IDCの調査によると、国内企業の5割以上はESG経営の取り組みを実践できていない。IDCがESG経営への取り組みを推奨する「環境への配慮」以外の理由とは?
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IDC Japan(以下、IDC)は2023年6月1日、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の取り組み実態に関する調査結果を発表した。
同調査は、従業員100人以上の国内企業510社に所属するESGに関連、もしくは対応する自社システムの状況を把握している経営者や役員、管理職、システム担当者などを対象に2023年2月に実施された。
今回の調査で、ESGの何らかの取り組み(一部の取り組み、複数の組織での取り組み、全社の取り組みの合計)を開始している国内企業の割合は43.5%で、5割以上は実践的な取り組みにまで至っていないことが明らかになった。
ESGの取り組みを全く行っていない企業(20.4%、104社)にその理由を尋ねたところ、最も多い理由は「経営層のESGの関心の低さ」(49.0%)だった。「経営層の高度な意思決定が不可欠となるESG経営の取り組みにおいて、この状況は国内企業にとって重要な事象として捉えるべきだ」とIDCは警鐘を鳴らす。
また、ESG経営を実現するに当たって今後1、2年の間に技術投資が必要性となる領域について尋ねたところ、「データプライバシー」(11.2%)や「従業員エンゲージメント評価」(10.6%)、「ESGデータ管理、収集と分析」(10.2%)が上位に入った。
IDCはこれを「国内企業がESG経営に取り組むに当たってデータセキュリティやデータ活用へのさまざまな評価と分析に関する技術領域に重点を置いていることが分かる」と分析する。
ESG経営の実現に向けた課題としては「技術不足」「予算不足」「ESGに関する専門組織や能力の欠如」が上位3つに挙がった。「これらは、国内企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)における課題と重なる点も多い。ESGは投資家や規制当局、一般社会から期待が高まっており、経営層から従業員まで企業全体で取り組むべき課題となっている。国内企業はDXの取り組みを永続的に発展させるためのロードマップとしてESG経営を捉えることができる」とIDCは指摘する。
IDCの飯坂暢子氏(Software & Servicesリサーチマネージャー)は「国内企業のITバイヤーは、関連する全てのステークホルダーを再認識した上で、自社のマテリアリティーに沿って目標の設定と測定を行えるテクノロジーの仕組みを構築し、ステークホルダーと議論を重ねながらESG経営を発展させるべきだ」とコメントした。
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