Workday、日本市場への投資を加速 コーン・フェリーとパートナーシップ締結する狙いは

ワークデイは2023年10月19日、コーン・フェリー・ジャパンとのパートナーシップ締結を発表した。記者発表を基に、同社が考える日本市場での展望を解説する。

» 2023年10月20日 07時00分 公開
[大島広嵩ITmedia]

 人事管理ソフトウェア「Workday」を提供するワークデイは2023年10月19日、コーン・フェリー・ジャパンとのパートナーシップの締結を発表した。同日に開催された記者発表を基に、同社が考える日本市場での展望を解説する。

左からワークデイの正井拓己氏、コーン・フェリー・ジャパンの滝波純一氏、Workdayのダグ・ロビンソン氏(出典:筆者撮影)

鍵になるのは「職能型」から「ジョブ型」への移行

 Workdayの共同社長であるダグ・ロビンソン氏は、同社のサービスを日本で展開する際の課題を以下のように語った。

 「日本でサービスを提供するためには、日本のビジネスプロセスや、日本企業に求められる規制との整合性を高める必要がある。米国のソフトウェアをそのまま日本市場に適用するのではなく、ローカライズする必要がある」(ロビンソン氏)

 日本でのローカライズを強化するため、同社はアクセンチュアやデロイト トーマツ、日本IBM、日立ソリューションズ、東芝デジタルといったパートナーへの投資を拡大してきた。

 そして本日、急速に拡大する日本市場でのサービス展開により注力するため、コーン・フェリー・ジャパンとのパートナーシップの締結を発表した。「日本特有のビジネス要件と規制環境に対応し、お客さまの成功を確かなものにすることを約束する」とロビンソン氏は述べた。

2023年10月12日、日本市場をビジネスユニットに昇格(出典:ワークデイ提供資料)

 続いてワークデイの正井拓己氏(エグゼクティブ・プレジデント 日本担当ゼネラルマネージャー日本法人社長)は、日本でサービスを展開するための具体的な戦略を語った。

 まず、日本でWorkdayを導入する企業の5つのトレンドとして「グローバルで業務プロセスの標準化を目指す企業」「データドリブン経営を目指す企業」「経営基盤の刷新を目指す企業」「人事業務の主体を現場へ権限委譲する企業」「アジリティー向上・TCO削減(ITアーキテクチャ)」を挙げ、「お客さまの課題に迅速かつ適切に応えるためには、日本市場におけるパートナーシップ戦略が非常に重要になる」とした。

 具体的なパートナーシップ戦略は、「人財教育強化」「提携領域の拡大」「ペイロール連携」「新たなプログラム」だ。

 「パートナー様の人材育成支援を強化して日本市場のコンサルタントの増員を後押し、協業する領域の拡大を進める。日本固有の要件が非常に重要になるペイロールの領域では、日本やグローバルの給与ソリューションパートナーと技術的、営業的な連携を強化する。そして、アドバイザリーパートナーを日本市場でも開始する」(正井氏)

 アドバイザリーパートナーでは、エンドユーザー向けの「変革の提案」や「ソリューションの検討」「プロジェクトの管理」「チェンジマネジメント」などを支援する。人事領域のコンサルティングファームであるコーン・フェリー・ジャパンは、日本における最初のアドバイザリーパートナーになる。

4つのパートナーシップ戦略(出典:ワークデイ提供資料)

 コーン・フェリー・ジャパンの代表である滝波純一氏は「ジョブベースの人材マネジメントへの転換が、今後の競争力強化の鍵の一つになる」とし、実現に向けた4つのポイントを語った。

 「1つ目はジョブの設計であり、企業の戦略や課題に沿ってジョブを設計すること。2つ目は人材情報の収集で、人材の情報やスキル、パフォーマンス、資質、性格の特性、動機や意向といったものを全社で標準化して収集すること。3つ目は人材情報を管理して分析すること。4つ目は、人材情報の分析結果を基にジョブと人材をマッチングさせること」(滝波氏)

 同氏は「言うのは簡単だが実現は難しい」と続けた。日本の人事制度は評価の軸が職能である傾向があり、ジョブベースの人材マネジメントとはギャップがあり、そのギャップを乗り越える前に実現を諦めてしまう企業が多いという。また、ジョブの設計や、ジョブの基になる従業員情報の管理、将来の戦略や課題における整合性の維持、構築や運用の手間の増大などさまざまな課題が生じる。

 そういった課題に対し滝波氏は、「コーン・フェリー・ジャパンのデータベースには世界の標準的なジョブのデータがある。ジョブだけでなく、そこで活躍している従業員のスキルやプロファイル、経験、それにフィットする性格や特性といったものを大体6000件ほど持っている」と語り、同社に蓄積してきたベストプラクティスやデータを活用し、さらにワークデイと協力することで、「持続可能でシームレスな支援が可能になる」とした。

情報管理・分析にベストプラクティスを持ち込み、持続可能な形で転換(出典:ワークデイ提供資料)

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