コールセンターもカスタマータッチポイントを得られる重要な業務です。あらゆるチャネルからの問い合せにスピーディーに応え、顧客の問題を理解し特定の発生事象を解決するにはレコメンデーションツールが必要です。可能ならば、問い合せや対応を自動的に登録してほしいところです。
Microsoftのビジネスアプリケーション群には、カスタマーサービス領域のソリューションとして「Dynamics 365 Customer Service」があります。効率的にカスタマータッチポイントを得るには、「Facebook」「What’s up」「Twitter」「WeChat」「Line」などとの連携活用が効果的です。
当然、サポートの内容次第では上司やスーパーバイザー、エキスパートからのアドバイスや承認が必要です。このような場合は「コンサルティング」機能で必要なサポートをタイムリーに得られます。「スマートアシスト」機能を活用すれば、ナレッジ記事や解決済みの類似サポート案件が表示され、解決方法の参考にできます。
Dynamics 365 Customer Serviceであれば、AIからの提案を顧客への回答に参照できると同時に、AIの精度も高めます。サポートにおけるナレッジデータベースの構築やそれを育てる仕組みの実装は膨大な工数を要します。Dynamics 365 Customer Serviceには、エクスペリエンスやパーソナライズされたサービスを提供するための仕組みが事前に定義されています。
また、CSAT(顧客満足度)や解決に要した時間などを分析すれば、充実したエクスペリエンスを提供でき、長期的な関係を構築できる顧客の獲得につながります。一貫した顧客体験を通してユーザーにアプローチしたい企業はこの領域のブレークダウンに挑むと良いでしょう。
エンジニアのオンサイト修理対応やセンドバック修理対応といったフィールドサービスの業界には、「現地にいるエンジニアとオフサイトのスーパーバイザーのコラボレーション」「対応すべきサポート案件の優先順付け」「適切な対応リソースの割り当て」「対応履歴のデータ化の遅延」などの課題があります。また、現場ではAIを活用してリアクティブ(事後対応)ではなくプロアクティブ(事前対応)な対応が求められます。
Microsoftのビジネスアプリケーション群には、フィールドサービス領域のソリューションとして「Dynamics 365 Field Service」があります。
Dynamics 365 Field Serviceに、第一回に記載した「Remote Assist・Guides」機能を合わせると、いつでもどこでもどのデバイスからでも、オンサイト、オフサイトリソースの共同作業が可能になります。
対応する案件の優先順位付けやリソースの割り当てもAIが対応します。ガントチャートを活用して自分で割り当て処理することも可能です。
IoT(モノのインターネット)デバイスや「Microsoft Azure」のサービス群を活用して「Connected Field Service」を設計すれば、よりプロアクティブな機器のメンテナンス対応も実現できます。
以下の図19のように、Customer ServiceとField Serviceを合わせた活用も可能です。
先日、Open AIの「ChatGPT」がTeamsで利用できると話題になりましたが、今後、AIを利用できないアプリケーションからはユーザーが離れていくでしょう。
最後は、タッチポイントで顧客を知り尽くし、パーソナライズされた顧客エクスペリエンスを提供する「Dynamics 365 Customer Insight」を紹介します。
近年はさまざまな顧客タッチポイントが増えて顧客の期待に応えるニーズが高まると同時に、膨大なデータから“意味のある”顧客リレーションシップを構築することが重要になっています。
顧客の人物像や行動を知り、顧客体験に基づいたニーズを理解すれば、組織は顧客の360度ビューを獲得できますが、実際にこれに挑戦し結果を出している企業はごく一部です。
組織でサイロ化されている顧客のトランザクションや行動、人口統計に関する顧客データをリアルタイムで統合し、全方位からの顧客ビューを構築するには「Dynamics 365 Customer Insight」を活用したブレークダウンに挑戦するといいでしょう。つまり「Customer Data Platform」が、“攻めのDX”において大きな役割を果たすのです。
全てのデジタルチャネルで顧客の行動を測定し、Webサイトやモバイルアプリにいつログインしているのかや、コネクティッド製品をいつ誰が使っているかを把握すれば、マルチチャネル分析や顧客体験の最適化が可能になり、コンバージョンが増える機会を特定できます。
また、顧客データをアクション可能な分析情報に変えれば、マーケティングや営業、サービス部門などでリアルタイムの意思決定が可能となり、更に顧客満足度を高められます。「顧客を知りたい」「この領域のブレークダウンに挑戦したい」という方は、「Microsoft Learn」の「Customer Insight」のトレーニングも有効でしょう。
第2回では「最高の仕事ができる環境の構築」「社員が最高のパフォーマンスを出すための企業文化」が真の働き方改革には必要であり、そのためにファイナンスやオペレーション業務を担う基幹システム(ERP)のモダナイゼーションが不可欠だと説明しました。
マスター登録などは守りのDXです。しかし、マスタデータは攻めのDXで重要な役割を果たすことになります。CRMとERPで個別にマスター登録していると不整合が起き、名寄せシステムが必要になることもあります。また、CRMとERPの連携には個別のインタフェース開発も必要です。ここに時間を割きたくない企業はCRMとERPの標準連携機能を持つMicrosoftのビジネスアプリケーションが有効です。
本稿は、CRMの活用でカスタマータッチポイントを効率よく取得し、それらを活用して個人や組織が少ない工数で多くの事を実現するために何が必要なのかを解説しました。第1回から読んだ方はMicrosoftのビジネスアプリケーションのメリットが少しずつ理解できてきたと思います。
次回は、内製化が必要なローコード領域「Microsoft Power Platform」を解説します。
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