IBM watsonxが一般提供開始 企業ユースケース別のAIモデル提供も企業向けAI基盤の真打ちになるか

IBMが企業向けを強く意識したAIおよびデータプラットフォーム「watsonx」の一般提供を開始した。AIモデルに加えてデータ基盤やAIガバナンスの運用に向けた機能も投入、2024年をめどに、個々の業務や業種に向けたAIモデルの提供も予定する。

» 2023年07月13日 11時10分 公開
[原田美穂ITmedia]

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 IBMは2023年7月11日(現地時間)、watsonxの一般提供を開始した。「IBM Software」のプロダクトマネジメント&グロース担当シニアバイスプレジデントであるカリーム・ユセフ氏がIBMの公式ブログで発表した。

本田技術研究所などがすでに試用、2024年にはユースケース別のAIモデル提供も

 watsonxは2023年5月に同社年次イベント「Think」で発表されていたもので、基盤モデル(Foundation Model)の生成AIを実現する企業向けのAIおよびデータプラットフォームとして位置付けられる。IBMはwatsonxを使うことで「企業が独自に自社ユースケースに特化したモデルを構築し、それを展開することも可能」としている。

 さらに、2024年をめどに企業の基盤モデルのユースケースを自然言語処理以外にも拡大し、特定のユースケース向けに1000億以上のパラメーターを持つ大規模生成AIモデルを運用することも表明した。また今後「IBM Cloud」においてGPU搭載のAI専用のリソースを「PICaaS」(Performance Intensive Computing as a Service)として提供する計画もある。

 特徴は企業におけるAI利用を強く意識した製品提供形態にある。自社固有のデータを使い、基盤モデルのAIと機械学習を単一のプラットフォームで開発から運用、モニタリングまでを実現する。watsonxには企業のAI利用向けの環境として「Red Hat OpenShift AI」をベースとしたAIモデル開発環境「watsonx.ai」の他に、データストア「watsonx.data」や、責任や透明性、説明可能性といったAIガバナンスを考慮したワークフロー構築を支援するツールキット「watsonx.governance」も併せて提供する(watsonx.governanceは今秋提供開始予定)。

 watsonxには、IBMや各種オープンソースのモデルを含む基盤「モデル・ライブラリー」、さまざまなユースケースやタスクのためのプロンプトを実験/構築する「プロンプト・ラボ」、ラベル付きデータで基盤モデルをチューニングする「スタジオ」、モデルの学習や開発、ビジュアルモデリングで機械学習モデルを自動的に構築する「データ・サイエンスと機械学習」の運営環境が含まれる。

 watsonx.aiでは、質問応答、コンテンツ生成と要約、テキスト分類と抽出などの自然言語処理(NLP)タイプのさまざまなタスクをサポートする事前学習済みAIモデルとして、IBMやHugging Faceコミュニティーが提供するモデルを利用できる。今後さらに個別の事業ドメインやタスクに特化した事前学習済みモデルを提供する計画だ。

 watsonx.dataはガバナンスやコンプライアンスに配慮したデータ管理が可能で、クラウドとオンプレミスの両方のデータにアクセスできる。非技術者によるセルフサービスでのデータアクセスも可能だ。

 一般公開に先立ち限定的に公開していたβ版およびプレビュープログラムには、IBMによれば約150超の企業が参加している。今回の一般提供開始に当たってはSamsung SDS Americaや本田技術研究所 先進技術研究所、Citibank Internationalがエンドースメントを出している。

 IBMはwatsonxの目標として「生成AI、基盤モデル、機械学習機能の学習、検証、チューニング、デプロイを行うAI開発者向けに次世代のエンタープライズ・スタジオ(ツール・機能群)を提供し、ビジネスの生産性と従業員の効率を向上させること」を挙げている。

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