AIチャットbotが人間の仕事を奪えない5つの理由Supply Chain Dive

チャットbotや取引の自動化は業務効率の向上に役立つが、サプライヤーは交渉や問題解決のために依然として人間との対話を必要としている。

» 2023年09月28日 07時00分 公開
[Rich WeissmanSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 本稿の筆者は人間のリッチ・ワイズマンであり、AI(人工知能)ではない。AIに関する話で、カスタマーサービスのチャットbotがいかに不快で、なぜ人間の仕事をリプレースできないかを説明する。

 AIは爆発的に普及しており、われわれのようにサプライチェーンの調達に携わる者にとっても無縁のままではいられないだろう。

チャットbotは人との効率的な対話が可能だが、配慮や共感に欠ける

 売り手側でAIの効率性と広範性を支持する人々は、個性や意思決定能力を欠いたカスタマーサービスのチャットbotを導入し、人との接触が必要な顧客とサプライヤーとの関係を疎外しようとしている。

 買い手側では経営者がAIを使って取引を自動化し、調達を合理化し、人員を削減し、さらに複雑な分析を通じて需給を調整している。しかし少なくとも今はまだ、AIがサプライヤーを説得して残業シフトを追加させたり、特定の顧客の需要に合わせて価格を引き下げたり、部品表を上書きしたり、エンジニアに設計図をマークアップさせて変更の指示書を作成させたりするところまで進化していない。

 チャットbotはAIを搭載した自動会話プログラムで、チャットで顧客と対話し、自動化されたサポートや支援を提供する。私たちが携帯電話やケーブルのアカウントにアクセスする際に表示され、多くのサプライヤーが有用性を認める産業界に移行しつつある。

 チャットbotの導入は大幅なコスト削減につながる。人間の従業員を雇い、トレーニングするのに比べ、チャットbotは安価でオフィススペースや設備、福利厚生などのリソースを必要としないからだ。

 24時間体制でカスタマーサービスを提供できることも、チャットbotの重要な利点だ。高い拡張性で複数の顧客との会話を同時に処理し、事前に定義されたルールやガイドラインに従い、同様の問い合わせに対してパターン化された応答が保証される。場合によっては、それだけで顧客を満足させるのに十分かもしれない。では、なぜ私たちはチャットbotを好まないのだろうか。

 チャットbotには、多くの顧客との対話に欠かせない人間の感情や共感が欠けている。複雑な状況や感情的な状況では、顧客はときに人間だけが提供できる相手への配慮や理解を求める。また、チャットbotはデータとアルゴリズムに大きく依存しているため、事前にプログラムされた知識の範囲内でしか情報を提供できない。

 自然言語や複雑なクエリの理解には限界があるため、チャットbotは曖昧な質問や間接的な質問に苦戦し、不正確または不完全に回答してしまう。

調達業務が人からAIに代わる可能性が低い5つの理由

 AIは調達プロセスのある側面を自動化し、効率を高める可能性を秘めているが、「バイヤーbot」が人間の調達専門家に取って代わる可能性は低い。その理由は以下の通りだ。

  • 戦略: 調達には戦略的な意思決定やサプライヤーとの関係管理、交渉スキルが必要であり、これら全てに判断力と専門知識が求められる。AIはデータに基づいた洞察や提案を提供できるが、最終的な意思決定には人間の関与が必要だ
  • 交渉: 調達担当者は品質や納品条件、契約上の義務など、価格以外のさまざまな要素を考慮しながら、サプライヤーと複雑に交渉する。人間関係の構築や市場ダイナミクスの理解、互恵的な合意の発見は人間のスキルと経験が極めて重要な分野だ
  • サプライヤーとの関係管理: サプライヤーとの関係の構築と管理には信頼関係の構築や協力、コミュニケーション、サプライヤーの能力の理解が必要であり、これらには強力な対人スキルが求められる。調達には倫理的で持続可能な調達慣行、サプライヤーの多様性への取り組み、法規制の順守が含まれる。サプライヤーの誠実さを評価、確保し、社会的責任と強い倫理基準を提唱するには人間性が不可欠だ
  • 創造性: 調達担当者は変化する市場環境や新たな技術、サプライチェーンのリスク、進化および出現する顧客ニーズに適応する必要がある。また、革新的な解決策や回避策を特定し、新たなサプライヤーの選択肢を模索し、既存の調達手順を最適化するために創造的思考が必要だ
  • 機能横断的な統合: 調達担当者は財務やマーケティング、エンジニアリング、オペレーションなど、組織内のさまざまなステークホルダーと関わる。調達チームは協力し、目的を一致させ、期待を管理するために、人間的なコミュニケーションと社内関係構築のスキルを必要とする

 いつの日か、私たち全員が人間らしい意識を持つ調達ロボットの下で働く日が来るかもしれない。

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