日立造船のCoEリーダーが語る「ユーザー企業主導のDX/人材育成」の勘所“ITベンダーがいないとムリ”は幻想だ

ごみ焼却発電施設や洋上風力発電などの事業を手掛ける日立造船。同社のDXはシステムの内製化をはじめ、パートナー企業との付き合い方など“自社で主導する覚悟”を持って進められていた。同社のCoEリーダーが詳細を語る。

» 2022年07月21日 07時00分 公開
[斎藤公二ITmedia]

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 デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に取り組む多くの企業にとって大きな課題となるのが、事業計画に基づいたDX戦略の策定とこれを実際に主導し、実践する人材の確保および育成だ。

 1881年に大阪鉄工所として創業し、日立製作所グループを経て、現在は造船事業を分離し、エネルギーと水を中心とした「環境」をテーマにビジネスを展開する日立造船は、DX推進に向けてどのような取り組みを進めているのか。同社の橋爪宗信氏(常務執行役員 ICT推進本部長)が詳細を語った。

本稿は、ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)が主催する「ガートナー アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミット」(2022年6月16〜17日)のゲスト基調講演「日立造船のDXの取り組み」の講演内容を基に構成した。

中計とリンクした全社DX戦略を策定、営業利益率5%アップを目指す

 日立造船は、ごみ焼却発電施設や洋上風力発電、橋梁、メタネーション(注)、陸上養殖施設向け水処理施設、全固体リチウムイオン電池などの事業を手掛け、連結売上高が4085億円、従業員数1万1089人規模を誇る大企業だ。

(注):水素と二酸化炭素を反応させ、天然ガスの主成分であるメタンを合成する技術。

 日立造船は中期経営計画の基本方針として、顧客・市場との対話を促進し、全ての製品やサービスにIoTとAI(人工知能)を組み込むことで、顧客価値の最大化を目指している。同社の橋爪氏は「これまでのモノづくりとエンジニアリングの強みに加えて、DXを強みにすることで2030年までに営業利益率を5%から10%に向上させることを目指しています」と話す。

 橋爪氏が本部長としてリードするICT推進本部は、ICTの組織横断的な利用を促進するCoE(Center of Excellence)組織として、日立造船グループの製品やサービスのデジタル化、それを支える業務プロセス、生産プロセスのデジタル変革を支援することをミッションに掲げる。

日立造船の橋爪宗信氏

 「2021年12月に中期経営計画とリンクした全社DX戦略を策定し、それらを支える技術基盤としてDX基盤を構築することを決めました。日本は事業会社にIT人材が少なく、デジタル化に取り組む場合、IT企業に発注しなければならずコストが嵩むことがあります。当社のDX基盤構築は、われわれ自身がITシステムを作り込み、デジタル化に率先して取り組む技術力を身に付けることを目的としています」(橋爪氏)

 同社のDX基盤構築に当たって5つの施策が実施されるが、特に注力しているのが「プラットフォームの強化」と「DX人材の育成・拡大」だ。それぞれ詳細を見ていこう。

事業DXを推進するために3つのプラットフォームを整備、内製を推進

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