日本企業のIT投資はこれから二極化する可能性――ガートナー投資動向調査

日本企業のIT投資は引き続き積極的な傾向がみられる。だが一部でその取り組みに二極化が見られるという。

» 2023年02月28日 17時30分 公開
[ITmedia]

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 ガートナージャパンが2023年の日本におけるエンタープライズIT支出の成長率を発表した。それによると2023年の日本のエンタプライズIT総支出額が、2022年から4.7%増の28兆5344億円に達する見通しだ。

日本の産業別エンタープライズIT支出予想額(出典:ガートナージャパンのプレスリリース)

金融、小売業に続き、2023年にIT投資を本格化する産業

 産業別で見ると、2022年に7.9%と最も成長率が高かった銀行/投資サービスにおいて、2023年も6.8%と引き続き高い成長率が予想されている。

 銀行/投資サービス業は、2023年も引き続き店舗の統廃合とともにデジタルシフトが進み、同時に俊敏性強化を目的にシステムのモダナイゼーションが本格化する見通しだ。それに続く小売は6.0%、政府官公庁/地方自治体は5.3%の成長が見込まれている。

 小売は物価上昇が予想されるものの、人件費高騰に伴う店内オペレーション強化とデジタルチャネルにおける顧客体験強化が優先課題となっていることに加え、経済活動再開に伴う反動増で大きく伸びる見通しだ。

 2023年にIT投資が本格化すると目されているのが「2024年問題」を目前に控える運輸業界だ。旅客業での投資再開もあるが、2024年4月から適用される時間外労働の上限規制に伴う輸送ドライバーらの働き方改革を進めるため、生産性向上に向けた投資を急ぐ企業が増えているからだ。

DX推進で積極投資か、景気リスクで目先の成果を狙うか

 プリンシパル リサーチャーの成澤理香氏は、売上額ベースで評価する場合は各製品やサービスの価格が影響する側面はあるとしたものの、インフレや金利の変動、サプライチェーンの制約、国際紛争、COVID-19の長期化など、経済的混乱が続くことが予想されており、「デジタル化やクラウドファーストへの取り組み、リモートワークを含む業務変革への意欲、経済安全保障に対する中長期的な強化といったトレンドが引き続きIT投資を促進する見通し」とコメントしている。

 日本のエンタープライズIT支出は2022年から2026年まで年平均成長率4.6%で成長し、2025年には30兆円超になるとガートナーは予測している。だがその内訳は二極化する傾向がある。

 原材料や人件費のコスト増などの要因により、先行きが不透明になりつつあることから成澤氏は「一部の企業では、長期的な視点での戦略投資より短期的に効果の出やすいコスト削減などの投資に目が向いている」一方で「デジタルトランスフォーメーションを競争優位の源泉と捉え、投資を継続する企業も存在」すると指摘。中長期的に後れを取らないため、先送りできる課題と持続的に対応すべき課題を見極めるべきだとした上で「デジタル人材育成やアジリティを高めるIT基盤構築などは先送りせず持続的に対応すべきであり、特に一朝一夕では追い付けないデジタル人材の育成については『優先的に検討すべき』」とした。

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