データドリブン後進企業ほどされたくない“5つの質問”CIO Dive

多くの企業がデータドリブンな組織の構築に向け、データカルチャーの変革を実現しようとしている。しかしForresterのアナリストによれば、この変革をする前にまず考えるべき5つの項目があるという。

» 2022年10月27日 07時00分 公開
[Kim HerringtonCIO Dive]
CIO Dive

編集者注:本稿は、Forrester Researchのシニアアナリスト、キム・ヘリントン氏によるゲスト記事です。


 アクショナブルアナリティクス(実用的な分析)への道は、夜間に曲がりくねった砂利道を進むようなものだが、最終的な目的地は明確だ。

 その目的地とはデータが簡単に洞察に変換され、適切なタイミングでより賢明なビジネスの意思決定が可能になる“データのユートピア(理想郷)”である。

 Forrester Researchはこのユートピアを享受する企業を「インサイトドリブンビジネス」(以下、IDB)と呼んでおり、その作り方は企業ごとで異なっている。当社のデータによると初級IDBと比較して、上級IDBは収益が20%以上成長したと報告する確率が8倍も高くなっている。

 しかし、2019年から2021年にかけて上級IDBに分類された企業は世界でわずか7%だった。明確な目標があるにもかかわらず、なぜCIO(最高情報責任者)は企業を初級IDBから上級IDBに移行させることが困難なのか。エンタープライズコラボレーションソフトウェアは有用だが、人と文化の問題は企業のデータカルチャーを変革する上で“アキレス腱(けん)”となっている。

 上級レベルや中級レベルのIDBは、非常に多くの上級分析意思決定者がビジネス分野に関連する洞察を適用するのに必要なスキルとツールを従業員に提供できる文化に投資している。Forresterによると、その一方で初級IDBでこうした取り組みをしている企業は58%にとどまっていた。

データカルチャーを変革するために、CIOは「未来への適合」を考えよ

 CIOはあらゆる課題を解消するためにテクノロジーを頼る。なぜならそれは彼らが最も慣れ親しんでいる手段だからだ。しかしこれに違和感を覚え、テクノロジーだけを解決策とするのではなく、レジリエンスがあり、創造的で、適応力のある未来に適したデータカルチャーを創造することが重要だ。

 未来に適合した組織が成功するには、従業員が成長マインドセットを受け入れるように動機付けられ、リーダーシップによって成人の学習行動を実現しなければならない。

 これは全社的なデータリテラシートレーニングを開始する前に実行しなければならない。しかしデータカルチャーやデータ戦略は非常に大きな概念であるため、変革について議論する良いタイミングを見つけることは困難だ。

データカルチャー変革への準備ができているかどうかを計る5つの質問

 ほとんどのテクノロジーエグゼクティブのチームは、セルフサービスのソリューションを作り出している。CIOは、他部門の従業員がこれらのセルフサービスのソリューションを使用してビジネスの意思決定を迅速化し、情報を提供できるように、企業のデータカルチャーを変革することに意欲を燃やしている。

 データカルチャーやコミュニケーション、社内コンテンツ戦略を評価する際には、以下の5つの常識的ではあるが答えにくい質問をしてみるといい。

1.全ての従業員が既存の情報をどこで探せばいいかを知っているかどうか

 普遍的なセルフサービス分析プラットフォームを作ったとして、一般の従業員はそれがどこに存在するのかを答えられるか。あるいはその存在そのものを知っているだろうか。これを改善するには、ビジネスインテリジェンスのコンテンツ管理とデータコミュニケーションを考える必要がある。

2.全ての従業員が、質問への回答を求めたり、既存の情報に関するヘルプを見つけたり、新しい情報をリクエストしたりするための場所を知っているかどうか

 ある従業員がセルフサービスのユニバーサル分析プラットフォームを見つけたが、もっと多くのデータが利用可能かどうかという疑問を持っていたとする。この際、従業員は、この疑問を解消するためにどこでどのようにチケットやリクエストを送信すればいいのか。これを改善する際には、ビジネスオペレーションや内部顧客サービス、コミュニケーションについて考える必要がある。

3.全ての従業員は、情報の「話し方(伝え方)」やプラットフォームの使い方、ポリシーの適用、パートナーとのつながり方などをどこで学べるかを知っているかどうか

 従業員がプラットフォームを通じて他の従業員とつながり、最新のアップデートを知りたい場合、従業員はその情報を見つけて行動できる仕組みが整っているだろうか。ここでは学習管理やデータリテラシーのトレーニング、データコミュニケーションについて考える必要がある。

4.全ての従業員が、他人と接するときに心理的な安全性を感じているかどうか。上司や同僚の前では拒絶されることを恐れず、どんな質問でも堂々と尋ねられると感じているかどうか

 データサイエンティストがいる会議室で、平均的なカスタマーサービスの従業員は、他の人がくだらない質問だと思うようなことを聞いても安全だと感じたり、時間を使う価値があったりすると感じているだろうか。これを改善する際には、エンプロイーエクスペリエンスと多様性、公平性、包括性、帰属意識の取り組みについて考える必要がある。

5.全ての従業員はサイロ(部門)を越えて情報を共有する必要がある場合、安心できるかどうか

 従業員はデータの信頼性を確保しながら、共同作業や情報共有ができているだろうか。また、従業員は役割や職務に応じた情報へのアクセス制限を理解しているだろうか。ここでは、信頼やデータガバナンス、コネクテッドインテリジェンス、データ観測性、エンタープライズコラボレーションについて考えてみるといい。

 これらの5つの不快な質問にはなかなか答えられないものだ。しかし、テクノロジーエグゼクティブはこのプロセスを利用して、未来に適したデータカルチャーを発展させるためにどこを深く掘り下げるべきかを決めなければならない。

「好奇心の速度」が未来のデータカルチャーに影響する

 Forresterは「好奇心の速度」を、ユーザー(または従業員)が知識の探求から洞察の獲得、そして行動に移すまでの速度と定義している。5つの質問全てに共通するテーマは「時間」だ。

 従業員はそのような行動をとるための時間がなければ、適応力や創造力、レジリエンスを発揮できない。仕事量が膨大になり、時間も限られる中、スピードアップの障害となる可能性のあるものを排除することは極めて重要だ。

  • 既にある製品の再利用
  • オンラインドキュメントから即座に答えを得るのではなく、マネジャーからの答えを待つ
  • ユーザー権限という時代遅れの概念に基づき、知識を共有せずにため込んでしまう

 これらの例はリソースを浪費し、生産性を低下させ、イノベーションを阻害する。未来に適したデータカルチャーを創造するために、今すぐ好奇心の速度を向上させるための行動を起こしてほしい。

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