ステーブルコインに本腰を入れるVisa ブロックチェーンの可能性と同社の目標とはPayments Dive

Visaがステーブルコインの取り組みを推進している。WorldpayやSolanaをはじめとする新たなパートナーシップの拡大は何を意味するのだろうか。Visaが目指す未来とは。

» 2023年10月11日 08時00分 公開
[Lynne MarekPayments Dive]

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 Visaは2023年9月5日、ブロックチェーンの「Solana」や決済サービス会社のWorldpay、Nuveiなどの新たなパートナーとステーブルコインの取り組みを拡大していると発表した(注1)。

暗号資産システムを利用して、より速く低コストな決済を目指す

 Visaは既にEthereumと共にSolanaのブロックチェーンを利用して取り組みを行っている。そのうちの一つが、消費者が国境を越えて取引できる「VisaNet」というクロスボーダーシステムで、Visaによれば数百万ドルを仮想通貨の「USD Coin」(以下、USDC)で決済している。USDCは米ドルに支えられたステーブルコインで、その規格は「Centre Consortium」によって開発された。

 Visaは2021年に、EthereumとCrypto.comのプラットフォームを介してステーブルコインで決済する取り組み始めており、今回のパートナーの拡大はその取り組みを加速させるものだ(注2)。サンフランシスコ市(米国)を拠点とし、米国最大のクレジットカードネットワークを運営するVisaは、デジタル通貨で国境を越えた決済を実現し、お金の動きをより速く、より安くすることを目指している。

 Visaのクイ・シェルフィード氏(暗号部門責任者)は「安定性のあるUSDCと、SolanaやEthereumのようなブロックチェーンネットワークを活用することで、われわれは国境を越えた決済のスピードを向上させ、顧客がVisaの口座から資金を簡単に送受信できる最新の選択肢を提供できるようになる」と話す(注3)。

 Visaは数年前にも暗号資産に関連するビジネスに乗り出したが、米国証券取引委員会(SEC)が暗号資産を扱う組織に対する調査を強化したのを機に、取り組みを止めていた。実際にSECは2023年6月、CoinbaseとBinanceという主要な暗号資産取引所を訴えた(注4)。Visaによるパートナーシップの拡大は、決済の世界がブロックチェーン技術、特に国境を越えた決済や商取引にチャンスを見いだしていることを示している。

 VisaはWorldpayやNuveiと提携することで、さまざまな業界の加盟店をデジタル決済のチャネルに引き込める。具体的には「オンランプ」(法定通貨を暗号資産に交換するプロセス)の取引を行う暗号資産業者やゲーム事業者などだ。また、NFTマーケットプレースはカード決済を受け入れる際に、ステーブルコインでの取引を好む傾向がある。Visaは2018年に、Coinbaseと共にCentre Consortiumを共同で設立しており、USDC発行元のCircleとも協力関係にある。今後、Centre ConsortiumはUSDCのガバナンスを担う予定だ。

 WorldpayとNuveiをパートナーにしているVisaは独自のCircleアカウントを使用し、USDCでWorldpayとNuveiに支払いを行い、加盟店に送金する。また、Visaはステーブルコインの分野で複数のカード発行会社と提携している。

 Worldpayのジム・ジョンソン社長は「VisaのUSDC決済機能により、当社は財務オペレーションの多くを社内で行えるようになる。また、加盟店に資金受け取りの選択肢を提供できる。急速に進化する今日の商取引において、グローバル加盟店の変化するニーズに対応するには、資金調達の多様な選択肢と柔軟性が不可欠だ」と述べている。

 Worldpayの親会社であるFidelity National Information Services(FIS)は、2023年の初めに一部の株式を米シカゴのプライベートエクイティ企業GTCRに売却しており、この影響からステーブルコインの世界に足を踏み入れた(注5)。

 Visaによると、Solanaを取り込んだ理由はより高速かつ低コストでステーブルコインを送受信できるからだ。VisaはSolanaの加盟により、ライブ決済にSolanaを使用する最初の大手決済業者の1つになる。

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