ChatGPTでPlaybookを生成してみて分かったこと、足りないこと編集部コラム

「それらしい回答」をそれっぽく自信満々に回答するチャットAIと向き合う人類に必要なことは何でしょうか。

» 2023年01月31日 11時00分 公開
[荒 民雄ITmedia]

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 あくまでも筆者の観測範囲でのことですが、この1〜2週間はアバター生成AI(人工知能)で自分のアバターを作成してSNSに公開する人が大量に出現しました。既に写真から性別や年齢を変えるアプリは広く使われており、今回のアバター生成はその代表的なアプリ「snow」の新機能だったことから、さほど驚くことはなかったのですが、それでも新しい機能を世界中のユーザーが一斉に楽しむ様子はAIが生成する世界と私たちの関係を見る上で興味深いものでした。

 他にも、ごく気軽な感覚でダジャレのようなコマンドを画像生成AIに投げかけて出力を楽しむ使い方も当たり前になってきています(裏側のマシンリソースがどのくらい消費されているかは不明ですが利用者のコストはうんと下がっています)。

 AIは研究開発者や専門家だけではなく、すっかり私たちの日常に溶け込むようになりました。イラスト生成や自然な応答が可能なチャットAIは遊びの領域だけでなく、実務の在り方を本格的に変えるようになると目されています。いち早く実務の在り方を変えたのはサイバー犯罪者らしい、という笑えない話題が出てきたのも最近の状況を象徴する出来事と言えるでしょう。

※本稿は2023年1月30日配信のメールマガジンに掲載したコラムの転載です。購読はこちら


ChatGPTでAnsibleのPlaybookを生成してみて分かったこと、足りないもの

 MicrosoftやIBM傘下のRed Hatはシステム開発や運用をAIで支援する取り組みを進めています。現段階でどこまでをAIに任せられるようになっているのでしょうか。

 Microsoftは自社製品ポートフォリオに含まれる「Visual Studio Code」や「Github」においてOpenAIの成果を活用した生産性向上支援に取り組むと表明しています。

 Red HatはIBM Researchと共同で「Project Wisdom」というプロジェクトを立ち上げています。「Ansible」の設定をコマンドやYAMLファイル記述ではなく、自然な英文で指示できるようにしようという取り組みです。現在、Project Wisdomの成果はVisual Studio CodeのAnsible拡張機能として提供されているようです。将来的には、生成コードの意図についても分かりやすい自然言語で伝えるような機能も想定して開発が続けられています。

 そのRed Hatは、AnsibleのPlaybookを「ChatGPT」で自動生成した結果を検証するドキュメントをブログ「The Inside Playbook」で公開しています。それによると、細かなパラメータやモジュール名などは個別に設定が必要であり、100%完璧なPlaybookを自動生成することは難しいものの、ベースとなる記述を作るまでの時間を短縮できたということです。

 現段階のChatGPTの制約と使いどころをどう考えるかについては以下の記事が参考になるでしょう。

 同じ質問を繰り返したときに、返答が変わる場合があったことも指摘されています。また、「自信満々に間違った答えを出す」ということもリスクになるようです。標準化の視点から見ると、大規模なエンタープライズシステムを扱う環境で利用した場合、属人性リスクに近い問題が生じる可能性がありそうです。これについて、ブログは開発者に信頼される結果を生成するには、「それらしい情報を返答する」では不十分であり、信頼できるコードを生成するには開発者コミュニティの「感情」を学ぶ必要がある、としています。

 ChatGPTに関しては「大規模言語モデルによって生成されたテキストを検出する技術の研究も進んでいるようです。AIが生成したテキストかどうかを判定する「DetectGPT」というプロジェクトも立ち上がりました。

 プロジェクトのWebページによればスタンフォード大学の研究チームが立ち上げたもののようです。Webページは今のところプロジェクトのコンセプトのみが示されており、具体的なコードやデータは「近日公開予定」とされています。公開されればさまざまな研究者が検証を始めることでしょう。来年度の大学生の授業カリキュラムが決まる前にコードやデータが公開されると良いですね。

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