「ChatGPT」などの登場によって注目を集めるAIは、新たな産業革命をもたらすとの見方もある。企業はこの技術をどう活用すべきか。ガートナーの亦賀忠明氏の話から考察した。
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「AI(人工知能)のインパクトは産業革命に匹敵する。産業革命だから、やるかやらないか、もうかるのかといった話ではなく、対応できない企業は生き残れないことを肝に銘じて臨むべきだ」
こう語るのは、ガートナージャパン(以下、ガートナー)ディスティングイッシュトバイスプレジデントでアナリストの亦賀(またが)忠明氏だ。
ガートナーが2023年4月4〜6日に都内ホテルで開催した「ガートナー データ&アナリティクス サミット」における亦賀氏の講演「AI推進で成功したい企業や組織が獲得すべきマインドセット」での発言だ。
講演内容は「企業が“新たな産業革命”を生き抜くための要件」ともいえる。本稿ではそのエッセンスを紹介し、企業がAIをどう活用していけばよいかを考察したい。
亦賀氏はその要件(マインドセット)として、次の10項目を挙げた。
上記の中から5つの項目を取り上げ、以下に説明していこう。
まず、1番目の「AIによる『成功』を再定義する」は、その後の要件の前提となる話だ。亦賀氏は図1を示しながら、次のように説明した。
「企業におけるこれまでのAI活用は、業務改善によって損益計算書(P/L)に貢献することを目的としてきた。しかし、これからは『企業価値の向上』を図って変化に対応し、新たな産業革命を勝ち抜かなければならない。そうした動きに向けて最も重要なのは、AIを活用できる『人材づくり』だ」
「業務改善」から「企業価値の向上」を図るに当たって、それを支える「人材づくり」が最重要となるというのが、同氏の言う「再定義」のポイントだ。
2番目の「『妄想』から『リアリティー』へ」は、これからのAIへの対応を表現したものだ。亦賀氏は「今話題の生成AIの能力に驚きが広がっているが、それを使いこなせる人材や安心して使える環境なども合わせて、これからはAI活用に向けたリアリティーを見据えて対処していくことが重要だ」と指摘した。
その上で、AIの能力アップについては図2を示しながら、「AIはこれまで『2030年代に人間に近づき、2045年には人間を超える』といわれてきたが、このところの生成AIなどの動きを見ていると、その時間軸が10年前倒しになる可能性もあるのではないか。それぐらいのスピードで産業革命が進んでいくことを、私たちは頭に入れておく必要があるだろう」との見方を示した。
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