Microsoft Igniteが開催 ナデラCEOが示したビジョンと新サービス(2/2 ページ)

» 2022年10月14日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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世界で最も完全なクラウド開発者向けプラットフォームでイノベーションを促進

 3つ目の「世界で最も完全なクラウド開発者向けプラットフォームでイノベーションを促進」についてナデラCEOは「組織内のデータサイエンティストやその他プロフェッショナルの開発には限界がある。全ての人に権限を与えることが大切である」と述べ、2025年までに新たなアプリケーションの70%がローコード/ノーコードで開発されるとの予測を示しながら「Power Platform」の強化を強調した。

 同氏は新たに、AIを活用したCopilot機能を「Power Automate」に搭載したと発表した。また、コードの40%が「GitHub Copilot」によって書かれており、開発者によるコーデイングが50%以上速くなったと紹介しながら、「11月9日に開催される『GitHub Universe』ではGitHub Copilotの計画を詳しく発表できる」と述べた。

コードの40%がGitHub Copilotによって書かれている(出典:Microsoft提供資料)

 その他、「Dynamics 365」がAIによって生成された会話の概要を自動化できること、AI Builderはワークフローにインテリジェンスを簡単に追加できるようになったことを紹介した。

 また、これらの機能を活用した「Microsoft Intelligent Document Processing」や「Microsoft Syntex」などを新たに発表した。

 「Microsoft SyntexはAI BuilderとPower Automateの機能を利用することで、大量のコンテンツを自動的に読み取り、タグ付けやインデックス付け、必要な場所への表示を可能にする。AIを活用した要約や翻訳、注釈も可能だ。「Microsoft 365」や「Microsoft Teams」に統合して利用できる」(ナデラCEO)

オフィスでも家庭でも、あらゆる場所で従業員の意欲をさらに向上

 4つ目の「オフィスでも家庭でも、あらゆる場所で従業員の意欲をさらに向上」を実現するためにナデラCEOは、「私たちは一生に一度ともいえる働き方改革を経験した。もはや2019年には戻れない。新たな道を見つける必要がある」と話し、「従業員は『これまで以上に働いている』と感じているが、リーダーは『従業員が仕事をやり遂げていないのではないか』と心配している。また、データを基に組織を再編成する必要がある。従業員がオフィスに来る目的は『生産性』のためではなく、お互いを『理解する』目的に変化していることにも対応しなくてはならない。従業員を新たに雇用し、その雇用を継続するための努力も必要だ。従業員が生き生きと働けるように活力を与えなくてはいけない。これらを実現するためには新たな仕組みが必要だ」と続けた。

 Microsoft 365やMicrosoft Teams、「Microsoft Viva」は、こうした新たな環境の実現を支援する。

 Microsoft 365は「Microsoft Graph」を利用して、分散的に働く従業員を一つのシステムでつなぐ。ナデラCEOは「あらゆる働き方に対応できるアプリケーションだ」と強調した。

 Microsoft Teamsは、過去1年で450以上の新機能を追加しており、新たに「Microsoft Teams Premium」を提供する。同サービスは、使い慣れたオールインワンのTeamsコラボレーション体験をベースに、「1:1での対話」や「バーチャルアポイントメント」「タウンホール」「ウェビナー」など、あらゆるミーティングをパーソナライズ、インテリジェント化してセキュアなものにする。さらに、「Microsoft Teams App Store」では、サードパーティーが開発した1600以上のアプリが提供され、10万以上の企業がこれらのアプリを導入しているようだ。

Microsoft Teams Premiumのイメージ(出典:Microsoft提供資料)

 「Microsoft Teams Rooms」は、シスコがMicrosoft Teamsデバイスパートナーとなり、同社の6種類のミーティングデバイスと3種類の周辺機器が2023年初頭までに認定デバイスとして承認される予定だ。Teams Rooms on Androidをネイティブに実行する環境も整うことになるという。

 ナデラCEOはメタバースへの対応についても説明した。Metaとの提携で、「Microsoft Teams immersive meeting experiences for Meta Quest」を発表したこと、自らのアイデンティを反映したアバターによって会議などに参加できる「Mesh Avatars for Microsoft Teams」のプレビュー版を発表したことに触れた。

 産業用メタバース分野では、メルセデスベンツやコカ・コーラなどが活用していることにも注目した。

 ナデラCEOは新たなコネクテッドワークプレースとして、「Microsoft Places」を発表した。近日中にプレビュー版を提供し、2023年には利用が可能になるようだ。Microsoft Placesはハイブリッドワークを最適化するツールで、仮想スペースと物理スペースを接続して「つながり」や「エンゲージメント」「生産性」の向上を目指す。

Microsoft Placesのイメージ(出典:Microsoft提供資料)

 Microsoft Vivaについて同氏は、「業界初となるハイブリッドワークのための従業員体験プラットフォーム」と位置付け、「全ての従業員が卓越した能力を発揮できるように支援していく」と述べた。

 さらに、「Microsoft Edge」は「ビジネスに最適なブラウザであり、プライバシーを保護しながらマルウェアやフィッシングに対応できる」と話した。新たに「Microsoft Edge Workspaces」を発表し、「プロジェクトに参加する全ての人が、同じWebサイトやWebアプリ、ファイルを1カ所で閲覧できるようになる。Webブラウジングをマルチプレーヤー化して新たなエクスペリエンスを提供する」と語った。

Microsoft Edge Workspacesのイメージ(出典:Microsoft提供資料)

 「Windows 11」については、強化されたフィッシング保護機能などでエンドポイントの脆弱(ぜいじゃく)性を低減できると説明した。「Windows 365」はWindows PCとAzureでWindowsの利用方法を変革した製品になると話し、新たにWindows 365 Appのプレビュー版を公開したこと、「Windows Government」を一般公開したこと、「Windows 365 shift work」を間もなく提供できると明らかにした。

総合的なセキュリティで、あらゆる物や人をあらゆる場所で保護

 最後のテーマである「総合的なセキュリティで、あらゆる物や人をあらゆる場所で保護」についてナデラCEOは「セキュリティは全ての組織にとって最重要課題だ。だが、アジャイルになればなるほど、セキュリティチームはリスク管理に苦慮している。そこに対してEntra、Purview、Priva、Intune、Defender、SentinelによるMicrosoft Securityを提供している。マルチベンダーのセキュリティソリューションに比べて60%以上のコスト削減を実現した」と述べた。

 「Microsoft Defender for Cloud」を強化してマルチクラウドやDevOpsのセキュリティ対策を推進する。ランサムウェアが暗号化する前にその動きを自動的に止める機能なども提供する予定だ。

Microsoft Defender for Cloudのイメージ(出典:Microsoft提供資料)

 講演の最後にナデラCEOは、「これらのプラットフォームやツールを利用して、どのように世界を変革していくかはユーザー次第だ。非営利団体の多くは困難の最前線にいて、少ないリソースで対応している。Microsoftはテクノロジーによってそれを支援したい。今後5年間で支援する非営利団体の数を倍増したい」と語り、より少ないリソースでより多くのことを実現する「Do more with less」の考え方がますます重要になることを示した。

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