ジェネレーティブAIの覇権争いにAWSが加わった。複数のAIモデルを利用できる点が強みだ。MicrosoftやGoogleも続々と新サービスを発表しているが、これらの技術は未だ発展途上にあり、これから新たなイノベーションを起こす可能性がある。アナリストはこの状況をどう読んでいるのだろうか。
Amazon Web Services(AWS)は2023年4月13日、ジェネレーティブAI(人工知能)をベースにしたアプリケーションをユーザー自身で構築・拡張できる新サービス「Bedrock」を立ち上げ、ジェネレーティブAIの覇権を巡るベンダー争いに加わった(注1)。
Bedrockでは、AI21 LabsやAnthropic、Stability AI、Amazonの基礎となるトレーニングモデルに、API経由でアクセスできるようになる。同社はまた、「Amazon Titan」として知られる独自の基礎モデルの組み合わせも発表した(注2)。
「われわれはしばらくの間、独自の大規模言語モデルであるLLMに取り組んでおり、それが事実上全ての顧客体験を変革・改善すると信じている。消費者や販売者、ブランド、クリエイターの全ての体験に関して、このモデルに対し多大な投資を続けていく」と、Amazon CEO(最高経営責任者)のアンディ・ジャシー氏は同日に公開した株主への通達の中で述べている(注3)。
ジェネレーティブAIの企業導入はまだ初期段階だが、カスタムメイドのツールへのアクセスや、特定のユースケースに合わせてAI出力を調整する能力は、将来性を秘めた起爆剤の1つだ。
OpenAIの「ChatGPT」で早くから注目と関心を集めたMicrosoftも、1月に「Azure OpenAI」の一般提供を発表し(注4)、同様の機能を開始した。Googleも2023年3月、「Google Cloud」の中でエンタープライズグレードのジェネレーティブAIツールを発表した(注5)。
Gartnerの著名なVPアナリストであるラジェシュ・カンダスワミ氏によれば、ハイパースケールのクラウドプロバイダーのソリューションはさまざまで、時間と共に進化していくと推測される。現在、MicrosoftはOpenAIモデルに依存し、Googleは「BARD」などのモデルを使用している。一方、AmazonのBedrockは、独自のモデルだけでなく、さまざまな企業のAIモデルを使用する予定だ。
テクノロジーの進化に伴い企業での導入が拡大することは、ジェネレーティブAIを支えるインフラサービスのプロバイダーにとって良い兆しだ。Gartnerは、現在は生成される全データの1%未満にすぎないジェネレーティブAIが、2025年までに全データの10%を占めるようになると予測している。
OpenAIが先行しているとはいえ、企業への導入に関して、特定のベンダーに軍配を上げるのはまだ早過ぎる。
カンダスワミ氏は「この技術は未熟で進化している最中であり、今後もイノベーションが起こるだろう。パワフルな一方で、初期のLLMには不正確さや幻覚など、導入するまでには解決が必要な問題が幾つかあり、誰がそれらを解決するのかははっきりしない」と述べた。
社員のスキルも、導入に欠かせない要因の1つだ。プロンプトジェネレーション、すなわちツールが有用な結果を出すための正確で効果的なプロンプトを作成する能力は、まだ開発中の比較的新しいスキルだ(注6)。
同氏は、「まだ始まったばかりで、これからが本番だ。仕事やプライベートでのコンピューターの使い方は、劇的に変化しようとしている」と語っている。
(注1)Announcing New Tools for Building with Generative AI on AWS(AWS)
(注2)Amazon Titan Amazon が提供する高性能な基盤モデル (FM) を活用して、責任あるイノベーションを推進する(AWS)
(注3)CEO Andy Jassy’s 2022 Letter to Shareholders(Amazon)
(注4)ChatGPT coming soon to Azure OpenAI service ― with guardrails(CIO Dive)
(注5)Google embeds enterprise-grade generative AI in its cloud(CIO Dive)
(注6)How to grow generative AI prompt skills across the workforce(CIO Dive)
© Industry Dive. All rights reserved.