Microsoft Igniteが開催 ナデラCEOが示したビジョンと新サービス(1/2 ページ)

Microsoft Igniteが世界6カ所で同時開催された。Microsoftが今回のイベントで新たに掲げたビジョンとそれに向けた新サービスや製品とは何か。ナデラCEOの講演で確認しよう。

» 2022年10月14日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

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 Microsoftはテクニカルカンファレンス「Microsoft Ignite」を、2022年10月13〜14日(日本時間)に開催した。日本時間の2022年10月13日午前1時からは同社のサティア・ナデラCEO(Chief Executive Officer)の基調講演が行われ、その他にも日本独自のセッションとなる「Microsoft Ignite Spotlight on Japan」が同日午前10時30分から実施された。

 日本マイクロソフトの岡嵜 禎氏(執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長)による基調講演や、Microsoftの沼本 健氏(エグゼクティブ バイスプレジデント コマーシャルチーフ マーケティングオフィサー)によるセッションなど、50以上の日本語オリジナルセッションを行った。Microsoftは同イベントを、「世界中のIT技術者や開発者、データやセキュリティに関わるプロフェッショナルが集まる2日間」と位置付け、世界6カ所で同時に開催した。

 同社は今回のイベントで「Do more with less」(より少ない資源で多くを行う)をキーワードとしており、それを実現するためのコアテーマに「『Microsoft Azure』(以下、Azure)でアジリティを高めてビジネスを最適化し、データ主導型のエクスペリエンスを実現」「自動化とAI(人工知能)でビジネス全体で効率性を実現」「世界で最も完全なクラウド開発者向けプラットフォームでイノベーションを促進」「オフィスでも家庭でも、あらゆる場所で従業員の意欲をさらに向上」「総合的なセキュリティで、あらゆる物や人をあらゆる場所で保護」の5つを定めた。

ナデラCEOが語った Microsoftのビジョンとそれを実現する要素

サティア・ナデラCEO

 ナデラCEOは「Do more with less」の説明から基調講演を始めた。

 「私たちは歴史的な変化の局面を迎えている。その中で確かなのは、『不確実性の中であらゆる業界の組織がデジタルテクノロジーを活用して、より少ないリソースでより多くのことを実現して変化を乗り越え、強靭になろうと考えている』ことだ。ハードに長時間働くことは、イノベーションを実現したり、アジリティを実現したりすることにつながらない。その状況ではスケール化ができないからだ。Microsoftは、テクノロジーを活用して、組織が達成できることを増やす支援をしていきたい」(ナデラCEO)

 最初のテーマである「Azureでアジリティを高め、ビジネスを最適化し、データ主導型のエクスペリエンスを実現」を可能にするために、Microsoftは「クラウドへの移行が需要にあわせたITの拡張と少ないコストで多くのことを実現できる最良の方法」だと定義しており、Azureに移行することでコスト削減と運用の効率化を実現するという。

 全世界の60以上のデータセンターを通じてどこでもAzureを利用できること、機密性の高いデータやアプリケーションを利用できること、「Azure Arc」でオンプレミスやエッジ、マルチクラウドでも「Azure Service」の構築が可能であること、「AKS」を多様なプラットフォームで実行できるようにすることなどを強調した。

 また、Armプロセッサを搭載したAzure仮想マシンやPremium SSD v2 Disk Storageの一般提供を開始したことに加え、業界初のクラウドネイティブフルマネージドSANサービスである「Azure Elastic SAN」のプレビュー版の提供や機密性の高いアプリケーションを構築できる「Azure Managed Confidential Consortium Framework」のプレビューの発表を行った。

 さらに、「Microsoft Intelligent Data Platform」で包括的なエンドツーエンドのデータプラットフォームを構築し、59%のコスト削減が可能であると、ナデラCEOは話した。「Azure Cosmos DB」では、分散型の「PostgreSQL」をサポートする。

Microsoft Intelligent Data Platformの構造(出典:Microsoft提供資料)

 「Azure Synapse Link」では「Azure SQL」や「Cosmos DB」、Dataverse向けのコネクターを提供し、マルチクラウドのデータソースからインサイトを得られるようになった。また、ナデラCEOによれば、「Microsoft Purview」はハイブリッドデータ資産の統合ガバナンスプラットフォームとして進化した。

自動化とAIでビジネス全体で効率性を実現

 2つ目の「自動化とAIでビジネス全体で効率性を実現」についてナデラCEOは「AIはより少ないコストで、多くのことを実現するための究極のツールだ。アプリケーションの設計や言語、構築方法、デリバリーを変化させるもので、MicrosoftはAIの価値を実現して責任あるAIを提供することにコミットする」と宣言した。

 同氏によれば、Azureは他のクラウドサービスに比べてAIモデルのトレーニングにおける計算スループットが2倍となり、1ドル当たり最大2倍のコスト効率を発揮できる。

 「Azureは世界最高水準のネットワークとシステム最適化によって実現され、データの準備からAIモデルの管理まで機械学習のライフサイクル全体で最適なツールを提供している。『Azure Machine Leaning』を使って大規模なAIモデルの構築を行い、トレーニングやデプロイ、運用ができる」と話すナデラCEOは「AzureはPyTorchにとって最適なプラットフォームだ」と続け、「Azure Container for PyTorch」の投入を発表した。

 またOpenAIとの共同研究の取り組みと成果についても説明した他、「DALL・E2」をAzure OpenAI Serviceに導入すること、「Microsoft Designer」で誰もが簡単にデザインを公開できるようになることなども発表した。

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