企業内SaaS専用「検索窓」Gleanが日本でも提供開始

SaaSによるデータのサイロ化が課題になる中、SaaSデータを「ググる」「AIチャットで問い合わせる」を実現するサービスの提供が始まった。

» 2023年05月31日 12時00分 公開
[原田美穂ITmedia]

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 SaaSの利用が進むにつれ、従来は企業内に蓄積されてきたナレッジがさまざまなSaaSツールに分散し、データのありかが見えにくくなる状況が生まれている。同僚からの連絡がチャットツールやプロジェクト管理ツール、ワークフローツールなどのメンションで届いたりメールで届いたりと、データを探す作業が従来にもまして煩雑になっている組織も多いのではないだろうか。

Arvid Jain氏 オンラインで会見に参加した同社CEOのArvid Jain氏も元Googleのエンジニアだ。「多様なSaaSを利用する中で私自身が情報の探索に時間を費やしていた。この課題を解決する方法が見当たらなかったことが起業のきっかけ」とGlean創業のいきさつを語った

 アシストが企業向けに生成AI(人工知能)を活用したエンタープライズサーチサービスを展開する「Glean」の取り扱いを開始する。

 Gleanの開発元であるGlean社(以降、企業名はGlean社と表記)はシリコンバレーで創業した若い企業だが、創業からわずか4年で大手企業を中心に顧客を獲得して急成長中の、いわゆる「ユニコーン企業」の1社だ。GoogleやMicrosoftで検索エンジンの開発に従事したエンジニアらも多数在籍する。

SaaSデータをググり、AIチャットで問い合わせられる

Glean社のAPAC統括責任者 William Hielert氏

 日本での提供開始に当たり来日したGlean社のAPAC統括責任者であるWill Hiebert氏は、日本での提供開始に当たり「現在ビジネスパーソンは情報を見つけることに1週間のうち1日分に相当する時間をかけている。Gleanを使うことでこの時間をなくし、クリエイティブな仕事に従事できる環境を提供する」と訴えた。

 GleanはSaaS型で提供するサービスだ。コネクターを介して各種サービスと接続すればすぐに利用できる。サービスそのものはシングルインスタンスで提供するが、その中で企業ごとに利用するSaaSに集積されるビジネス文書や画像、映像などのデータを学習してAIモデルを企業ごとに構築し、それを基にSaaSに置かれたデータに自動でメタデータを付与する。Hiebert氏によれば「要望があれば顧客のプライベートクラウドでも利用可能」としている。

 データ処理には「GPT-3」や「BART」などの大規模言語生成モデルを利用する。SoC 2のセキュリティ・コンプライアンスフレームワークに対応しており、各SaaSのデータはそれぞれのアクセス権限に準拠して検索結果に反映される。入力データの内容そのものは生成AIサービスの学習に利用されないように制限をかける有償オプションを利用することで情報の漏えいを防ぐ。データの関連性や重要度は利用者のアカウントや検索行動などの加味したグラフで管理しており、個々の利用者に最適化した検索結果を提示する仕組みだ。

 「ZscalerやPaloAltoなどのセキュリティ企業もわれわれのユーザーだ。セキュリティに対しての信頼は高い。エンジニアリング、営業、バックオフィス、顧客サポートの人員でも利用できる」(Hiebert氏)

 オンプレミスに対しても対応可能だが、権限管理の連携が複雑なためSaaSを優先して対応する。SaaSにはアドミン権限でアクセスする。

Glean Searchのトップ画面例(左)と検索結果例(右)(出典:アシスト提供資料)

 Gleanの主な機能は以下の通りだ。

Glean Search: 企業内で利用される各種SaaSが持つデータを自動で学習して一括検索する機能。検索結果のパーソナライズに加え、Google検索がPDFや画像を一度に検索できるのと同じように、多様な形式のデータをテキスト検索で探索できる。検索結果は検索のコンテクストを加味して最適化する。トップページには各種コミュニケーションツールのメンションや直近で利用したドキュメントなども一覧で表示可能だ。

 ドキュメント作成者情報や各種ツールでの活動状況から、検索ワードに関連したナレッジを持つ社内の人物を特定して解答する「Know who」機能も持つ。

Glean Chat: Glean Searchは「Google検索」的に情報のポインタを示す機能だったがGlean Chatは、企業内のドキュメントをソースにチャットBotがその内容を言語生成AIを使ってサマライズして解答する。利用者は検索結果を開いて資料を確認する操作が不要になり、チャット画面で必要な情報のみを確認できる。現在、同機能はプライベートβ版として提供されている。

 Glean Chatについて、製品デモを担当したアシストのビジネスソリューション本部 アシストマイスターの松山 晋ノ助氏は「ソースを社内ドキュメントに限定することで経費精算の方法などのシンプルな問い合わせは問題なく回答できる精度になっている」と評価した。

田畑哲也氏 会見に当たり、アシストのDX推進技術本部 本部長執行役員 田畑哲也氏は「Gleanはエンタープライズサーチ『Panopto』、デジタルアダプションプラットフォーム『Techtouch』と併せて、アシストが提唱するInternet of Knowledge構想の一端を担うサービス」と期待を寄せた

 アシストは2022年からGleanを社内で利用し始めており、現在は全従業員が利用する。同社は現在Gleanの取扱開始に向け、UIの日本語化を進めているところだ(検索結果の言語処理などは既に日本語に対応している)。

 Gleanの取り扱いを推進してきた同社DX推進技術本部 部長の佐子雅之氏は「まずエンタープライズサーチのニーズが多いと想定される、従業員規模が数千人以上の企業を対象に販売活動を進める」と今後の販売計画を説明した。より具体的には「Microsoft 365」や「BOX」を利用する企業への販売を進める計画だという。価格は同社プロダクトサポート込みで年額3900万円〜のサブスクリプションで提供する。

 なお、国内では先行して株式会社中電シーティーアイが採用している。

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