米国大手不動産会社JLLが生成AIを自社開発 導入後48時間で1万1000人以上が利用CIO Dive

商業用不動産を取り扱う投資管理会社であるJLLが独自の大規模言語モデル「JLL GPT」を開発した。導入後48時間で、1万1000人以上の従業員がこれを利用したという。

» 2023年09月13日 07時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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 不動産事業を営むJones Lang LaSalle(以下、JLL)は2023年8月第1週、独自の大規模言語モデル(LLM)「JLL GPT」を10万3000人以上の従業員に展開した(注1)。同社のテクノロジー部門であるJLL Technologies(以下、JLLT)は、特に商業用不動産業界向けにこの生成AI(人工知能)機能を開発し、将来的にはこの技術をクライアントに提供しようとしている。

米国大手不動産会社が生成AIを自社開発 利用計画と導入成果は?

 JLL GPTは会話型のインタフェースを特徴としており、ユーザーは他の一般的なモデルと同様に自然言語で質問できる。JLLTのCTO(最高技術責任者)であるヤオ・モリン氏は、「パートナー企業への委託やツールの購入ではなく、自社で構築するという決断を下したのは、われわれが商業用不動産データで訓練されたモデルを保有しており、セキュリティの必要性が高いためだ」と話す。

 同氏はさらに「JLLと商業不動産全般にとって、われわれは専門家である必要がある。一般には公開されていないデータや情報を数多く持っており、それをこのテクノロジーで取得および活用し、従業員に提供したいと考えた」と述べた。

 JLLは従業員がこのモデルに慣れるにつれて、利用状況とユニークの訪問者数をモニターしており、導入後48時間で1万1000人以上の従業員がこのモデルを利用した。

 JLLTが独自に開発したLLMは、従業員向けに関連情報を生成し、社内の商業用不動産情報とその他の外部データソースで微調整することで、洞察的なデータに変える。目的は従業員の代替となるのではなく、彼らを補完することである。

 最初のテストが成功した後、同社は段階的な配備に踏み切った。

 モリン氏は「圧倒的に好意的な意見ばかりだ。JLL全体に展開することを決めたのはテストが完了し、構築したものに大きな自信を持てたからだ」と語った。

 同社は商業不動産業界におけるAI競争の激しさを理由に、技術開発に関連する一部の詳細については公表しないことにした。

 JLLは世界80カ国以上で事業を展開し、年間売上高は209億ドルに上る。JLL GPTの開発以前は建物の効率改善、リースの3Dビジュアル生成、サステナビリティに関するリスクの算出、投資案件の発掘にAIを活用していた。

 同社によると、2023年第1四半期には、全世界のJLLのキャピタルマーケットの案件の5件に1件が、AIを活用したプラットフォームによって実現されたという。

 同社は当面、JLL GPTが従業員のスペース使用状況のダッシュボードを会話に変換し、顧客からのフィードバックを増やし、ワークプレースプランニング戦略を迅速化する一助となることを期待している。将来的には、自動化された施設管理のためのデータマイニングや、投資家のための価格モデリングと予測、リース取引のためのマッチメイキングに役立つと見込んでいる(注2)。

 既にJLLの従業員が確認したユースケースの一つは、このツールを使い、従業員がオフィスに犬を連れて来られるかどうかを決めるための長いリース契約書を精査することだった。これによって、作業時間は数時間または数日からわずか数秒に短縮された。

 モリン氏は「従業員のためにユースケースを作成し、説明に役立つデモやインストラクションを提供し続ける。われわれは製品を進化させてきており、新しい機能を追加していくつもりだ」と述べた。

 各部門がモデルを更新する際には、ユーザーからのフィードバックを参考にするとモリン氏は言う。

 「われわれはJLL GPTを進化させ続け、従業員にとって最適な状態にするつもりだ。他のソフトウェアと同じように、段階を経る必要がある」

 また同社は開発中、もしくはβ版の生成AIに関連する40以上のイノベーションを保有している。

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