経営危機の百貨店が「フッ軽」化で急回復 CEOの狙いはSupply Chain Dive

売上、利益率が悪化した百貨店が在庫管理の方法を改革して業績を回復させている。在庫管理の方法見直しが奏功したというが、その方法は。

» 2023年04月11日 08時00分 公開
[Ben UnglesbeeSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 大手百貨店チェーンのKohl'sは、2022年度に売上高が7%以上減少し、利益率が5ポイント近く縮小したことを受け、在庫管理の方法を刷新する(注1)。

 2022年12月からKohl’sのCEO(最高経営責任者)に就任したトム・キングスベリー氏は「2022年に仕入れ管理が機能しなくなり、在庫計画を一桁台半ばの割合で縮小することになる」とアナリストに語った(注2)。

 この在庫削減により、Kohl'sは「注文を追いかける余裕があるように運営する」つまり、顧客の需要に応えるために必要な数の在庫追加を行うことにするとキングスベリー氏は付け加えた。

「注文を追いかける在庫追加」はどう運用されるのか

 Kohl'sの財務状況は、同社がビジネスにおいて流通に変更を加える理由を物語っている。売上高は第4四半期、通期ともに7%以上減少し、2022年の営業利益は前年比で85%以上減少している。この状況を変える方策が「新規の注文」への着目だ。

「この3カ月間、私はより強力な在庫管理プロセスの確立を含むマーチャンダイジングに焦点を当て、多くの時間を投資してきた。私たちは新規の注文にスポットを当て、回転率を上げることに注力している」とキングスベリー氏は話す。

 キングスベリー氏は、在庫数を削減する計画を立てると同時に、「商品をマークする方法を調整し、余分な在庫や売れ行きの悪い商品の処分をシーズンの終わりまで待つのではなく、年間を通してより均一な流れで処分する」と述べた。

 Kohl'sのシニアバイスプレジデントでエンタープライズデジタルおよびeコマース担当のダン・プラス氏は、同社の受注管理に対する新しいアプローチについて、「消費者がどこにいるかを感知して反応し、読み取り、迅速に仕入先と提携することで商品需要を満たせる」と説明している。

 2023年3月第1週にワシントンD.C.で開催されたアメリカンアパレル&フットウェア協会のサミットのパネルで講演したプラス氏は、「2022年、私たちは在庫を抱えて動けなくなった。今後はサプライヤーとの連携を含め、在庫管理についてより厳格かつ規律的でありたいと考えている」と述べた。

 「とはいえ、消費者に対応しないということではない」とプラス氏は付け加え、「私たちはセンス・アンド・レスポンスの考え方の下、これまで以上にフットワーク軽く顧客の声に応えていくつもりだ。優れたパートナーに対してもリードタイムを短縮し、対応可能な製品を用意することを求めている」とも話した。

 Kohl'sはすでにより積極的な在庫一掃に動いている。同社は第4四半期のクリアランスセールの結果、粗利益率は750ベーシスポイントに相当する打撃を受けた。

 その苦しみを経た結果、第4四半期末の在庫は前年同期比で4%増加したものの2019年比では10%減少している。CFO(最高財務責任者)のジル・ティム氏はこの結果を「その期間の売上減少に沿ったものだ」と述べた。

 金融コンサルタントのTelsey Advisory Groupのアナリストは、第4四半期末のKohl’sの在庫水準の低下は、最近の四半期において30〜40%以上改善していると指摘した。同アナリストは、新経営陣が積極的に在庫を整理しており、「バランスの適正化に近付いている」と評価する。

 金融サービス企業のJefferiesのアナリストは、2022年末のKohl’sの在庫状況は大幅に改善されたとし「現在、より厳格な管理体制によって段階的な値下げを回避し、利益の増加につなげている」と述べている。

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