DXに取り組む中で、複雑かつ困難なプロセスにぶつかることがある。そんな時に企業は何をすべきなのだろうか? 本稿は、企業リーダーが知るべきDXの6つのステージを解説する。
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時にDX(デジタルトランスフォーメーション)は困難を極める。ビジネス環境の変化に合わせた経営層の判断やIT人材の有無など、多様な要因から影響を受けるためだ。このような状況に対応するために、企業リーダーはDXの6つのステージを知っておく必要がある。
6つのステージは、企業がDXに着手したときの状態である「BAU」(従来の状態)から始まり、企業が変革を実現し、変化を受け入れる「革新と適応」で終わる。各ステージにはベンダーの変化への抵抗や従業員が改革に反対する可能性など、それぞれ固有の課題が待ち受けている。また、各ステップに要する時間はそれぞれの企業によって異なる。
6つのステージと各ステージにおける課題は以下の通りだ。
企業の業務が通常通り行われているステージがBAUだ。この段階ではまだ「DXがもたらすメリットを研究する」といった取り組みは始まっていない。また、リーダーが業界や消費者の動向に目を向け、最新のソフトウェアの導入するといった取り組みもない。
DXに取り組むきっかけとしては、売上高の減少や従業員の離職率の高まり、平均を上回る業務コストといった問題を会社が実際に経験する必要があるかもしれない。こうした体験を経て、リーダーはDXの必要性を認めるようになる。
「発言と活動」のステージでは、DXへの関心が現れ始める。その関心の先頭に立つのは、DXを開始する権限を持たない従業員の場合が多い。
このステージでは、競合他社がDXによってマーケットシェアを伸ばしているのを目の当たりにするケースに加え、業界誌や見本市でDXのメリットを知るケースが増える。あるいは以前勤めていた会社でDXのメリットを目撃してきた転職組の従業員が、現在の企業にもDXが有効だと認識し始めることもある。
いずれにせよ、この段階ではまだDXの導入に向けた取り組みは動き出していない。
「正式決定」のステージでは、DXの必要性に気付き始めている従業員がそのメリットを評価するためにリサーチを開始し、ビジネスケースの構築や会社の上層部から了承を得るといった活動に取り組む。
この段階では、DXを率先して取り入れようとするアーリーアダプターに対し、企業文化が逆風になることもある。これは、変化に対して他の従業員が不安を覚えることもあるからだ。社外でも、ベンダーが変化に抵抗する場合や、新たなソフトウェアやサービスの導入に顧客が難色を示す場合もある。
この段階でのDXは、部署やチームレベルの小さなものが多い。このステージで実績をあげれば、次のステージに進みやすくなる。
「戦略」のステージでは、上層部のほぼ全員がDXに賛同しており、取り組みにゴーサインが出される。DX推進プロジェクトのロードマップ上でいうと、部署レベルと事業部レベル、全社レベルの3つのうちどこかに位置している。
このステージでは、DXを支持する声が社内の抵抗を上回るようになる。他の従業員もDXが自分の日常業務をどう変えるのか知りたくなる。早い段階で成果が上がれば、従業員もDXは正しい投資であり、自分たちの仕事環境を改善するに違いないと安心感を抱くはずだ。
「一体化」のステージでは、会社全体がDXを主要イニシアチブとみなし、将来の変革を率いるチームに投資する価値を見出すようになる。
労働力のデジタル化に向けた新たなイニシアチブに会社はリソースと資金を注ぐようになる。また、企業文化もこの新たなビジネスモデルの価値を認め、組織としてDXの恩恵を受け入れるようになる。事業部や各部署という単体ではなく、会社全体で大規模な変革が当たり前となる。
「革新と適応」のステージになると、会社はデジタルの世界を全面的にサポートする。また、“自己満足”に陥らないように、新たなイニシアチブへの投資を継続して行うようになる。
企業文化はこの新しい働き方を完全に受け入れ、積極的にDXをサポートする。また、デジタル化された組織は多くの人材を引き付ける。社外のベンダーもこの変革の恩恵を受け、顧客もリニューアルされたサービスや新しいサービスを高く評価するようになる。
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