マクドナルドは“大寒波”をどう乗り切る? コスト削減と「できたて」提供を両立する店舗運営戦略Restaurant Dive

コロナ禍や原価高騰で外食産業が“大寒波”に見舞われる中、マクドナルドは従来型店舗よりも小ぶりなテスト店舗をオープンした。効率性を重視してきた同社が、ポストコロナ時代を見据えて取り組むテクノロジーを駆使した店舗運営の在り方とは。

» 2023年01月05日 08時00分 公開
[Aneurin Canham-ClyneRestaurant Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

Retail Dive

 McDonald’sは2022年12月1日、ベルトコンベヤーで注文品を顧客に届けるモバイルオーダー専用のドライブスルーレーンを備えた店舗を試験的にオープンしたと発表した(注1)。

 コロナ禍や原価高騰で外食産業が打撃を受ける中、持ち帰り専用店舗に注力するMcDonald’sの戦略は奏功するだろうか。合理化と顧客サービスを両立するために同社が採用したテクノロジーとは。

ハンバーガーの“鮮度”を高めつつコストを削減できるか?

 「Restaurant Dive」宛てに届いたMcDonald’sからの電子メールによると、テスト店舗は従来型店舗の平均よりも26%ほど狭く、店内に飲食スペースはない。デジタル注文するためのスペースや、デリバリー業者や注文を済ませた顧客が商品を受け取るための専用棚と部屋が設置されている。

 McDonald’sは2020年、IR情報の中でテスト店舗の戦略を明らかにした(注2)。このテスト店舗は、ドライブスルーに関するイノベーションを重視する同社の幅広い取り組みの一環だ。

 この店舗は従来型のドライブスルーレーンも備えている。同社が新しいテクノロジーや店舗構成を大規模に展開するための実験場としての役割を担う予定だ。

 McDonald’sのマックス・カルモナ氏(グローバルデザインおよびレストラン開発担当シニアディレクター)は「この店舗が提供する新しいドライブスルーの在り方は、ドライブスルーと店外飲食型店舗が最先端であり続けるための取り組みの一つだ」と述べる。

 同社によると、顧客にできたての料理を提供するために、モバイルアプリで注文した顧客が店舗に近づいていることを位置情報テクノロジーによって検知して、従業員に指示する機能をこのテスト店舗は備えている。フランチャイズでMcDonald’sの店舗運営を手掛けるキース・ヴァネセク氏のテスト店舗では、オペレーションを合理化するために調理場にも手を加えたという。

ベジタリアンバーガーと音声注文“不発”の理由

 2021年は原価の高騰によって店舗への投資が縮小し、飲食業界全体の成長が鈍化した。店外飲食型店舗は従来型店舗よりも狭い面積の土地で開店できるため、コスト面で魅力的な店舗形態となりそうだ(注3)。ただし、人件費に関しては従来型店舗よりも抑えられるわけではないようだ。

 ファストフード業界やファミリーレストランは、スピーディーなサービスの提供とシームレスな顧客体験における競争が激しくなるにつれて店外飲食型店舗をテストしてきた(注4)。

 2022年10月には、米国のファストフード店Jack in the Boxが初の店外飲食型をオープンし、Jimmy John'sやSweetgreenなどのカジュアルレストランはドライブスルーの“開発”を強化している(注5)(注6)。複数の飲食店をフランチャイズ経営するInspire Brandsが持ち帰り専用をコンセプトに試行錯誤を続けていることも、その一例だ(注7)。

 一方でMcDonald’sは最近、ベジタリアンハンバーガーや音声注文テクノロジーなどのイノベーションを試みているが、大きな革新にはつながっていない。これはおそらく、外食産業のトレンドの限界を反映しているのだろう(注8)(注9)。

© Industry Dive. All rights reserved.

注目のテーマ