もう複雑な仕組みはいらない Microsoftのデータプラットフォームで何ができる

「Microsoft Intelligent DataPlatform」は何を実現するのか。課題を解決するというが果たして。

» 2023年02月03日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

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 日本マイクロソフトは2023年1月26〜1月27日でオンラインイベント「Microsoft Base Festa 2023」を開催した。同イベントのセッション「統合されたシームレスなデータシステム、Microsoft Intelligent Data Platformの実現するアジリティの価値とは」では、2022年5月に発表した「Microsoft Intelligent Data Platform」のコンセプトとともに「Microsoft Azure」における活用やデータドリブン型ビジネスの重要性などを解説した。

高まるデータの重要性に追い付かない企業のシステム環境

小田 健太郎氏

 日本マイクロソフトの小田 健太郎氏(Azureビジネス本部 GTMマネジャー)は講演の冒頭で「データは第4の経営資源とされ、現代の石油とも言われる。データとAI(人工知能)は2030年までに、世界のGDPを13兆ドル増加させるという予測もあり、データを活用できる企業はビジネスメリットをいち早く享受できる」とデータの重要性を強調した。

 一方、同氏は「データとAIは企業にとって最優先の投資先だが、80%のビジネスリーダーがデータ活用に苦労しており、55%がデータのサイロ化に悩まされている。また、過去のデータを分析することにフォーカスされがちだが、未来を予測することも重要だ。そのためには、それぞれ異なるデータプラットフォームが必要で、それらに精通した技術者も必要だ。さらに、組織内では異なるデータプラットフォームを管理、運用するためのツールが乱立し、ツールセットの分断につながっている。これからは少ない作業量で最大効果を得られる統合アーキテクチャが必要だ」とデータ活用の課題を指摘した。

図1 異なる2つのプラットフォームが重要に(出典:日本マイクロソフト提供資料)

Microsoft Intelligent Data Platformで何ができる

 Microsoft Intelligent Data Platformは、「データベース」「アナリティクス」「データガバナンス」を統合したデータプラットフォームで、データの有効活用を促進しデータを取り巻く課題の解決を目指す。

間瀬千里氏

 「データベース」について、日本マイクロソフトの間瀬千里氏(Azureビジネス本部 GTMマネジャー)は、「Microsoft Intelligent Data Platformで提供するデータベースはコストを削減してパフォーマンスを上げる。また、比類なきレベルのセキュリティやガバナンスを実現し、あらゆる場所で包括的に運用できる」と説明する。

 「Azureデータベースはアプリケーションを高速化するための組み込み型インテリジェンスを搭載し、パフォーマンスの向上とスケーリングを実現する。データベース監視やパッチ適用、バックアップなどにより、高可用性と回復力のあるシステムになっている。また、『Azure SQL Database』は『AWS RDS』に比べて、最大93%のコスト削減と最大5倍の高速化が可能だ。セキュリティ機能はあらかじめ組み込まれており、データ保護に関する追加コストは不要だ」(間瀬氏)

図2 Microsoft Intelligent Data Platformの概要(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 Azureデータベースでは、リレーショナルデータベースに「Azure SQL」「Azure Database for MySQL」「Azure Database for PostgreSQL」「Azure Database for MariaDB」、ディトリビューテッドデータベースに「Azure Cosmos DB」「Azure Managed Instance for Apache Cassandra」、インメモリデータベースに「Azure Cache for Redis」を用意している。

 Microsoftは2022年11月に「SQL Server 2022」をリリースしており、「Azure SQL Managed Instance」(MI)との連携でディザスタリカバリーの実現や「Azure Synapse Analytics」との連携でアナリティカルストアへのリンクなどを可能にしている。また、「Microsoft Purview」との連動でデータガバナンスも確保する。

図3 SQL Server 2022の概要(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 Azure Cosmos DBは高い応答性という特徴に加え、ピーク時の大きな変化にもリアルタイムで対応できる強みを持つ。増加するデータを保存する可用性も確保し、世界中どこからでも書き込みや読み込みが行える。

 「99.999の可用性を実現し、ビジネスの継続や回復力に貢献する」(間瀬氏)

 小田氏は「アナリティクス」について「データ統合では、オンプレミスやクラウドからあらゆるデータを集めて統合することで強固なデータ分析基盤を作成できる。それを実現するのがAzure Synapse AnalyticsとAzure Databricksだ」とする。

 Azure Synapse Analyticsは、エンドトゥエンドの分析のための統合クラウドネイティブプラットフォームで、さまざまなデータの収集や「Azure Synapse Studio」と呼ぶ専用UIを通じて分析もできる。さらに、Microsoftの各種サービスとシームレスに連携するため「データセットの分断」といった課題も解決できる。

 Azure Databricksはフルマネージドサービスとして、データエンジニアリングやデータサイエンス、ビジネスアナリティクスの領域をカバーする。Databricksは2013年にApache Sparkの開発者が中心となり設立した企業で、Azure Databricksはパブリッククラウドで唯一のファーストパーティサービスだ。Azure Synapse Analyticsと同様、Azureの各種サービスとシームレスに連携している点も強みだ。

 講演では、データベースやアプリケーション、インフラをAzureへの移行を支援するプログラム「Azure Migration & Modernization Program」(AMMP)についても触れた。

 AMMPでは、Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure(CAF)に蓄積されたベストプラクティスを基にアプローチを組んでおり、移行計画の実際の移行までをサポートする。

図4 Azure移行およびモダン化プログラム(出典:日本マイクロソフト提供資料)

 間瀬氏は「データベースと分析機能のサイロ化、断片化したデータ資産がビジネスのアジリティとスピードを阻害している。シームレスなクラウドデータプラットフォームであるMicrosoft Intelligent Data Platformがビジネスのアジリティを高め、データドリブン経営へのシフトを支援する」と述べた。

 データの重要性は多くの企業にとって共通だが、これを効果的に利用して成果を生むという道のりにはまだ課題が存在しているのも確かだ。果たしてMicrosoft Intelligent Data Platformはそれを打破する手段として定着するのだろうか。

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