DX人材確保と育成の指針「デジタルスキル標準」を発表、IPA

DX関連のリテラシーとスキルを定義する指針ができた。リスキリングの指針やジョブディスクリプションにも利用できそうだ。

» 2022年12月23日 07時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

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 情報処理推進機構(IPA)は2022年12月21日、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向け、個人の学習や企業の人材確保と育成の指針となる「デジタルスキル標準(DSS)」を発表した。

 デジタルスキル標準は「DXリテラシー標準(DSS-L)」と「DX推進スキル標準(DSS-P)」の2つで構成される。前者は全てのビジネスパーソンが身に付けるべき能力やスキルの標準で、後者はDXを推進する人材の役割(ロール)や習得すべきスキルを標準化したものだ。個人の学習や企業の人材確保と育成の指針とするもので、IPAはDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する際の人材の重要性を踏まえたとしている。

(出典:IPA『デジタルスキル標準』「第1部 デジタルスキル標準の概要」)

「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の違いは

 DXリテラシー標準とDX推進スキル標準はそれぞれ目的が異なるが、いずれも企業が自社のビジネスパーソンをどう成長させ、スキルある人材をどう生かすかに対する指針となっている。

 DXリテラシー標準は、いまいる人材の成長を助けることを目的としている。世代や職種を問わず、全てのビジネスパーソンが自身の責任で学び続けることが重要であり、そのためのマインド、スタンスや得るべき知識スキルを示す「学びの指針」だ。IPAは、この標準の知識体系に沿って学ぶことで、DXや最新の技術へのアンテナを広げられ、日々生まれている新たな関連項目やキーワードにも興味を向けられるとしている。

(出典:IPA『デジタルスキル標準』「第2部 DXリテラシー標準」)
(出典:IPA『デジタルスキル標準』「第2部 DXリテラシー標準」)

 DX推進スキル標準は、データやデジタル技術を活用して競争力の向上を目指す企業や、これらを使った変革を推進する個人を対象とする。DXの推進に必要な主要人材を、「ビジネスアーキテクト」「デザイナー」「データサイエンティスト」「ソフトウェアエンジニア」「サイバーセキュリティ」の5つに分類し、それぞれに求められるスキルを定義している。

  DX推進におけるそれぞれの役割も明記していることから、ポジションごとのロールモデルとして生かせる。自社のDX推進体制と各ポジションを照らし合わせて不足する人材を推定したり、求める人材像を明確化するジョブディスクリプション定義をしたりといった用途にも応用できる。

(出典:IPA『デジタルスキル標準』「第3部 DX推進スキル標準」)

 例えばビジネスアーキテクトには、デジタルを活用したビジネスを設計し、一貫した取り組みの推進を通じて設計したビジネスの実現に責任を持つといった役割が期待される。

(出典:IPA『デジタルスキル標準』「第3部 DX推進スキル標準」)

 IPAでは、DXを推進する人材は、他の類型とのつながりを積極的に構築した上で、他類型の巻き込みや他類型への手助けが重要だとしている。

 発表に当たりIPAは「データ活用やデジタル技術の進化によって国内外でデータやデジタル技術を活用した産業構造の変化が起きつつあり、企業が競争上の優位性を確立するには常に変化する社会や顧客の課題を捉えてDXを実現することが重要だ」指摘した。日本企業がDXで後れを取っている原因の1つにDXの素養や専門性を持った人材の不足がある。デジタルスキル標準はこれを解消するきっかけになることが期待される。

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