知らぬ間に課金「ダークパターン」業者に怒りの告発 米CFPBPayments Dive

消費者金融保護局は、Global Paymentsの傘下にあるActive Networkが「ダークパターン」を使って消費者から違法に3億ドルもの資産を持ちだしたとして、同社を提訴した。知らぬ間に不要なサービスに加入させる仕組みに公的機関が待ったをかけたかたちだ。

» 2022年11月04日 15時06分 公開
[Lynne MarekPayments Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

Payments Dive

消費者金融保護局(CFPB)は2022年10月19日(現地時間)、Global Paymentsの傘下であるActive Networkがテキサス州プラノ拠点において、虚偽のマーケティングで消費者をクラブ会員に登録させて登録者から3億ドルの手数料を引き出したにもかかわらず、840万ドル分の利益しか提供しなかったとし、テキサス州東部連邦地方裁判所で提訴した(注1)。

 CFPBのディレクター、ロヒート・チョプラ(Rohit Chopra)氏は「この訴訟は、違法な支払い方法、ジャンクフィー、欺瞞的な『ダークパターン』など、連邦機関が取り締まりを実施している行為について注意喚起するものだ」とブログに投稿した(注2)。

チョプラ氏の投稿(出典:CFPBのWebページ)

善良な市民の「資産を持ち逃げ」のような詐欺行為

 CFPBは公式なプレスリリースで、「Active Networkがダークパターンとオンラインシステム操作のトリックを使って、何億ドルもの入会金を違法に請求した」として同社を訴えている。このプレスリリースにおいてもチョプラ氏は「チャリティーレースに参加するために登録したと思っていた人たちは、同社がお金を持ち逃げしていることに気付くのが遅すぎた」とコメントを示している(注3)。

 CFPBの発表によると、Active Networkの決済サービスはさまざまなイベントへの参加登録に使われていた。CFPBは、Active Networkがこれらのイベントに登録する過程で、消費者を「ディスカウントクラブ」(=Active Advantageの会員)に誘導するために「詐欺行為と違法なマーケティングを行った」と述べている。このサービスはキャンプやがん研究、動物保護、特別なニーズを持つ子どもなどのための資金調達を目的とした5キロマラソンなどイベントで使われており、利用組織はYMCA(キリスト教青年会)などの団体も含まれる。

 アトランタに本拠を置くGlobal PaymentsはActive Networkにコメントを求めた。同社の広報担当者は、電子メールで次のようなコメントを寄せた。

 CFPBが1つの商品に関してActive Networkを訴えたのは、軽薄であり、メリットもない。Active Advantageは連邦取引委員会を含む複数の連邦・州規制当局の審査を受けており、消費者金融サービスの提供とは何の関係もなく、CFPBの行為は同局の権限の範囲外だ。

 『Wall Street Journal』によれば、そもそもGlobal Paymentsは2017年8月に、投資会社のVista Equity PartnersからActive Network部門を現金と株式併せて約12億ドルで買収することに合意していた(注4)。

 CFPBによれば、年会費89.95ドルのActive Networkの「自動トライアルメンバーシップ」は30日間の解約期間も設けていたことから、多くの人が入会した。ところが結局このメンバーシップはActive Networkが提案した価値を提供せず、同社は「消費者に通知することなく料金を値上げした」とCFPBは指摘している。

知らぬ間に家族からも徴収

 2011年7月以降、過去10年にわたって使われたこれらの手法は、Active Networkに3億ドルの利益をもたらしたが「消費者に提供された利益はそのほんの一部にすぎない」とCFPBは伝えている。

 同社は、「デジタルデュプリシティ(二重性)を利用して、自動的に、そして違法に会員の家族を同社のディスカウントクラブに登録した」とCFPBは発表している。

 「消費者の多くは、地域のレースやイベントに登録したつもりが、結局は高額な会員制クラブに登録させられてしまった」(CFPBのプレスリリース)

 このような行為は、「消費者の知識、同意、または重要な取引条件の完全な理解なしに」消費者を加入させ、メンバーシップの料金を請求するという、消費者金融保護法違反にあたる行為だとプレスリリースは述べている。

 同社は、「クレジットカードのチャージバック率が高いこと、顧客からの苦情が多いこと、また、Active Network自身のデータから、相当数の消費者が誤解してActive Advantageに加入していたことが明らかになったことから、違法行為を止める機会が複数あった」とCFPBは報じている。

 チョプラ氏はActive Networkに対するCFPBの措置について、今回の訴訟とその申し立てにより、CFPBが監視している3つの分野について「企業に注意を促す機会を得た」と、別のブログ記事で述べている。

 第一に、この訴訟は、企業が「隠れたトリックや仕掛け」を使って消費者を誘い、不用意にリンクをクリックさせたり、サービスに申し込ませたり、商品を買わせるという「ダークパターン」をCFPBが監視していることを認知させるものだ。第二に、この動きは、消費者が望んでいなかったり、価値を提供しない手数料を消費者に押し付けるジャンクフィーに対するCFPBのキャンペーンの継続につながる。

 さらに、CFPBは消費者に不当なデータ収集や手数料を課している決済システムにも目を光らせている。チョプラ氏は、「テクノロジーは、アメリカ人がシームレスに支払いを行い、誰にいくら送金しているかを把握するのに役立つはずだ」と投稿している。


© Industry Dive. All rights reserved.

注目のテーマ