AWSが初心者向けプログラムを提供開始 「最短1年」でクラウド技術者を育成CIO Dive

クラウド技術者の不足は企業の重要課題の一つとなっており、モダナイゼーションが進まない要因の一つでもある。AWSが提供を開始する新しいトレーニングプログラムは人手不足を解消する一手となるだろうか。

» 2023年11月01日 14時30分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 IT人材不足の中でもクラウド技術者の不足は特に深刻で、クラウド大手Amazon Web Services(AWS)によると約500万人分のポストが空いているという。こうした中、同社が新しいトレーニングプログラムの提供を開始した。これまでの同社のプログラムと異なり、ITの分野における勤務経験のない初心者向けであることが特徴だ。

初心者が受講可能 人材不足解決の一手となるか

 AWSは最短1年で初級レベルのクラウド技術者になるための12コースのクラウドスキルトレーニングプログラム「AWS Cloud Institute」を公開したと2023年10月10日(現地時間)に発表した(注1)。

 同プログラムのカリキュラムは、クラウドや開発者の基礎知識、AWSのアーキテクトやデータベースやアナリティクス、ネットワーキング、セキュリティ、Pythonコーディング、および同社の生成AI(人工知能)対応の開発者向けツールである「Amazon CodeWhisperer」をはじめとしたML(機械学習)を含むAIツールの習熟をカバーしている(注2)。

 コンサルティング大手のAccentureや保険大手のAmerican Family Insurance、その他のAWSの顧客やパートナーが同プログラムの策定に協力した。

 同プログラムのディレクターを務めるケビン・ケリー氏は「われわれは交通機関や銀行、コンサルタントの顧客と連携しながら、現実世界の問題や課題の解決策を学習者が構築できるように、プログラム開発における協力を受けた」と語った。

 企業がシステムのモダナイゼーションを推める中、技術系人材の確保は依然として多くのCIO(最高情報責任者)の悩みの種となっている。2023年初めには技術部門のレイオフ(一時解雇)が相次ぎ、失業率が毎月変動しているにもかかわらず(注3)、需要は既存のITプロフェッショナルの数を上回り続けている。

 人手不足は、サイバーやデータベース管理、ネットワーキング、インフラストラクチャーアーキテクチャなど、ITの中核機能を含むクラウド分野で特に深刻だ。

 「AWSは内部調査を基に、未充足のクラウドポジションが500万人分存在すると推定している」(ケリー氏)

「BtoBの企業は従業員のスキルアップに投資したいと考えている」

 ソフトウェア会社のFlexeraの調査によると、2022年の企業の最重要課題として「セキュリティ対策」「支出の抑制」と並んで、「クラウドに関する専門知識の不足」が挙がっている(注4)。Accentureは2023年初め、人材不足が金融分野における基幹システム移行の障害になっていることを明らかにした(注5)。

 ケリー氏は「AWSは今回発表するトレーニングプログラムによって、ブートキャンプや学位プログラムでは埋まらない人材パイプラインの不足に対処し、クラウドの経験がない学習者にアプローチすることを目指している」と話す。

 「これまでAWSのトレーニングや認定は、ブートキャンプや高等教育機関を修了して企業で働く学習者に焦点を当ててきた。彼らは分散システムや仮想化が何であるかを知っており、既に実務で活用している。メインフレームやオンプレミス、クライアントサーバーの開発者としてトレーニングに参加することがあり、ITのバックグラウンドも持っている。しかし、今回のプログラムに参加するのにIT分野の経験は一切必要ない」(ケリー氏)

 受講生はプログラム開始から90日後にAWSの認定試験の一つである「AWS Certified Cloud Practitioner」を、プログラムの後半では「AWS Certified Cloud Practitioner」を受験するための準備と受講料が免除される。

 ケリー氏は「クラウドアプリケーション開発者やクラウドオペレーション管理者、クラウドサポートアソシエイト、SRE(サイト信頼性エンジニアリング)、幾つかの初級レベルのクラウドセキュリティの役割は、卒業生のキャリアになる可能性が高い」と述べた。

 AWSは2024年1月初旬に同プログラムの第1期生を募集すると発表した。プログラムにかかる費用は7560ドル(税別)だ。同社は一部の志願者に対して助成金を提供する(注6)。

 同プログラムは個人を対象としているが、従業員のスキルアップを目指す企業からの関心を得ることも期待しているという。

 「BtoBの企業は従業員のスキルアップに投資したいと考えている。フロントオフィス業務からバックオフィス業務に、最終的にはフロントオフィスの従業員が使用するクラウドアプリケーションの開発まで、従業員のスキルアップに投資しようとしている」(ケリー氏)

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