会社に残る方も「ツラい」? “レイオフの嵐”を生き残ったエンジニアを待ち受ける現実CIO Dive

レイオフが吹き荒れる米国。生き残ったエンジニアが直面する事態が調査で明らかになった。エンジニアの人材市場の逼迫(ひっぱく)が続き、“売り手市場”とも言える現在、より「ツラい」のはレイオフされる者か、それとも会社に残る者か。

» 2023年04月17日 09時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 収束の見えないインフレやシリコンバレー銀行(SVB)をはじめとする銀行の経営破綻、景気後退への懸念など、米国経済の雲行きが怪しい。レイオフ(一時解雇)に踏み切る企業が増える中で、「会社に残された」エンジニアが直面する事態とは。

“生き残った”エンジニアが直面する「ツラい」事態

 エンジニアに向けてトレーニングを提供する「Pluralsight」は2023年3月20日、1216人のITエグゼクティブとエンジニアを対象とした調査レポートを発行した(注1)。

 同レポートによると、雇用が“凍結”されたことで、エンジニアの半数近くが自身の職務外のタスクを負わされていることが判明した。ソフトウェアやIT、データの分野で技術系管理職の3分の2が解雇されたことで、チームは新たな責任を負わされ、本来トレーニングに割かれるはずの時間が削られてしまった。

 ただし、予算が限られているにもかかわらず、企業はエンジニアトレーニングへの投資を減らしてはいない。技術系リーダーの3分の2近くがコスト削減を求められている一方で、2023年には4分の3近くが技術系スキル開発への支出を増やす予定だ。

新しい人材を採用するよりも、トレーニングの方が費用対効果は高い

 同レポートの調査は、苦境に立たされている技術部門を含むさまざまな業界の従業員を対象に実施された(注2)。レポートによると、スキルのギャップを埋めるためのトレーニングは、新しい人材を採用するよりも費用対効果が高い。

 テック人材市場における逼迫はいまだに続いている。エンジニアの失業率は全国平均を下回っており(注3)、エンジニアの給与が上昇している(注4)。

 こうした状況を受けて、企業は人材確保の危機を回避するため、トレーニングに注目している。AI(人工知能)やクラウド、サイバーセキュリティ、データサイエンス、その他の主要スキルのトレーニングは、唯一の現実的な解決策かもしれない。

 リーダーたちは人材育成の重要性を認識しながらも、その実施に苦慮している。予算の制約があるにもかかわらず、技術管理者の5人に4人がチームのトレーニングを優先していることが同レポートで明らかになった。ほとんどの技術者が「職場で何らかのトレーニングを受けている」と回答したが、5人に2人は「忙し過ぎて必要なスキルを身に付けることができない」と答えた。

エンジニアの47%が「月に一度は離職を検討」

 Gartnerのリリー・モク氏(アナリスト)は、「CIO Dive」に対して「テック業界において、企業の需要に見合った人材の比率は、他の業界と比較して非常に低い」と述べた。

 サイバーセキュリティやデータサイエンス、その他ニーズの高いエンジニアリングスキルについては、「求職者1人に対して約2人の求人がある」と、モク氏はGartnerの調査を引用して述べた。たとえこの比率が1対1だとしても、人材を渇望している企業にとっては不利となる。

 Pluralsightの調査に参加したエンジニアのうち48%は「少なくとも月に一度は離職を検討する」と答えた。2022年の調査と変わらない割合だ。

 転職先を探す理由のトップは「スキルアップや責任が重くなること」で、回答者の47%を占めた。2022年に同じ回答を不満として挙げる回答者の割合は約3分の1だったことから、大幅に増加しているといえる。「今後1年以内に現在の会社を退職する予定」と答えた回答者は4分の3近くに上った。

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