クラウド移行、ミスしない自信がありますか? よくある間違いとその回避策を事前に知ろうはじめてのクラウド導入“これ“に注意(1/2 ページ)

はじめてのクラウド導入では多くの"あるあるミス"が起きている。連載第2回となる本稿では、「移行作業」フェーズでのミスと、その回避策を解説する。

» 2023年01月19日 08時00分 公開
[折笠丈侍ITmedia]

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 はじめてのクラウド導入でよく起きる”間違い”を紹介し、どのように回避すべきかを紹介する本連載。初回となる第1回は、「導入検討フェーズ」に焦点を当てて解説した。

 第2回となる本稿は、いよいよ「移行作業」に着手する。このフェーズで気を付けなければならないポイントにはどのようなものがあるのだろうか。

この連載について

 本連載は、「Amazon Web Services」のようなIaaS/PaaSベースのパブリッククラウドサービスを導入するにあたって、「ありがちな誤解」や「つまずきポイント」とその「解決策」を、計画フェーズと移行フェーズに分けて解説する。クラウド導入検討の参考になれば幸いだ。

筆者紹介:折笠丈侍(ソニービズネットワークス株式会社 開発本部)

98年より大手・新興キャリア数社でインターネットアクセスサービスや法人イントラネットソリューションのテクニカルセールスに従事。2007年よりソニーグループ傘下のソニービジネスソリューション株式会社に入社し、法人向けICTソリューション全般の法人営業とマーケティング支援を担当。2015年より同社AWSサービスのプリセールスエンジニアとして営業支援やマーケティング企画支援を担当。現在AWS認定12資格のうち11資格を保有。



移行の肝“移行シナリオ”をどう作る?

 クラウド移行の前提となる「移行シナリオ」を見ていこう。筆者の経験上、はじめてクラウドを利用する場合は、オンプレミスで稼働中の構成を変更せず、そのままクラウドへ移行するケースが多い。

 一方で、クラウドサービスでは最新バージョンのOSやミドルウェアを容易に入手できるため、移行と同時にバージョンアップやプラットフォーム・アーキテクチャの変更を同時に行うケースもある。これは、オンプレミス環境だと実現困難なアーキテクチャや機能が、クラウドではサービスとしてすぐに利用できるからだ。

 図1はAmazon Web Services(以下、AWS)が提唱する移行シナリオ「6つのR」(REHOST、REPLATFORM、REPURCHASE、REFACTOR、RETAIN、RETIRE)だ。

図1 6つのR(出典:AWSの資料「ベストプラクティスと戦略」

 図1の6つのRはそれぞれ次のシナリオを表している。

シナリオ 内容
REHOST(リホスト) 現在の環境をそのまま移行して徐々に最適化する(例:オンプレミスで利用中のOSやミドルウェアや設計・構成を変えずに移行)
REPLATFORM(リプラットフォーム) アプリケーションのコアの部分を変えずに部分的にクラウドに最適化されたサービスに変更して移行する(例:データベースをクラウドサービスが用意しているPaaSなどのマネージド型データベースサービスに切り替えてデータベースは同じままプラットフォームだけを変える)
REPURCHASE(リパーチェス、再購入) 現在のシステムやアプリケーションの使用を廃止して新しいシステムやアプリケーションに切り替える(例:永続ライセンスからサブスクリプション型ライセンスのサービスに切り替える)
REFACTOR(ing)(リファクタリング) 現在のシステムやアプリケーションを見直し再設計した上で移行する (例:仮想マシンベースの構成からコンテナベースやサーバレスベースに移行する)
RETAIN(リテイン) クラウドに移行せず現状維持
RETIRE(リタイア) 廃止

 多くの企業はまず、リホストで安全にクラウドへ移行してから徐々にリプラットフォームやリパーチェスを適用するなど、段階的なクラウド最適化のシナリオを選ぶ。リプラットフォームの分かりやすい例が図2だ。

図2 出典:(ソニービズネットワークス作成)

 図2の例は、「Oracle Database」などのIaaSのデータベースサービスをPaaSのサービスに切り替えることで、リソース確保が容易なためシステムを冗長化しやすく、バックアップやパッチ適用時にサービスを停止せずに運用できる。また、ライセンス管理などの運用負荷をユーザーからクラウドベンダー側にシフトすることも可能だ。

OS、ミドルウェアのソフトウェアライセンス、間違えるとコスト増も

 移行シナリオでは、「自社所有のOSやミドルウェアのライセンスをクラウドに持ち込む」(BYOL:Bring Your Own License)かどうかや、「クラウドベンダーが用意したライセンスをサブスクリプションで利用するかどうか」の選択も重要だ。

 筆者のおすすめは後者だ。

 クラウドベンダーが用意したライセンスをサブスクリプションで利用する場合は、基本的にサービス利用料にライセンス費用が含まれている。また、ベンダー側のサポートもあり導入が容易だ。加えて、クラウドの特徴である「迅速性」や「拡張性」のメリットも享受しやすい。

 BYOLの場合、ライセンスの持ち込みでクラウドサービス利用料を圧縮できるが、「ライセンスの維持管理」や「拡張時のライセンス設計」などがユーザー責任となる。また、アプリケーションベンダーが定めるクラウドサービス移行時のBYOLの基準条件をクリアするために余計にコストがかさむケースもあるので注意が必要だ。

 最近は少ないが、「クラウドでの利用が不可」や「サポートが対応しないか限定的」なアプリケーションもあるため、導入先のクラウド環境をよく確認することが重要だ。

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