ライバル企業から日本マイクロソフトへ 岡嵜氏が感じた"魅力と強み"岡嵜氏に単独インタビュー(前編)(1/2 ページ)

岡嵜 禎氏は2022年8月にアマゾン ウェブ サービス ジャパンから日本マイクロソフトへと移った。業界内では大きな話題となったが、何がその"理由"だったのか。日本マイクロソフトの魅力と強みを同氏が語った。

» 2022年12月21日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

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 「Microsoftは『ユーザーを次のステージに導ける企業』であり、『幅広いポートフォリオでユーザーの課題を解決できる企業』だ」――。こう話すのは日本マイクロソフトの岡嵜 禎氏(執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長)だ。同氏は2022年8月にライバル企業から転身し、業界内で大きな注目を集めた。2022年10月に日本マイクロソフトが開催した「Microsoft Ignite Spotlight on Japan」にて初となる講演を行った岡嵜氏。単独インタビューを受けるのは今回が初めてだ。

Microsoft Ignite Spotlight on Japanで講演する岡嵜氏(出典:「Microsoft Ignite Spotlight on Japan」配信映像)

 岡嵜氏が日本マイクロソフトに参画してから、同社を取り巻く環境は大きく変化している。

 デジタル庁は2022年10月3日に「Microsoft Azure」(以下、Azure)を含む4つのクラウドベンダーをガバメントクラウドとして採用した。その他にも、Microsoftは業種別特化組織による事業拡大をアピールしたり、新たな企業方針に「Do more with less」を発表したりしている。国内における「Microsoft Power Platform」の活用も急速に拡大している。

 本稿は、「日本マイクロソフトへの移籍にまつわる話」や「日本マイクロソフトのクラウド&ソリューション事業の取り組み」「日本マイクロソフトが日本へ提供する価値」について岡嵜氏に聞いた。日本マイクロソフトへの移籍以降、初めてとなる単独インタビューで同氏が語った内容とは。

ライバル企業から日本マイクロソフトへ 感じた"魅力"

岡嵜 禎氏

――アマゾン ウェブ サービス ジャパンで、執行役員 技術統括本部長を務めていた岡嵜氏の日本マイクロソフトへの移籍は業界内で大きな話題となりました。Microsoftにどのような魅力を感じたのですか。

岡嵜氏: さまざまな方から「なぜ」と聞かれました(笑)。ただ、両社の比較は必要ではありません。日本マイクロソフトは「ユーザーを次のステージに導ける企業」であり、「多くの選択肢」を提供できる魅力があります。実際に同社には多様な製品ポートフォリオがあり、それらをさまざまな形態で提供して課題に対応します。

 一口に「イノベーション」といってもユーザーごとに状況は異なり、働き方改革やゼロトラスト、クラウドマイグレーション、データ活用などさまざまなテーマがあります。ユーザーのニーズに対して、最適な答えを効率的に提案することでイノベーションの推進に貢献します。「共通的な業務のため」であれば、SaaS(Software as a Service)を組み合わせたり、「差別化のため」であればクラウドネイティブなアプリの開発なども支援したりできます。Microsoftのポートフォリオは、それぞれの分野で付加価値の高いソリューションを提供しています。

 特に、アプリケーション開発領域のポートフォリオが充実しているのは、私が感じるMicrosoftの魅力の中でも大きなウェイトを占めます。私自身がエンジニア出身なのでそう思うのかもしれませんが、「開発者たちが自由闊達(かったつ)に取り組みたい」ことをスピーディーに実現できる環境は大事です。Microsoftはエンジニアがワクワクして「これ、いいね」と思える環境を提供します。これらの環境は今後も充実していきます。

 充実の象徴に「GitHub」やAzureを通じて提供される各種サービス、Microsoft Power Platformによるローコード/ノーコード開発、Web用のソースコードエディタである「Visual Studio Code」などのイノベーションがあります。ユーザーからも「Microsoftのアプリケーション領域の技術は素晴らしい」という声を聞いています。

Microsoft Power Platformの概要(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 私もシステム開発プロジェクトを統括した経験がありますが、そのなかでインフラが占める割合は1〜2割程度で、アプリケーション開発が約8割を占めます。アプリケーション開発のスピードが向上しないとイノベーションのスピードは上がりません。Microsoftはこの部分に大きく貢献します。例えば最新技術である「GitHub Copilot」ですが、Pythonなどでは、AI(人工知能)が提案するコードの約40%受け入れられ、開発生産性は約50%も上昇します。

 日本のユーザーからは「やりたいことはあるがエンジニア不足で踏み出せない」という声をよく聞きます。このような課題にMicrosoftはローコード/ノーコード開発で貢献します。トヨタ自動車では、アクティブな市民開発者が約3000人まで増え、これは全従業員の3%を占めます。

 花王では中核的な生産拠点である和歌山県の工場で生産現場における業務のデジタル化を推進し、専門知識のない現場従業員が工事の進捗管理アプリや設備の稼働状況の見える化を可能にするアプリなどを開発しています。同社SCM部門全体では、Microsoft Power Platformを活用して260件以上のアプリが開発されています。このような事例が日本で生まれており、この勢いは本物です。私自身も「Power Apps」を使いましたが、人材不足に悩んでいる日本のユーザーには最適なツールです。

トヨタ自動車における市民開発の拡大(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 また、Microsoftのメタバースへの取り組みも大きな魅力です。

――そこは、ちょっと意外な感じがしますが(笑)

岡嵜氏: 私は「IT企業はワクワク感を提供することが大切」だと思います(笑)。また、「この技術は次に来るね!」と思われることは重要です。その一例に「MR」(Mixed Reality:複合現実)ヘッドセット「Microsoft HoloLens」(以下、HoloLens)があります。この技術には「ワクワク感」があり、この業界でMicrosoftはアドバンテージを持っています。日本では、川崎重工がインダストリーメタバースの先進的事例を発表しています。北海道電力も火力発電所の巡視点検業務にMRを活用しています。このようにMicrosoftは、メタバースにつながるテクノロジーをソリューションとして既に持っており、これは大きな魅力です。私自身もプレビュー版が提供されている「Mesh avatars for Teams」を社内で使っており、アバターを使った会議も実施しています。

川崎重工のHoloLens活用(出典:日本マイクロソフト提供資料)

――日本マイクロソフトの社風には慣れましたか?

岡嵜氏: 現在はオフィス利用が可能なので、従業員と対面で会えるように意識的に出社しています。米レドモンドの本社にもユーザーをお連れし、担当のバイスプレジデントなどと関係構築や情報交換なども行いました。本社では、HoloLensの最新技術によるユースケースの体験やスマートストアの見学、遠隔医療などの先進事例を体験する機会もありました。この約4カ月間でユーザーやパートナーと対話をし、戦闘能力はだいぶ高まってきました(笑)。

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