「オンプレもアリ」なトレンドの中、日本のCIO「クラウドに移行しなきゃ」――CIO調査

レノボが「CIO テクノロジープレイブック 2023」を発表。日本はオンプレミスの使い方で他国と温度差が見られる結果となった。

» 2023年03月10日 11時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

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「as a Service」型消費モデルのITインフラに対するマインドシェアの比較(出典:レノボのプレスリリース)

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(レノボ)は2023年2月27日、AMDと合同で白書「CIO テクノロジープレイブック 2023」を発表した。同白書は、アジア太平洋地区(AP)の900人を超えるCIO(最高情報責任者)とIT分野の意思決定者を対象に実施した調査結果をまとめたものだ。特に最近の「データ主導型経済」においてCIOが適切にIT投資を判断するために考慮すべき機会や課題、検討事項に焦点を当てている。

 同白書はアジア太平洋地区(APAC)においては急速にDXが進んでいることから、これらの地域の企業は2027年までに全収益の最大43%を「デジタル接続される商品、サービス、顧客体験」から稼ぎ出すと予測している。

APAC「一周まわってオンプレもアリ」、日本「パブリッククラウドに移行しなきゃ」

 CIOテクノロジープレイブックによると、企業のCIOは2023〜2024年上旬にかけて、マクロ経済の要因がビジネスの成長に影響を及ぼすことを懸念しているという。日本のCIOが2023年の最大の懸念事項として挙げたのは「人手不足」(57%)が最多だった。次いで「原材料価格の高騰」(49%)「高いエネルギー価格」(44%)が挙がった。

 レノボ社長のジョン・ロボトム氏はこの結果を受け、「これまで日本企業は自社のIT部門の見直しや改革実行に関して比較的保守的だった。今後日本のCIOは企業のニーズや方向性について次第にその影響力を高めていき、今日のようなDX時代では、現在から将来のビジネスニーズに対するソリューションの主導を求められるようになるだろう。彼らの広範囲におよぶリーダーとしての役割の中で重要な要素は、急速に進化をとげるビジネス環境の中で、移り変わる目標に自社の企業構造を適応させていくことだ。それは企業競争の新たな環境に対応できる適応力のある文化を作り出していくことで彼らの実力を試す。最新技術を最大限に利用することで、競争力を高められる」と述べている。

 また、日本のCIOのうち、ビジネス上の最優先事項として「収益と利益の増大」を挙げた割合は49%、「コストの最適化と削減」は36%、「従業員の生産性向上」は31%だったことから、IT施策の意思決定者がテクノロジーを生かしてサプライチェーンを最適化したり、自社IT資産の俊敏性、回復力を向上させたりすることで変化するビジネスニーズに迅速に対応することに積極的であることも分かった。

 日本のCIOの79%は「デジタルインフラストラクチャーが事業目標の達成に不可欠だ」としており、IT運用の複雑化や変化するビジネス要件に対して、今まで以上に迅速な対応を迫られることを強く懸念しており、2023年の最優先投資項目として「デジタルインフラストラクチャーの管理とセキュリティの自動化改善」(44%)や「ランサムウエアやマルウェアの攻撃に対処するためのサイバー回復力の向上」(42%)を挙げた。

 今回の調査では、ハイブリッド/マルチクラウドに引き続き注目が集まっていることも明らかになった。レノボは、これまでの経験から「企業はアプリケーションの使い勝手や処理性能、増大し続けるクラウドワークロードのコスト負担の軽減が、必ずしもパブリッククラウドによって達成できるわけではない」と指摘する。ところがパブリッククラウドのワークロードをプライベートクラウドに戻した企業の割合は、日本では40%にすぎなかった。

 2023年に「パブリッククラウドで運用されるミッションクリティカルなアプリケーション」については、日本においては19%と、1%未満の伸びが予測された一方、日本以外のAPAC地域は2%減少する見込みだ。

 「as a Service」型消費モデルのITインフラに対するマインドシェアはAPACで大幅に増加した。最も高かったのがインド(91%)で、韓国(75%)、日本(65%)は認知度が比較的低くなった。日本はas a Service型のインフラの主な推進要因に「IT運用コストの削減」を挙げており、今後12カ月以内に何らかのas a Service型のインフラを使用または検討すると回答した企業の割合は63%だった。

 レノボでは、単一の統合データ管理プラットフォームによって、複数のクラウド間を滞りなくデータが行き来し、コンテナ間とエッジでデータを統合することが可能になるとしている。ところが今回の調査では、単一のデータ管理プラットフォームを使用している企業の割合はAPでは8%にすぎない。複数のデータ管理プラットフォームを使用している企業の割合は、日本では65%に上った。

 AIを応用して顧客体験を高めることが日本のCIOの間で注目を集めていることも明らかになった。AIアプリケーションを使用あるいは検討すると答えた企業の割合は、日本では74%。ただしこれは、AP全体の88%よりも低かった。

 今後12カ月の間に事業運営のためにエッジを採用/検討するとした企業の割合も、日本(67%)ではAP(88%)に比べて低かった。現在エッジ採用率トップのインドでは、今後12カ月の間に事業運営のためにエッジを採用/検討するとした企業の割合は97%。レノボでは、エッジを通して企業は資産の最適な活用に向けて改善を行うことで、顧客体験や安定性を向上できるとしている。

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