バックアップソリューションを展開するArcserve Japanが事業戦略説明会を開催した。新社長が顧客の課題感を掘り下げるための新たな事業戦略を語った。
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バックアップやストレージ製品などのデータ保護ソリューションを展開するArcserve Japanは2023年9月6日、記者説明会を開催した。同説明会では2023年8月1日にArcserve Japanの職務執行者 社長に就任した公家尊裕氏が新たな事業戦略を発表した。
ビジネスにおいてデータは重要な価値を持っているが、人為的な操作ミスやソフトウェア/ハードウェアの故障、自然災害、サイバー攻撃などこれを消失するリスクも高まっている。もしランサムウェア被害に遭い、データを暗号化・窃取されれば、ビジネスを停止せざるを得なくなり、その間に甚大な機会損失と金銭的被害が生まれるだろう。またランサムウェアに遭ったことは社会的な信頼の失墜にもつながる。
Arcserve Japanはこれらのリスクに対し、統一されたデータレジリエンスを中心にした戦略で、事業運営からテクノロジー、商品提供、顧客サポートまで包括的なデータ保護アプローチを提供している。
今回の説明会では、Arcserve Japanの新たな事業戦略について公家氏から説明があった。公家氏はこれまでのキャリアで、ソフトウェアやハードウェア、工場の管理システムなどのOT領域、ブロックチェーン、AI(人工知能)、セキュリティ、デジタルマーケティングといった多く企業で15社のカントリーマネジャーを経験してきた人物で、IT全般において幅広い知見を有している。
そんな同氏が提唱する新戦略が「ハイスピード ハイレゾリューション」だ。従来の日本の顧客セグメント戦略は、中小企業や大企業など企業規模別に会社を分け、業界カットでソリューションを提供するケースが多かった。ちょうど下図のようなイメージだ。
だが公家氏によると、このセグメント戦略は解像度が非常に低いという。「複数の企業を渡り歩いてきた経験からこの戦略を見ると、その粗さに衝撃を受けた。中小企業と大企業という分け方は例えるなら『男性』『女性』という区分けに近い。さらに業界という分け方を例えると、『無職』『会社員』『公務員』『フリーランス』といったイメージだ。この区分けでは、男性の公務員は皆同じ趣味で、同じような行動をするという区分けになる」(公家氏)
対してハイスピード ハイレゾリューションは、はじめにアイデア・カスタマー・プロファイル(ICP)という理想的な顧客プロファイルを定めて、そこに対して細かな営業やマーケティング活動を実施する。
企業規模については中小企業、中堅企業、大企業という区分けから、従業員数0から10人、10人から30人、30人から50人、50人から300人といったようにさらに細かく分類する。そこから業界カットで考えるわけだが、製造業と一口にいっても実際は自動車や家電、精密機械、電気部品などさまざまな企業がある。「これらの企業の要求が全て同じとは考え難い」(公家氏)
そのため、ICPを定める上では業界をさらに細かく分け、その先のITやOT、セキュリティ、マーケティングなどの職種によってもセグメントする。公家氏は「同じ企業でも製品によってはリーチしたい職種が異なるケースもある。ここまで細かく顧客プロファイルを設定することでハイレゾリューション(高解像度)なセグメント戦略を実現できる」と話す。
新戦略はこのように高解像度のプロファイルによって仮想顧客を想定し、ここに向けてスモールスタートで営業活動を展開する。もし結果が好ましくなければ素早く次のプロファイルに移行し、うまくいけばさらにリソースを投入するといったサイクルをハイスピードで周回する。インテントセールスやインテントマーケティング、AIを駆使してプロファイルが反応するテキストや画像を自動で作成してセールス成功の確率も向上させる。
「Arcserve Japanはもともと中堅・中小企業を対象にビジネスを展開してきた。国内イメージバックアップ市場で高いシェアを誇り、多くの顧客数を抱えている。だからこそ高解像度のICPを定めるこの戦略を実践できる。これによって顧客が共感できる課題感およびリスクをピンポイントで訴求する」(公家氏)
この戦略を進める上で同社が中心に据えているソリューションがイミュータブルストレージアプライアンス「Arcserve OneXafe」(以下、OneXafe)だ。同製品は1年前から展開されているが、今回中小企業でも導入しやすいようコストを下げたローエンドモデルのスペックを日本で新たに提供する予定だ。公家氏は「OneXafeを使えば万が一サイバー攻撃の被害に遭ったとしても迅速にデータを復旧し、ビジネスのダウンタイムを最小化できる」と説明する。
公家氏は最後に「クラウドが普及しているものの、依然として日本企業はオンプレミス環境やハードウェアのアプライアンスを好む傾向がある。こうした企業がランサムウェア対策を講じる上でOneXafeをはじめとした当社の製品は非常に相性が良い。今後当社は3年間、毎年30%成長を目指していく」と意気込みを語った。
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