ZoomがAIを活用した機能拡張を発表した。コロナ禍でユーザー数を一気に増やしたZoomが打ち出す、ポストコロナ時代の戦略を引っ張る機能とは。
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「ChatGPT」や「Bard」など、AI(人工知能)チャットbotに注目が集まる中、Web会議サービスを提供するZoomがAIチャットbotを含め、AIを活用した機能を拡張することを発表した。
Web会議サービスを提供するZoomは2023年2月27日に開催した決算説明会で、「10万ドル以上を出資する顧客の数が直近12カ月で27%増加している」と述べた(注1)。
Zoomは2023年、AIを戦略的重点項目とし、プラットフォームでAIを活用した機能を拡張する計画だ。
創業者兼CEO(最高経営責任者)のエリック・ユアン氏は、拡張の対象となる機能には営業職向けの「Zoom IQ」や対話型AIチャットbot「Zoom Virtual Agent」の他、翻訳、字幕、会議要約ツールなどが含まれると決算説明会で説明した。
コロナ禍が「過去のもの」になりつつある中、Zoomは加入者維持に苦戦しているものの(注2)、2022年度第4四半期(同年1月31日締め)の売上高は11億ドルで、前年同期比4%増となった(注3)。
Zoomは「サービス事業者が新たなAI機能を前面に打ち出す」という、テック業界で繰り広げられている広範なトレンドに加わった。MicrosoftとGoogleは、ここ数カ月で世間の注目を集めた対話型AIツールを発表している。
ユアン氏は「われわれは、顧客が当社のプラットフォームでROI(投資利益率)を最大化して、コンピューティングの新時代における成功を支援するために、より多くのAI技術を投入していく」と語った。
厳しい経済状況でテクノロジーへの支出に対する監視が強化される中、Zoomは、他の大規模なテクノロジー組織と同様に、2023年2月初旬に従業員の15%に当たる約1300人を削減すると発表した。「これは、経済環境を考慮して会社の戦略をリセットするための厳しくも重要な内向きの検討だ」とユアン氏は述べた(注4)。
戦略のリセットは、ニーズに合わせて機能を拡張する「Zoom One」などのソリューションで大企業の顧客の関心を引き続けることを意味する。Gartnerのマイク・ファシャーニ氏(シニアリサーチディレクター)によると、もう一つの大きな取り組みは、「対話型AIをより重視した、電話およびコンタクトセンターソリューションの成長だ」という(注5)。同社は2023年1月、Zoom Virtual Agentを発表した。ユアン氏は「Zoom Virtual Agentは企業が顧客や従業員を支援する方法を変革する」と述べた(注6)。
しかし、ファシャーニ氏によれば、対話型AIに課題がないわけではない。AIは顧客の気分や口調、方言、俗語、予期せぬ反応や質の悪い音声に対応できなければならない。
「Zoomは全ての対話型AIプラットフォームが直面するこれらの課題を乗り越え、コンタクトセンターのユースケースの基本要件にキャッチアップしている。ここ数年、対話型AIは電話やコンタクトセンターで大きな進歩を遂げたが、大企業や公共機関に受け入れられるためには要件のギャップを埋める必要がある」と同氏は指摘する。
(注1)Zoom Video Communications (ZM) Q4 2023 Earnings Call Transcript(The Motley Fool)
(注2)Zoom leans on existing customer base to stay competitive(CIO Dive)
(注3)Zoom Video Communications Reports Fourth Quarter and Fiscal Year 2023 Financial Results(Zoom)
(注4)Zoom cuts 15% of its workforce as customers tighten spend(CIO Dive)
(注5)Zoom launches email, calendar service to kill the ‘toggling tax’(CIO Dive)
(注6)Meet Zoom Virtual Agent(Zoom)
(初出)Zoom plans more AI as large enterprise customer base grows
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