eBayが「500人の解雇」と引き換えにしても手に入れたかった技術とは?Retail Dive

積極的な買収を続けているeBay。同社は2023年2月に500人の解雇を発表した直後、ある企業を買収した。「500人の従業員と引き換えにした」とも見える、その企業が持つ技術とは。

» 2023年03月31日 10時30分 公開
[Tatiana Walk-MorrisRetail Dive]

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Retail Dive

 急激なインフレに見舞われ、景気の先行きが不透明な中、米国ではレイオフ(一時解雇)が続いている。インターネットオークションサイト大手eBayも最近、500人規模のレイオフを予定していることが明らかになった。

 ただし、このニュースの発覚後、同社はある企業の買収を発表した。eBayはレイオフの理由の一つとして「新技術への投資」を挙げている。見方によっては「500人の従業員と引き換えにしても手に入れたかった」ともみえる、その企業が持つ技術とは。

「500人解雇」なのに、止まらない買収攻勢

 Webサイトでの買い物は便利な半面、「ニセモノをつかまされるのでは」という心配が常につきまとっている。各EC(電子商取引)サイトやインターネットオークションサイトは、こうした消費者の懸念を払拭(ふっしょく)すべく、さまざまな手を打ってきた。

 eBayは近年、立て続けに企業を買収している。同社が2023年2月13日、非公開の金額で買収したとプレスリリースで発表したのが、マーケットプレースにおけるAI(人工知能)を用いたコンプライアンスソリューションを提供する3PM Shieldだ。同年2月16日、両社は取り引きを完了させた(注1)。

 この買収によって、eBayは自社の怪しい出品者や悪影響を及ぼす出品者、さらには詐欺や違法、その他「安全でない商品」をより的確に発見できるようになるとしている。eBayは、3PM Shieldの技術を利用することで、加盟店や顧客の信頼を維持できると期待している。

 eBayは2023年2月初旬に従業員をレイオフする一方で、買収に資金を注ぎ込み続けている。同社は、2022年6月にNFT(非代替性トークン)マーケットプレースを運営する「KnownOrigin」を非公開額で買収した(注2)。さらにその2カ月後には、コレクターズアイテムのマーケットプレースを運営するTCGplayerを約2億9500万ドルで買収する計画を発表した(注3)。

 eBayは2023年2月第2週、SEC(米国証券取引委員会)に提出した文書の中で、企業構造の改善と新技術への投資のために500人の従業員を解雇する予定があることを明らかにした。3PM Shield買収のニュースは、これに続くものだ(注4)。

AIでニセモノを駆逐できるか?

 他のマーケットプレースと同様、eBayも長年にわたってオンライン上で販売される偽造品と闘ってきた。近年では時計(注5)や靴(注6)、スポーツ記念品(注7)などの出品物に対して真贋(しんがん)判定を実施する取り組みを導入した。3PM Shieldとの契約によって、eBayはより多くの詐欺撲滅ツールを社内に導入できるようになる。

 eBayのチ・シュウ氏(最高リスク責任者)は声明の中で、「eBayが世界中の売り手と買い手のコミュニティーにとって、安全で信頼できる環境であり続けることは、特に偽造品や危険な製品、違法な製品の売買を防ぐための最優先事項である」と述べた。

 「3PM Shieldは、eBayがこれらの課題に取り組む上で、貴重かつ効果的な外部パートナーだ。同社の技術を社内に導入することで、さらなる能力を発揮できることを期待している」(シュウ氏)

 eBayやその他のeコマースプラットフォームで販売される不正品は、企業の収益と評判を損なう可能性がある。模造品対策に取り組むRed Pointsの2020年の調査によると、調査回答者の半数以上が、偽物を購入した場合は返金を要求し、半数近くが、不正商品を販売した出品者について警告レビューを書くとも答えている(注8)。

 連邦議員も、偽造品販売を取り締まるための対策を検討している。上院議員は、オンラインマーケットプレースに対して、規模の大きい第三者販売業者(サードパーティーセラー)に関する情報の入手・確認・共有を義務付ける「INFORM消費者法」の制定を検討している(注9)。この法案は全米小売業協会やその他の業界団体からの支持を得ている。ただし、Amazonは当初、「ECマーケットプレースに焦点を当てている」という理由で反対を表明していた。

 マーケットプレース各社は、独自の模倣品対策も試みている。Amazonは2020年、元連邦検察官や捜査官、データアナリストから構成される偽造犯罪部門を立ち上げ、プラットフォーム上での不正な商品販売を取り締まっている(注10)。しかし、Amazonに出品するブランドは依然としてこのプラットフォームに関する課題を指摘している。D2C(注11)アンダーウェアブランドの「Adore Me」は、「マーケットプレースにおける自社製品の偽造を解決する上で、Amazonの取り組みは不十分だ」と述べた(注12)。

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