「重たい」を払拭する組織改革とモダナイズの提案を推進――NEC 金融ソリューション事業部門長 岩井孝夫氏(2/2 ページ)

» 2023年06月30日 08時00分 公開
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NECの金融部門、組織をどう変えるか リーダーの目線

──ご自身では、いまどのような技術トレンドに注目しておられるかをお聞かせください

 まずはクラウドでしょう。今後のシステムは、プライベートクラウドやパブリッククラウドなど複数を使っていくマルチクラウド環境が前提になると思います。また、コンテナやマイクロサービスの取り組みの中で業務やサービスが細かくコンポーネント化されていきます。その中でどう一体的に管理するかが大事です。影響範囲を小さくするために細かくしているのに、何か一つがつぶれることでシステムに大きな影響がでるようでは意味がありません。マルチクラウドやマイクロサービス環境をいかに可視化、モニタリングしていくかが重要です。

 それと関連して、運用のモダナイゼーションにも注目しています。アプリケーションやIT基盤のモダナイゼーションの取り組みが進んでいますが、システム運用のモダナイズは道半ばの段階だと見ています。運用のモダナイゼーションはクラウドやコンテナで抽象化して集約したシステム群をいかに無駄なく効率よく管理するかが重要です。運用のモダナイゼーションに加えて、複雑化したシステム間の通信を可視化する「通信のモダナイゼーション」も求められるでしょう。これらの技術をお客さまに負担なく導入いただけるよう尽力しているところです。

 この春はコロナ禍が明けて移動がしやすかったこともあり、お客様と一緒にシリコンバレーの状況を視察し、FinTechのトレンドをキャッチアップし、良いところを取り込むにはどうしたら良いかを一緒に検討する活動も実現しました。既存システムの運用などのモダナイズと合わせて、効率化してできたリソースをどう収益力を上げる施策につなげるかを検討するプロセスも一緒に探っていくことが重要だと感じています。視察についてはご要望があれば積極的に実施したいと考えています。

──組織体制の改革に着手するお考えはありますか

 NECでは2030年までに目指す社会像を「2030VISION」として打ち出しています。われわれのシステムや提案が社会課題の解決にどうつながるのか、自分たちの取り組みを社会課題解決にひも付けていくことを重視ししており、このビジョンをお客さまと共有しながら取り組んでいく考えです。

 この4月に就任した時にメンバーに最初に言ったのは「『挑戦』『成長』を仕事のモチベーションに加えよ」ということです。金融事業はNECの中核事業であり、これまでと同様に安定的な価値を提供していきますが、それだけでは事業が固定化してしまいます。挑戦、成長を促す組織文化が重要です。その取り組みの一つとして、2022年度から組織階層を8階層から6階層に減らし、意思決定スピードの向上、風通しの良い組織づくりを進めています。この取り組みは今後も継続する考えです。組織の在り方を見直す中で、伝統的な価値を守りつつ、チャレンジ精神を育てる組織を目指す考えです。

──現状の課題についてどう考えていますか

 ハードの箱売りから、コンサル型、サービス提供型と呼ばれるようなお客さまの支援体制にどうモデルチェンジしていくかです。お客さまの課題解決が基本であり、そのために営業の在り方やエンジニアのリスキリングの在り方もサポートしていかなければなりません。お客さまの課題は必ずしもシステムで解決できるものだけではありません。また、お客さまも金融事業に閉じずに外に出てビジネスを進めていこうとしています。そこでパートナーになるためには、課題に対する打ち手について、システムでないところも含めてお客さまと一緒に歩めるように課題解決力、ソリューション力を高めていきます。

──リスキリングについて今どのような取り組みを行っていますか

 全てを変えるのは難しいものです。まずは、リードと呼ぶトップ層を中心に手厚い教育を施してスキルを高め、彼らを基点に全体の底上げを進めていきたいと考えています。そのために、今まさにリード層に対する教育の仕組みを整備しているところです。ここからの約3年間でいかに変えられるかが私自身の勝負になります。よく組織は優秀な2割の人材が動けば残りの6割の人材は追従すると言われますから、最初の2割となる彼らの意識をどう変えられるかがポイントになるでしょう。

──SEや営業の人材にはどのようなスキルや素養を求めていく考えかをお聞かせください

 メンバーによく言うのは、プロフェッショナルな領域を3つ作りなさいということです。1つ目はビジネスのプロであること。2つ目はITのプロであること。そして、3つ目がプロとしての領域です。例えばお客さまの業務を理解するプロでもいいですし、お客さまの状態を見極めるプロでもいいでしょう。この3つの軸を持つことで、このお客さまは辛口が好きなのか、薄味が好きかが見えてくると思います。

自身は率先して働き方改革を進めており、休暇も積極的に楽しむ派だという。週末は少年サッカーチームのコーチも務める。子育ての一環で始めたというが、子供が卒業したあとも継続してチームのコーチを続け、良いリフレッシュになっていると話す
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