏はこう続けた。
「私はそんなプロセスマイニングを、DXを完遂させるための技術の最後のピースだと確信している。私がCelonisに移ったのも、日本企業のDXに向けてこの最後のピースをお届けしたいと思ったからだ」(村瀬氏)
ちなみに、Celonisが提供するプロセスマイニングから業務プロセス改善を促すソリューションは「Celonis Execution Management System」(Celonis EMS:業務実行管理)と呼ぶ。図6がその主要機能で、図の左側から順次適用していく形だ。これらの機能とともに、SAPやOracle、Salesforce.comなどの業務ソフトウェアと連携して利用できるのが大きな特徴となっている。
取材の最後に「プロセスマイニングを活用したCelonisのソリューションは企業に何をもたらすのか」と聞いてみた。すると村瀬氏は、「デジタルとデータを活用した革新的なビジネス運営を実現するための変革を支援する」と答えた。どうやら、プロセスマイニングという技術は、DXによるビジネス変革の決め手になりそうだ。引き続き、注目したい。
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