Microsoftの顧客に起きたハッキング被害 「影響は広範にわたる」と調査報告書Cybersecurity Dive

Microsoftの顧客の電子メールアカウントでハッキング被害が起きた件について、セキュリティ企業のWizが公開した調査報告書はOutlook.com以外のデータにもアクセスできる恐れがあると警告した。

» 2023年08月26日 07時00分 公開
[David JonesCybersecurity Dive]

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 セキュリティ事業を営むWizが2023年7月19日(現地時間)に発表した報告書によると、米国国務省をはじめとするMicrosoftの顧客の電子メール情報を盗んだのは、中国に関連するサイバー攻撃者と考えられており、「Microsoft Exchange Online」や「Outlook.com」以外のアプリケーションにもアクセスしていた恐れがあるという(注1)(注2)。

 研究者によると、漏えいした暗号化キーによって、ハッカーは「Microsoft SharePoint」「Microsoft Teams」「Microsoft OneDrive」を含む複数の「Azure Active Directory」アプリケーションのアクセストークンを偽造できた可能性があるとのことだ。

米商務長官も被害に リサーチャーは広範囲への影響を懸念

 Microsoftの広報担当者は「これらの主張の多くは推測に基づいており、証拠に基づいていない。この事件について詳しく知りたい顧客は、『Microsoft Threat Intelligence』のブログを確認し(注3)、公開した指標を使用して自社の環境を調査してほしい」と話している。

 Microsoftは2023年7月の初め、複数の政府顧客を含む全世界の約25の顧客が、脅威グループ「Storm-0558」によってハッキングされたことを報告した。

 Storm-0558は、国務省の機密情報にアクセスした他(注4)、米商務長官のジーナ・レモンド氏などの電子メールアカウントにもアクセス権を得たとされている。政府関係者が侵害についてMicrosoftに通知した後、米国土安全保障省サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)は、Microsoftと連携して被害を食い止めるための対策を講じ、ハッカーがアクセスを得た経緯を調査した。

 Microsoftは2023年7月の初めに、ハッカーがシングルサインオンサービス「Microsoft Account」の個人用署名キーにアクセスし(注5)、Microsoft Exchange OnlineとOutlook.comのアクセストークンを偽造したと発表した。しかし、Wizの調査によると、このキーはさらに多くのアプリケーションへのアクセスを可能にするものだった。

 Wizのシニア・セキュリティリサーチャーであるニル・オフェルド氏は「今回の調査で私たちが最も驚いたのは、侵害の影響がセキュリティコミュニティーにおける大半の認識よりもはるかに広範囲に及ぶ恐れがあることだ。多くの人が、影響はOutlook.comに限定されるという誤った想定をしていた。こうした侵害が起きた際に影響を受ける範囲について、私たちは正確に認識できていないと分かった」と述べている。

 Wizの研究者はMicrosoftと共同でこの新しい報告書を作成しており、組織は影響を受ける恐れのある全てのアプリケーションにおいて、偽造トークンが使用されていないかどうかを確認する必要がある。また、ユーザーはこれらのアプリケーションについて、キャッシュされた「Microsoft OpenID」の公開証明書を使用していないことを確認すべきだ。もし使用しているのであれば、キャッシュをリフレッシュしてほしい。

 なお、Microsoftは連邦政府当局や他社からの非難を受けて、セキュリティのログデータをデフォルトで使用できるようにした(注6)。

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