日本の新薬開発は2016年を境に落ち込んでおり、理由の一つには臨床試験の工数が課題として挙げられる。これを解決しようとしているのが医療IT企業のサスメドだ。ブロックチェーンでどのように日本のヘルスケア業界の課題を解決するのか。
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アマゾン ウェブ サービス ジャパンは2022年11月8日に記者説明会を実施し、「ヘルスケア業界のクラウド活用最新事例」を紹介した。
同説明会では、Amazon Web Services(以下、AWS)がヘルスケア業界でどのような取り組みを進め、ブロックチェーンがなぜヘルスケア業界で注目を集めているのかを解説した。
「AWSはヘルスケア業界のデジタル化とクラウドの活用を加速し、より良い医療、ヘルスケア体験をあらゆるステークホルダーと共に実現する」――。そう話すのはアマゾン ウェブ サービス ジャパンの宇佐見 潮氏(執行役員 パブリックセクター 統括本部長)だ。同氏は「ヘルスケア業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を考えたときに、セキュリティが最優先課題だ」と続ける。
同氏によれば、医療機関やその他関連企業は信頼できるセキュリティやデータプライバシー、コンプライアンスを必要としており、この傾向は昨今、頻繁に起きているランサムウェア攻撃などでより強くなっている。
「しかしヘルスケア業界は専門性が高いことに加え、規制も強いため、イノベーションが進みにくい状況にある。AWSはヘルスケアに特化したソリューションを含む最先端のデジタルツールでイノベーションを加速させる」(宇佐見氏)
アマゾン ウェブ サービス ジャパンの遠山仁啓氏(パブリックセクター シニア事業開発マネジャー)は「AWSはヘルスケアに関わるユーザーが、コモディティに関連するITやインフラに気を使うことなく、患者や市民に集中してほしいと考えている」と話した。AWSはその実現のため、市民の存在を中心にステークホルダーやヘルスケアプロバイダー、規制を統括するガバメント、サービス提供するベンダーなどに支援を行っている。
同氏はヘルスケア産業におけるAWSの強みを「AWSは製薬バリューチェーンの各段階でクラウドによる支援を提供する」と話した。各段階と主なサポート内容は以下の図3だ。
また、遠山氏はAWSが解決するべきヘルスケア業界の課題として、「ヘルスケア企業のリアルな声」を4つ紹介した。1つ目が「貴重なエンジニアリソースは運用や保守ではなく、価値の高いサービス開発に集中させたい」というものだ。人材確保が難しいエンジニアを価値あるサービスに使うためにも、AWSの「コモディティに関連するITやインフラに気を使うことを無くす」というのが重要になる。
2点目が「素早くサービス実装を行って展開したい」というものだ。同氏によれば、このような要望は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行と共に増えたという。
「パンデミックなどでオンライン診療などの需要が増え、多くのユーザーが機能実装する必要があった。ユーザーはゼロから開発するのではなく、工数を軽減する仕組みを求めていた」(遠山氏)
3点目が「インフラ管理の負担から解放されたい」というものだ。オンプレミスからクラウドに移行することでハードウェアの保守などからは解放されるが、仮想マシンが残っているとその管理が必要となる。同氏は「仮想マシンの管理からも解放されたいという声は多い」と話す。
4点目が「運用コストを効率化したい」というものだ。特に、需要変動を予測しにくいPHR(Personal Health Record:個人健康記録)やオンライン診療、治療アプリなどでこの声が多いようだ。
これらの課題に応えるためにAWSが提供しているのがサーバレスアーキテクチャである「Amazon Managed Blockchain」だ。同サービスはオープンソースフレームワークである「Hyperledger Fabric」や「Ethereum」を使用して、スケーラブルなブロックチェーンネットワークを構築して管理できるフルマネージドサービスだ。
遠山氏は同サービスについて「多くのサービスがクラウド上にあることはもちろん、ユーザーは特定の機能をいつでも利用できる。これらの機能はサーバ上で動いているが、ユーザーからはサーバの存在が見えないようになっており、保守や管理はAWSが担う」と話した。
同サービスの1つ目の特徴は「サーバ管理が不要」な点だ。仮想マシンが残っているとサーバの保守やプロビジョニングといった作業が必要になるが、AWSがこれらを担う。
2つ目が「柔軟なスケーリング」だ。仮想マシンでは、利用頻度の高まりやCPUの使用率に基づいてユーザーがデザイン・設計をする必要があるが、Amazon Managed Blockchainは、これらの作業を「自動拡張・自動縮退」させることで、ユーザーの負担を軽減する。
3つ目が「十二分に考慮された高可用性」だ。仮想マシンでも、大災害などが発生し1つのデータセンターが機能停止になっても、地理的冗長化の設定を使って別のデータセンターを利用することが可能だ。ただしこの設定はユーザーが行わなければならない。Amazon Managed BlockchainではAWSが担うため、ユーザーへの負担が少ないと言える。
4つ目が「アイドル状態ではコストがかからない」点だ。仮想マシンではサーバが動いている時間に対して従量課金されるのが一般的だが、Amazon Managed Blockchainでは、処理リクエストが来た際の稼働時間や件数を基にコストが試算されるため、使用していないときはコストがかからない。
「ユーザーは自分たちにとって重要なことに時間やリソースを割ける。サーバの存在を意識しないサービスを提供する」(遠山氏)
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