CX、CRM市場成長のカギとなる「未来の顧客体験」とは? IDCが提言

IDCの予測によると、2023年以降の国内CX関連ソフトウェア市場、CRMアプリケーション市場ともに好調に推移する見通しだ。IDCは市場が成長を継続するためのカギとして「Future of Customer Experience」(未来の顧客体験)を提言する。その内容とは。

» 2023年06月22日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 IDC Japan(以下、IDC)は2023年6月20日、国内のCX(顧客エクスペリエンス)関連ソフトウェア市場とCRM(顧客関係管理)アプリケーション市場についての予測を発表した。

CX、CRMとも右肩上がり 成長継続のカギは?

 IDCは国内CX関連IT市場を「企業が顧客体験を差別化する目的で選択するデジタル戦略や技術、ビジネスプロセス、サービス提供を遂行するためのIT製品、サービス群」と定義している。その中で「CX関連アプリケーション市場」「CX関連アプリケーション開発/デプロイメント市場」「CX関連システムインフラストラクチャソフトウェア市場」の3カテゴリーに分類している。今回の予測は、CX関連IT市場のうちソフトウェアに関わる市場に焦点を当てたものだ。

 国内CRMアプリケーション市場については、国内CX関連ソフトウェア市場の主要セグメントであるCX関連アプリケーション内の主要市場として定義している。

 2022年の国内CX関連ソフトウェア市場は前年比14.4%増、市場規模(売上額ベース)6386億300万円となった。2022年の国内CRMアプリケーション市場は前年比17.0%増、市場規模(売上額ベース)2174億4400万円となった。

 2022年はコロナ禍の継続や、ロシアによるウクライナ侵攻の影響でサプライチェーンのひっ迫や複数要因によるインフレーションの進行など、ユーザー企業を取り巻くマクロ環境が大きく変化した。「ただし、国内CX関連ソフトウェア、国内CRMアプリケーション市場への影響は限定的だった」とIDCは評価している。

 2022年の同市場はCX関連アプリケーションにおける業務効率化・顧客接点の刷新を目的とした新規・追加投資、CX関連アプリケーション開発、デプロイメント市場におけるデータドリブン経営に向けたデータ管理、分析需要、CX関連システムインフラストラクチャソフトウェア市場におけるハイブリッドワークの浸透、地政学リスク上昇によるサイバーセキュリティ対策などを背景に高い成長で推移したとIDCは見ている。

 2023年以降も同市場は、デジタルトラストを確保しながら想定できない変化が間断なく起こるネクストノーマル(The Next Normal:次なる常態)環境を生き抜くため、顧客変化に対応し、エンゲージメントを高めるデータ基盤の構築、データを活用するためのシステム間連携、アプリケーションの刷新需要によって好調に推移するとIDCは予測している。

 その結果、2022〜2027年の国内CX関連ソフトウェア市場は年間平均成長率(CAGR)7.8%で推移し、2027年には9317億4300万円になるとIDCは予測している。国内CRMアプリケーション市場の2022〜2027年のCAGRは10.1%で推移し、2027年には3510億7400万円になる見込みだ。

2021〜2027年の国内CX関連ソフトウェア市場予測。2022年までは実績(売上額ベース)、2023〜2027年は予測(出典:IDCのプレスリリース)
2021〜2027年の国内CRMアプリケーション市場予測。2022年までは実績(売上額ベース)、2023〜2027年は予測(出典:IDCのプレスリリース)(出典:IDC Japan発表プレスリリース)

 IDCの太田早紀氏(Software & Services シニアマーケットアナリスト)は、「国内CX関連ソフトウェア、国内CRMアプリケーション市場が今後も成長するために、ITサプライヤーは『Future of Customer Experience』への転換に向けた包括的な支援体制の構築やCX業務・UX(User Experience)の標準化に向けた生成AI(Generative AI)の活用、ガバナンス策定支援、ポイントごとの最適化に陥らないフロントライン業務の連携、顧客フィードバックループ確立のためのデータ活用、パーパス策定、人的リソースの活用に対する支援を提供することが重要になる」とコメントする。

 なお、Future of Customer Experienceとは顧客の評価に基づき製品・サービスを改善しながら市場に評価を問い続ける「顧客フィードバックループ」に基づいた企業の体制を指すIDCの造語だ。その実現に必要な要素として「デジタルファースト時代の基本UXの構築」「顧客データ活用」「オペレーションプロセスの改善」「データエコシステム」「コラボレーション、組織文化の醸成」の5つが必要だとしている。

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