Web3が持つ"未来を変える可能性" ITリーダーが知るべき3つのこと

Web3サービスが世界的に拡大している。未来を変えるかもしれない新たなサービスに対し、企業のITリーダーや担当者はどのように取り組んでいくべきなのか。

» 2022年12月28日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は2022年12月13〜14日の2日間にわたり、同社主催のイベント「ガートナーITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略カンファレンス」を開催した。同イベントには、ガートナーでバイスプレジデントを務める鈴木雅喜氏も登壇し、「Web3は未来を変えるのか:日本のITリーダーが知っておくべきこと」と題して講演を行った。

 Web3サービスが世界的に広がりを見せる中、ITリーダーは何を知っておくべきなのだろうか。

Web3が持つ未来を変える"可能性" ITリーダーが知るべき3つのこと

鈴木雅喜氏

 「Web3は未来を大きく変える可能性を持っている。ただ、その変化は一気に起こるのではなく、時間が経過した後に『気付いたら多くの人がブロックチェーンなどを生活の中で当たり前に利用している』というように変化するだろう。この変化に遅れないために重要となるキーワードが『非中央集権化』と『トークン』だ」――。鈴木氏はこのように語り、講演を始めた。

 同氏によれば、この2つのキーワードを理解する上で、「Web3とブロックチェーン」「Web3を正しく理解する」「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)にどのように向きあうか」の3つが重要なポイントだ。

図1 ブロックチェーンの基本特性(講演資料を筆者撮影)

 鈴木氏はそれぞれを以下のように解説した。

Web3とブロックチェーン

 同氏は「Web3とは何か」を解説する上で、「DAO(分散型自立組織)や暗号資産など、Web3といわれる概念の中には多くのサービスが誕生している。これらは決して異なった概念から生まれたのではなく、全て"ブロックチェーンの特性"を基に生まれたものだ」と述べた。

 ブロックチェーンとは、ネットワーク上にある端末(ノード)同士を直接接続して、暗号技術を用いて取引記録を分散的に処理、記録するデータベースのことだ。一般的な組織では、母体となる部署やグループが情報を中央集権的に管理しているが、ブロックチェーンではネットワークに参加しているノードがデータを分散的に管理しており、"非中央集権"であるとされる。

 「Web3はブロックチェーンを利用したインターネット規模の新たな概念であり、DAOはブロックチェーンを利用した組織規模の新たな概念だ。Web3が起こす社会の変化に遅れないためにも、基本を押さえることがITリーダーに求められている」(鈴木氏)

図2 日本企業のブロックチェーンへの取り組み状況(講演資料を筆者撮影)

Web3を正しく理解する

 鈴木氏はWeb3を「Web3とは、ブロックチェーンを用いた非中央集権的なサービスを実現するためのデジタル・スタックだ」と話す。

 「ブロックチェーンによって相互運用性が確立され、プライバシー保護や信頼が担保される。インターネット規模でブロックチェーンが広がる世界がWeb3だ。将来的には、Web3のサービスが私たちの生活や企業のビジネスモデルを大きく変化させる可能性がある。Web1.0と呼ばれるインターネット誕生初期の頃は、『情報の共有』が可能になった。インターネット利用が当たり前になったWeb2.0では『相互のやりとり』や『プラットフォーム化』が進んだ。Web3では『非中央集権のやりとり』が可能になる」(鈴木氏)

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)

 鈴木氏はNFTを解説するにあたって、「トークンとは何か」を次のように話した。「トークンとは単位があり、『価値を示す。価値を作る。価値を最大化する』ものだ。電子マネーや証券、ポイントなどはもちろん、インセンティブの付与や法定通貨などもトークンだ」と語った。

 ではNFTとはどのようなものなのか。

 鈴木氏はNFTの特徴に「特定の資産や権利と結び付けて、その所有権を示す」「特定の顧客に権限を与える」「資産の価値化や流動化、資産の真正性証明、顧客への柔軟な権限付与、履歴の活用」を挙げた。

 「NFTはいわゆる『デジタル権利書』だ。インターネット上で権利を証明することができ、ゲームやスポーツ、メタバースなど、今後もその利用範囲は拡大していくと予測される」(鈴木氏)

 一方でNFTにも課題はある。NFTを構成するブロックチェーンはセキュアでも、資産とのリンクが壊れてしまっては本物の資産かどうかを証明できなかったり、詐欺や不具合が発生したりするリスクなどもあり、法的な方法も含めて今後も検討を続ける必要がある。

 「NFTの活用は日本でも拡大を見せている。まだ新しい技術だからこそ、企業は失敗も想定した投資計画を立てることが重要だ。また、新興企業など自社と文化が異なる企業との提携を組むことも大切になる。小さく素早く動き、Web3に対応するための人材育成にも注力する必要があるだろう」(鈴木氏)

図3 ガートナーの提言(講演資料を筆者撮影)

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